③『募金をしてくれたやさしいあなたへ』
あなたの優しさは、なくなっていない
ー子どもたちへの手紙ー
この手紙は、子どもたちに向けて書いています。
もしかしたら最近、大人のニュースを見てびっくりした人がいるかもしれません。
北海道の募金のお金が、本来とは違うことに使われていたというニュースです。
学校で募金活動をした人もいるでしょう。
お小遣いの中から募金した人もいるかもしれません。
ニュースを見て、
「なんでそんなことするの?」
と思った人もいるでしょう。
悲しくなった人もいたかもしれません。
腹が立った人もいたかもしれません。
私は、その気持ちを大切にしてほしいと思います。
だって、それは誰かを思う優しい気持ちがあったからです。
何も感じなかったのではなく、信じていたから悲しかった。
それだけのことです。
まず最初に、大人の一人として伝えたいことがあります。
ごめんなさい。
あなたたちが信じて託してくれた気持ちを、裏切ってしまった大人がいました。
本当に残念なことです。
そして、本当に情けないことです。
でもね。
どうか知っていてほしいことがあります。
そういう大人ばかりではありません。
ニュースになるのは、たいてい悪い出来事です。
だからテレビやインターネットを見ていると、世の中にはひどい人ばかりいるような気持ちになることがあります。
でも実際には、ニュースにならない人たちがたくさんいます。
毎朝、子どもたちの登校を見守る人。
子ども食堂でごはんを作る人。
災害が起きた場所へ駆けつける人。
困っている人の話を聞く人。
暑い日も寒い日も、誰かのために働いている人。
そういう人たちは、静かです。
静かだから目立ちません。
でも、その人たちのおかげで、この社会は今日もなんとか動いています。
私は、そのことも知っていてほしいのです。
そして、もうひとつ。
あなたが募金した気持ちは、なくなっていません。
お金は誰かに使われてしまったかもしれない。
でも、あなたの優しさまで消えたわけではありません。
誰かを助けたいと思った気持ち。
困っている人の力になりたいと思った気持ち。
それは誰にも盗めません。
どんな大人にも。
どんな事件にも。
募金箱に入れた十円玉や百円玉は手元から離れても、そのときの優しさは、ちゃんとあなたの中に残っています。
私は、それがいちばん大切なことだと思っています。
大人になると、世の中にはいろいろな人がいることを知ります。
正直な人もいる。
ずるい人もいる。
約束を守る人もいる。
守らない人もいる。
だから、人を信じるのが怖くなることもあります。
それでも私は、人を信じることをあきらめないでほしいと思っています。
もちろん、だまされないように気をつけることは大切です。
でも、「どうせみんな同じだ」と思ってしまうのは少しもったいない。
世の中には、信じるに値する人もたくさんいるからです。
私は、このニュースを見て悲しくなりました。
でも同時に思いました。
きっと今も、誰かのために募金箱へお金を入れている子どもがいるだろうな、と。
その姿を想像すると、なんだか少しだけ希望が湧いてきます。
優しさは、なくなっていない。
善意は、消えていない。
それを教えてくれる人たちが、まだたくさんいるからです。
もし今回のニュースで悲しくなったのなら、その気持ちを忘れなくて大丈夫です。
でも、自分の優しさまで手放さなくて大丈夫。
あなたが誰かを思った気持ちは、本物でした。
そしてその気持ちは、これから先もきっと誰かを助ける力になります。
どうか、自分の優しさを信じてください。
私は、その優しさがある未来を信じています。
