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愛の定義@サブイボ選手権

これまでに、何人もの“何もしない人”を依頼してきた。
しかし、結局彼らは最後には、私に干渉してくる。
だからそのたびに、彼らとの契約を打ち切らなければならなくなる
……。今度の人は、最後まで“何もしない人”でいてくれるかしら?
私は、そっとスマホの画面を閉じた。

***
彼女との契約を何人もの“何もしない人”が解雇されたという。
十日で二十万という、破格の契約にも関わらず、長くても五日で、みんな首を切られているらしい。
依頼内容は、何もせず彼女を見つめ続けること。
こんな簡単な依頼、なぜ最後までやり遂げられないんだ。俺なら、絶対最後までやり遂げられる自信がある。

***
今回の“何もしない人”は、随分と見込みがありそうだわ。
私があらゆる方法で自分を痛めつけている間も、何もせず顔色も変えず、私を見守り続けてくれている。

この人なら、最後の瞬間まで私をただ見つめてくれるかしら……。

***
何なんだよ。この女は何がしたいんだ。
リストカットに始まり、鞭打ち、熱湯をかける、爪剥ぎ…。

俺が、それを見続ける姿を見て、恍惚の表情を浮かべている。少しでも表情を変えると、彼女は嫌がる。
だから俺は、必死で無表情を作る。

それにしても……。彼女は完全に狂っている。一日が終わって自宅に帰っても、あの家で行われる、あの女が自分に拷問を課す姿が、夢にまで出てきて、この数日は一睡もできていない。

このまま最終日を迎える事は出来るのだろうか?
もし出来たとして、最後、俺はどうなっているんだろう……。

でも、借金を抱えてしまった俺は、この仕事を最後までやり遂げなければならない。そうしなければーー。

***
ようやく、最後まで何もせずに私を見続けてくれる人に出会えたのかもしれない。

明日は、どうやって私の愛を届けようかしら?

パパ、何が良いと思う?

私は、父の書斎に飾ってある写真を眺めた後、そこに置かれたあらゆる拷問道具を前にゾクゾクしていた。
父が生きていた時、私は一心に父からの愛を受け止めていた。

たった二人きり、この部屋で。

自分の歯を無理やり抜かされた時、むちで打った皮膚が裂けた時、父はただ無表情にそれを見ていた。

それが、パパと私、二人の……二人だけの愛し方。

パパが死んでしまった時は、これから誰にこの愛を受け止めてもらえばいいのか、途方にくれてしまったけど。
ようやくパパに替わる人が見つかったかもしれない。

嗚呼、早く明日にならないかしら。

***
どうしよう。あの女の異常行動に付き合って、5日目。
俺は、自分の中に眠る、俺も知らなかった一面を垣間見て、戸惑っている。

もし、このまま最後の日まで彼女に付き合ってしまったら……。俺は、今までと同じ俺でいられるのだろうか……。

***
ついに、この日が来たのね。
私の最上の愛、彼は受け止めてくれるかしら?

彼がリビングに入ってきた時、私は踏み台を思い切り蹴飛ばした。

ダランと垂れ下がった体は、空中をゆらゆらと揺れ動く。
口からはヨダレが、目からは涙が垂れ落ちる。力の入らなくなった醜い体を、それでも何もせずに、食い入るように見続けてくれる彼。

あー、やっぱりこの人に頼んで正解だったわ。

私は薄れゆく意識の中、彼の下半身の膨らみに気付き、彼は、もしかしたら、パパの生まれ変わりなのかもしれないとまで思った。

そう思うと、私の顔には自然と笑みが溢れた。

***
俺は、彼女のだらしなく吊り下げられた死体を見て呆然とした。

なぜ。なぜ命を終わらせてしまったんだ。
君が死んでしまたら俺は、これから、何を見て興奮したらいいんだ。

心に忍び寄る大きな絶望感に、俺はテレビで見た心肺蘇生を、見様見真似で彼女に施した。
しかし、これまで散々痛めつけられてきた彼女の体は、俺が体重を乗せる度、ボキボキと肋骨が折れ、ついには、その骨が皮膚を突き破る。

あぁ。君は、命が潰えてまで、俺に愛を届けてくれるんだね。

俺は、恍惚の表情で彼女を蘇生し続けた。


今回は、よしまるさんの
#サブイボ選手権
への参加作品です。
↑は、私的には、結構好きな部類だし、多分キモコワな短編だと思っているんですが、サブイボが立つほど怖いかかと言われると、ちょっと自信はないですが😅
よしまるさん、よろしくお願いします。


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