僕が愛した後ろ姿
【作品紹介】
僕は、君のサインを全て見逃さなかった。
僕にだけ見せた照れた笑顔。僕が選んだのと同じ学食のメニュー。そして、僕への愛を告げるように忍ばせた、アイドルのポスターの影。
孤独な人生を送ってきた大学生・篤宏にとって、響子との日々は、紛れもない「両思い」の証明だった。だからこそ、満を持しての告白に対する、彼女の心底驚いたような「誰だっけ?」という一言は、世界をひっくり返すには十分すぎた。
だから僕はーー。
歪んだ愛が生んだ、衝撃の結末。これは、哀れな男の末路を描く、戦慄のサイコサスペンス。
まさか、まさかこの僕が、間違えるなんて。君の、あんなに見つめ続けた君の後ろ姿を見間違えるなんて……。
僕は、血に染まった手を、ただ呆然と見つめていた。
***
「えっと、誰だっけ?ごめんね。知らない人と付き合う事できない」
周りから、クスクスと笑う声が聞こえる。
君が、僕に恥をかかせたから…。僕は、大学に行くことが出来なくなった。
こんなにも愛しているのに。君だって僕の事愛しているのに。何故……。
講義で隣り合った時、目を合わせて笑い合ったじゃないか。
その次の日、廊下ですれ違った時、君はわざと目を逸らして、でもほんの少しだけ微笑んだ。
そう、それは“照れ”だ。
あの時確信に変わったんだ。あれは、僕に恋する女の子の顔ってやつだって。
それに学食の時だって。
あの日も、僕が食べてた日替わりAセットをわざわざ選んで、わざとらしく隣の友達に「被っちゃったね」なんて。
あれは、本当は僕に言ってたんだろ。僕を愛してるっていう合図だったんだろ?
それに僕が、高校の頃から推しているアイドルの事を投稿した数日後、君が街角で撮った写真の片隅にも、同じアイドルのポスターが写ってたね。
あれは、偶然なんかじゃない。
僕には、ちゃんと君の意図が分かったよ。私だけを見てっていうねーー。
だから。だから僕は、響子、君に告白してあげたのに。
なのになんで。なんで僕を知らないっていうんだ。なんで僕に恥をかかせるんだ。
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