無茶ぶりはやめて
「また、殿の無茶振りが出たなぁ」
「集合かかるたび、肝っ玉が冷えるわ」
「ほんと我らへの無茶ぶり、やめてほしいものだ」
「それにしても藤吉郎、お前、あの無茶振りどうするつもりだ?」
先程から腕組みをして、難しい顔でトボトボと歩く藤吉郎の背中に、織田の家臣団が声を掛ける。
「一夜で城を築くなんて…。みんな、どうしたらいいんだべ?」
藤吉郎が涙目でみんなを振り返ると、誰もがスッと目をそらす。
「あ、そ、そうだ!わしはこれから城に帰ってやらねばならぬ事があった」
「わ、私もこれにて」
今回の無茶振りが、自分に向かわなかったことに心底ホッとしたのに、手伝わされては敵わないとでもいうように、家臣団は散り散りに去っていった。
「あ、あの藤吉郎さん…」
「お主は…」
「あ、はい。半兵衛と申します。今の話、小耳に挟んだのですが、一晩で長良川の中洲に砦を建てろって言われたとか」「そうなんじゃ。すでに柴田殿や他の方々も失敗してるのに…。わしなんかが……。どうしたらいいのか」
「僕に考えがあるのですが、少しお耳をお借りできますか?」
藤吉郎は、半兵衛の話を聞くうち、なんだかやれそうな気がして、テンションもやる気も爆上がりしていった。
ここまできて、スマホを動かす指がまた止まった。
「あー、駄目だ。この後のオチ、やっぱり何度考えてもつまらない……」
今回のアマノ文筆クラブのタイトルは『無茶ぶり』。
織田信長が羽柴藤吉郎に一夜で城を作れという話。これぞ、“無茶ぶりの中の無茶ぶり”なんだけど…。
今回は、ネタがネタだけにコメディでいきたいのに。肝心のオチが全くもってにも面白くない。
秀吉が布をかぶせる? (そこから、どうおもしろ転換する?)
信長が一日と勘違いする? (それを、おもしろエピソードにするには至難の業じゃない?)
それとも、家臣団を巻き込んで大騒動?(一番面白く出来そうだけど、長編になりそう…。)
行き詰まった挙句、
「もう、いっそ『むっちゃん(名前)!鰤!!』ってオチにしてしまうか」
なんてダジャレを考えている自分に、ゾッとする。
「はぁ…」
私はため息をつくと、そっとスマホを置いた。
藤吉郎殿、真に『無茶ぶりをやめて』と叫びたい相手は、他でもない自分の飽くなき創作意欲でござったよーー。
さて。これは実話です。
#アマノ文筆クラブ の今回のテーマを見た時、歴女の私は、無茶ぶりする殿を思い浮かべました。
その中でもキングオブ無茶ぶりといえば、信長様。彼が残した無茶ぶりな逸話は数知れず。
その中でも、トップオブ無茶ぶりといえば、豊臣秀吉に命じた一夜城。
これをコメディで作品にしよう!!
と、思い立ったまでは良かったのです。前半はサクサク書けたのに、いざ信長を騙す段になってからは、何をどう書いてみても全然納得がいかない。
マジで、布で隠すとかハリボテとか、信長を薬で眠らせるとか、色々考えてみたのですが、どうもご都合主義になっちゃうし、面白くないし、ダジャレに逃げようかとも考え始めるし😱
って、悶々と考えているうちに、それ自体を作品にしたらええやん!!と気付き、どうにか今回の作品になりました。
ビートたけしだったか、『人を笑わせるのが一番難しい』って言ってましたが、本当痛感しました。
