見出し画像

邪道な僕さ

ふと目に止まった、電柱に貼られた1枚のチラシは、古ぼけて今にも剥がれそうだった。チラシのタイトルは「邪道コンテスト」。

​「変わったコンテストもあるもんだ」

​開催日を見ると、日付はちょうど今日。

「邪道と言われ続けた僕にピッタリじゃないか」

僕は、ひとつ嘲笑した後、そのチラシを剥ぎ取り、チラシの下に書かれた住所へと向かった。大道という、正反対の名前を持つ僕にとって、これは運命だと思った。

​入り組んだ場所にある会場の周りは、とても寂れて、物悲しさがあった。

「本当に、この場所で合ってるのか?」

​僕は恐る恐るドアを開ける。外の寂しさと反して、会場内は多くの人の熱気で溢れていた。観客は皆、異様な光を宿した目で舞台を見つめている。僕は、受付で出場者として申し込んだ。

​「エントリーNo〇〇番、大道さんの邪道をどうぞ!」

​拍手につられ、僕は、まばゆいスポットライトに向かってゆっくりと進む。心臓が高鳴る。

​「邪道な僕がどれだけ邪道なのか、聞いてください!」

​僕は胸を張り、自信たっぷりに宣言した。

​「まず一つ!僕の邪道、それは……納豆には砂糖を入れる!」

​「……ざわ……ざわ……」

​(うん、これは賛否両論ある邪道だ。いいぞ!)

​「そして、スパゲティを作るときは、麺を茹でる時、同時にレトルトソースも温めてしまう!」

​「まあ、よくある事よね」「別に邪道ってほどじゃねえな」

​(あれ?意外と反応が薄い……?でも、ここから本番だ!)

​「二つ目!僕は掃除機をかけるとき、家具の周りを掃除するのが面倒だから、全ての家具を持たず、旅行バッグに入れてある!」

​「……?」「あ、なんか分かるかも」「いわゆるミニマリストだろ」

​(な、なんか共感の声まで混じってきたぞ!?なんだこの空気は!)

​「さらに!家で用を足すとき、トイレのドアは閉めない!だって、どうせ誰も見てないし、すぐ終わるから!」

​「それは……」

​僕はドキドキしてその瞬間を待った。が、観客の反応は決定的なものになった。

「邪道とは言わないよな。ただ、だらしないだけじゃん」「っていうか、一人暮らしなら閉めない人も多いだろ」

​僕は、その後もあらん限りの邪道を披露したが、どれも観客には「邪道」ではなく、「普通」「ズボラ」といった生ぬるい評価しか返ってこない。

​「ハァハァ……」

​息が切れる。スポットライトの熱さに耐えられず、頭がくらくらする。

​観客席から、とうとう嘲笑が聞こえた。

「そいつの『邪道』、レベル低すぎだろ!マイノリティーかもしれないが、ただのあるあるだ!」

​その一言が、僕を打ちのめした。

​「ハァハァ……。お前ら、なんなんだよ。これまでずっと、“それは邪道だ”って言われてきたのに…。僕の邪道な生き方は、お前らの言う“邪道”じゃないのかよ」

​観客に向かってそう叫ぶ僕の目からは、涙が溢れ出る。

​僕にとって「邪道」とは、世間から「お前は間違っている」と突きつけられる苦しみだった。しかし、この「邪道コンテスト」という異様な場所で、その「邪道」すら否定された。

​誰も「お前は邪道だ」とは言ってくれない。皆が僕の「邪道」をただの「あるある」として処理する。

​---ああ、僕は「邪道」として認められなかった。

​その瞬間、長年僕の心を縛り付けていた鎖が、ガラガラと音を立てて砕けるのを感じた。

​気づけば、涙が溢れていた。これまで頬を伝う涙は、孤独や悔しさの塊だったのに、今の涙は何だかとても温かく感じた。


さてさて。
今回も、甘野さん主催の
#アマノ文筆クラブ
のお題に参加させていただきました♪

今回は『邪道な僕さ』
物語事態は、このタイトルからはイメージされる(であろう)内容から、少し離れちゃった気がしないでもないんですけどね。
タイトルを見て、考えた時にふわっと浮かんだのが、“邪道コンテスト”で(笑)
でも、私、何が邪道なのかよく分からなくて。まぁ、ざっくりとした概念としては分からなくはないけど、人と違う事してるからって、それが邪道なのかって問われると、胸を張って『はい、そうです!』なんて答えられないですもの🤣

さて、ここからは宣伝です。
セラフィナが紡ぐ世界観が良いなって思ってくれた方、朗報てます!(笑)

これまで販売されたセラフィナの小説とこれから販売されるセラフィナの小説のすべてを月800円で読めちゃうメンバーシップがあるんです!!

よろしければ是非


いいなと思ったら応援しよう!