🌊エッセイ『光のほうへ、泳いでいく』ー虹色創作部ー
海の底で、ふたりは光に向かって手を伸ばしていた。
青の世界に、泡が舞う。
届きそうで届かない光が、波に揺れている。
子どものころ、海は少しこわかった。
足がつかない深さ、波の不規則なうねり、耳の奥で響くような静けさ。
でもそれでも、泳いだ。
理由なんてなかった。
ただ、「あの光の先になにかある」と信じたかった。
今、画面のなかのふたりが、まるで意志をもった魚のように、水の中を走る。
どちらが先に進むわけでもなく、ただ、光に向かって並んで泳いでいる。
言葉なんていらない。
その方向に行こう、と一緒に思えること。
それだけが、なにより大切だった。
人生だって、似ている。
どこへ向かっているのか分からないまま、
とりあえず泳いで、もがいて、沈んで。
それでも、隣に誰かがいれば、浮かび上がれる気がした。
たとえ未来が見えなくても。
たとえ途中で、うまく息ができなくなっても。
光のほうを指差してくれる人がいる限り、
また泳ぎ出せる。
あのときの海と、あのときの光と。
そして、いまこの瞬間の「誰かと並んで進んでいる」という実感が、
静かに、確かに、胸に差し込んでくる。
だから今日も、光のほうへ。
言葉にならない気持ちを携えて、
泡を巻き上げながら、泳いでいく。
そして願う。
あの日見上げた光が、
いまこの場所と、
これから出会う未来と――
ちゃんと、つながっていますように。

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