これってまるでアンジャッシュさんみたいな感じになってるんじやない?と思った話
僕は車の運転が嫌いだ。
車を運転している時間は、拷問のようだ。
肩は上がり、背中はこわばる。
渋滞の赤ランプを見るたび、「免許返納してもいい」と本気で思う。
今日もそんなことを考えながら、一人でハンドルを握る。
「渋滞かマジかよ…」ぼそっとつぶやく。
社長「マジで昨日のラーメン、うまかったな」
「え?ラーメン?昨日は鍋でしょ?」
社長「混んでるうちに入んないよ。いつもはもっと混むぞ」
「混んでるでしょ、動かないじゃん」
社長「あと、うちの犬が冷蔵庫の前で哲学者みたいな顔して動かなくてさ」
「いや、犬は…」
社長「昨日のドラマ、あの主役の表情、絶対演技じゃなかったな」
「いや、映画はいいから…」
会話は切れ切れで、意味はほとんど通じていない。
数分後、ふと気づく。スマホのBluetooth接続ランプが点滅している。
「あ、なるほど…」
声は勝手に車内スピーカーから流れていたのだ。
社長が直接答えていたわけではない。Bluetoothが偶然に会話を成立させ、僕の独り言に社長の雑談がリンクしていたのだ。
自分の頭の中で、社長と漫才していたように錯覚していた。
さらにもう一つの偶然に気づく。
社長も普段同じ車に乗るため、今日たまたま僕の車が社長の近くを通ったのだ。
偶然のタイミングとBluetooth接続が重なり、“社長との奇妙な漫才”が生まれていたのである。
何の話してるんだという疑問と盗み聞きをしてしまった若干の気まずさで肩の力が抜ける。
運転は嫌いだが、この小さな混乱劇で帰り道がちょっと面白くなった。
そしてふと、AEDを思い出す。
偶然に任せるのではなく、自分で手を伸ばすことが大切だ。
Bluetoothの偶然は笑えるけれど、心臓は放置しても勝手に元のリズムを取り戻さない。
渋滞の車内で独り漫才を終え、僕はアクセルを踏み直す。
運転は嫌いだが、奇妙な“社長とのアンジャッシュさん風漫才”が、今日の疲れを少しだけ和らげたのだった。
