「もっと頑張らなきゃ」があなたを壊していませんか
職場いじめやパワハラ、モラハラの被害を受けている人の多くが、加害者以上に自分を責めています。
「自分がもっと我慢すればよかったのかもしれない」
「仕事ができればこんな目に遭わなかったのではないか」
「休んではいけない」
「弱音を吐いてはいけない」
そんなふうに、自分で自分を追い詰め続けてしまうのです。
あなたは今、疲れていませんか。朝、目が覚めた瞬間から憂鬱な気持ちになっていませんか。仕事のことを考えるだけで胃が重くなっていませんか。
それでも「まだ頑張れる」「もっとできるはずだ」と自分を鼓舞し続けていませんか。
もしそうなら、この記事はあなたのために書きました。
真面目な人ほど自分を責める
高校教師のA先生(40代女性)は、同僚から無視や陰口を受けていました。
職員室に入ると会話が止まる。会議では発言を笑われる。仕事の情報だけが自分に伝わらない。
明らかにおかしい状況でした。
それでもA先生は、
「私の伝え方が悪いのかもしれません」
「もっと頑張れば認めてもらえるかもしれません」
と考え続けました。体調を崩し始めても休まず出勤し、休日も教材研究を続けました。
しかし現実は変わりませんでした。むしろ、自分を追い込むほど心だけが消耗していったのです。
A先生が特別だったわけではありません。彼女は真面目で責任感が強く、子どもたちのために全力で仕事をしてきた人でした。だからこそ、「もっと頑張れば状況が変わるはずだ」という信念を手放せなかったのです。
これは多くの被害者に共通するパターンです。
真面目な人ほど、「自分に問題があるのでは」と考えます。責任感が強い人ほど、「自分が変われば解決できるはずだ」と信じます。誠実な人ほど、「相手にも事情があるのでは」と相手を庇います。
そしてその真面目さ、責任感、誠実さを、加害者は利用します。
「頑張る」が機能しなくなる理由
通常の職場環境では、「頑張る」ことは報われます。努力すれば結果が出る。成果を出せば認められる。関係がぎこちなくても時間をかければ改善する。
そういう経験を重ねてきたから、「頑張ればなんとかなる」という感覚が染み付いています。
でも、職場いじめやハラスメントが起きている環境は違います。
加害者の目的は、あなたを傷つけることです。あるいは、あなたを支配することです。あなたの能力や努力の問題ではありません。
製造業のBさん(30代男性)は、上司からの執拗なターゲットにされていました。どれだけ丁寧に仕事をしても「やり直し」を命じられ、どれだけ成果を出しても「お前の実力じゃない」と言われ続けました。
Bさんは「もっと完璧な仕事をすれば認められる」と信じ、残業と休日出勤を繰り返しました。睡眠が削られ、食欲が落ちても、「ここで折れてはいけない」と自分に言い聞かせました。
しかし、上司の言動は変わりませんでした。むしろ、Bさんが疲弊していくほど、上司の攻撃は激しくなっていきました。
これは偶然ではありません。
ハラスメントをする人の多くは、相手の反応を見て行動を決めます。相手が頑張れば頑張るほど、支配が続いていると感じ、行動をエスカレートさせます。「頑張る」ことが、皮肉にも状況を悪化させることがあるのです。
あなたが背負う必要のない責任まで背負っていませんか
いじめやハラスメントの問題が起きると、被害者は原因探しを始めます。
「なぜ自分がターゲットになったのか」
「自分の何がいけなかったのか」
「どうすればこうならなかったのか」
それ自体は自然な反応です。人は自分の置かれた状況を理解しようとします。「原因がわかれば対処できる」という感覚は、不安を和らげようとする心の働きです。
でも、ここで根本的な問いを立ててほしいのです。
無視をしたのは誰でしょうか。侮辱したのは誰でしょうか。陰口を広めたのは誰でしょうか。
それは加害者の選択です。
あなたが「頑張り不足」だったからではありません。あなたが「要領が悪い」からではありません。あなたの「性格に問題がある」からでもありません。
加害者がそういう行動を「選んだ」のです。
人は選択をします。同じ状況に置かれても、人を傷つけることを選ばない人がほとんどです。だから「そういう環境だから仕方ない」も違います。加害者は自分の意思で、あなたを傷つけることを選び続けているのです。
その選択の責任は、加害者にあります。あなたには一切ありません。
相手が人を傷つけることを選んだ責任まで背負う必要はありません。あなたの責任ではないことを、あなたが解決しようとしている。その構造に、気づいてほしいのです。
「自分を責める」が止まらなくなるメカニズム
なぜ被害者は自分を責め続けてしまうのでしょうか。
一つは、それが「コントロール感」をもたらすからです。
「自分が原因だ」と思うことは苦しいことです。でも同時に、「なら自分が変われば解決できる」という希望も生まれます。「相手が問題だ」と認めてしまうと、自分にはどうにもできないという無力感に直面しなければなりません。自分を責めることで、その無力感から目を逸らしているのです。
もう一つは、加害者からそう思わされているからです。
ハラスメントをする人は多くの場合、巧みに被害者に「あなたに問題がある」と思わせます。「お前の仕事が雑だから指導しているんだ」「お前のコミュニケーションが悪いから周りが困っているんだ」と言い続けることで、被害者は本当にそうかもしれないと信じるようになります。
繰り返し聞かされた言葉は、やがて自分の声になります。
加害者の言葉が頭の中に住み着き、あなたが自分自身を責める言葉になっていく。「あなたに問題がある」という外からの声が、「私に問題がある」という内なる声に変わっていくのです。
「今日は休む」を許せる人は弱くない
疲れたら休んでいい。何もしたくない日は何もしなくていい。泣きたい日は泣いていい。
それは甘えではありません。心を守るために必要な行動です。
「休む」ということを、私たちは長い間、弱さの証明として教えられてきました。「休まず頑張る人が評価される」という価値観の中で育ってきた人は少なくありません。
でも、心と体には限界があります。
限界を超えても「頑張り続けた」結果、ある日突然動けなくなった人を私はたくさん見てきました。
「あのとき少し休んでいれば」とは、誰もが後悔することです。でも、休むことを「弱さ」だと信じていた人には、その選択ができなかった。
実際、回復していく人ほど、「今日はここまでにしよう」「今は休もう」と自分に言えるようになります。反対に、「もっと頑張れ」「まだ足りない」と自分を責め続ける人ほど、心身の不調が長引きやすいのです。
これは精神論ではありません。消耗した状態では判断力が落ちます。追い詰められた状態では視野が狭くなります。疲弊し切った状態では、本来なら見えるはずの選択肢が見えなくなります。
休息は「何もしないこと」ではありません。回復するための能動的な行動です。
「頑張る」の方向を変える
ここで一つ、考えてほしいことがあります。
あなたは今、何のために頑張っていますか。
加害者に認められるために?嫌われないために?「問題社員」と思われないために?いじめが終わることを願って?
もしそうなら、その「頑張る」の方向が、あなたを消耗させている可能性があります。
頑張る力があるなら、その力を自分のために使ってほしいのです。
記録を残すことに使う。信頼できる人に話すことに使う。相談窓口を調べることに使う。今の職場を離れる準備に使う。自分の感情を言葉にすることに使う。
「加害者に認めてもらう」ために使うのではなく、「自分の状況を変える」ために使う。
これは諦めではありません。戦い方を変えることです。
ハラスメントを受けている状況で、相手の評価を変えようとしてもほとんどの場合うまくいきません。しかし、自分の状況を変えることはできます。証拠を残す。事実を記録する。味方を増やす。選択肢を広げる。
そのために「頑張る」ことは、あなたを消耗させません。あなたを守る行動になります。
自分を許せる人は強い
職場いじめやパワハラの被害を受けていると、自分を責める癖がつきます。
だからこそ意識してほしいのです。
あなたは十分頑張っています。今必要なのは、さらに自分を追い込むことではありません。
「今日は休んでもいい」
「つらいと思ってもいい」
「助けを求めてもいい」
そう自分に言ってあげることです。
先ほど紹介したA先生は、ある日ついに動けなくなりました。朝、起き上がれず、病院に行き、そこで初めて「もう無理だったんだ」と気づきました。
しばらくの休養を経て、A先生は言いました。
「休んでよかったです。休む前は、休むことが負けだと思っていました。でも今は、あのとき自分を守る選択をしてあげられてよかったと思っています」
自分を許すことは敗北ではありません。傷ついた心を守りながら前へ進むための、大切な力です。そして、その力を持つ人こそ本当に強い人なのです。
「頑張る」ことが美徳とされてきた時代がありました。でも、誰かに傷つけられている状況で、傷つけられながらも笑顔でいることを「強さ」と呼ぶのは間違っています。
本当の強さとは、「今の自分には限界がある」と認めることができる力です。「これ以上は無理だ」と自分の声を聴ける力です。「助けが必要だ」と言える力です。
あなたはもう、十分すぎるほど頑張ってきました。
今日、自分にかけてあげる言葉を一つ変える
この記事を読んで、少し楽になった部分があったなら、一つだけ試してほしいことがあります。
今日、頭の中に「もっと頑張らなきゃ」という声が出てきたとき、その声に気づいてみてください。
そしてこう問いかけてみてください。
「これは本当に私の声か。それとも、誰かに言われた言葉が頭の中に住み着いているのか」
自分を責める声が、加害者の声の残響だと気づいたとき、少しだけその声の力が弱まります。
完全に消える必要はありません。ただ、「これは私が本当に思っていることではないかもしれない」と一歩引いて見られるだけでいい。
今日の「もっと頑張らなきゃ」に気づいたら、その言葉の出どころを一秒だけ考えてみてください。それだけでいいです。
★職場いじめ、パワハラ・モラハラには構造があります。その構造を知り、被害を根本的に終わらせるための内容をまとめました★
