【創作大賞感想】⑬『パーフェクトワールド』を読んで
仕事でも私生活でも、日々押し寄せる膨大な情報や「正しさ」の議論に少しばかり疲れていたとき、X(旧Twitter)のタイムラインで流れてきた紹介が妙に頭から離れなかった。環境破壊が進んだ砂漠化社会を舞台に、人為的強化を施された「パーフェクト」と、過酷な環境に適応した変異種「銀の種族」が、それぞれの「完璧さ」を掲げて衝突する全30話のSF群像劇『¬ PERFECT World(パーフェクトワールド)』。合理性や不完全さというテーマが、今の自分の心境に引っかかったのかもしれない。
気がつけば、週末のまとまった時間を使って一気に読み進めていた。全30話というボリュームは、長すぎず短すぎず、大人が週末の2日間で完全に現実を忘れて没頭するのにちょうどいいスケール感だ。
物語の軸となる二つの人類の対立は、技術革新がもたらす残虐性を容赦なく描き出す一方で、主役であるルーシアやナユリが抱える不完全な心、そして過酷な世界の中で必死に居場所を探す姿が実に泥臭く、シリアスな筆致で紡がれている。理詰めの世界観でありながら、描かれる人間模様には確かな体温がある。
この作品を開いている間は、日頃のタスクや社会の喧騒といった「現実のノイズ」が綺麗に消え去っていた。読後、心地よい疲労感とともに本を閉じ、窓の外のありふれた日常の景色を見たとき、妙に世界が新鮮に感じられたものだ。
SF小説というジャンルではあるが、決して難解な専門用語で煙に巻くタイプではない。登場人物たちの葛藤が丁寧に描かれているため、普段あまりこの手のジャンルを読まない方でも、1話、2話と読み進めるうちに自然と砂漠の乾いた空気感の中に没入できるはずだ。
物語の結末を含めた全体の完成度は非常に高いが、世界観がリアルで過酷なポストアポカリプスであるため、読む側のエネルギーをそれなりに消費する点だけは人を選ぶかもしれない。それでも、日常から少し距離を置き、骨太な人間ドラマに身を浸したい夜には、これ以上ない格好の処方箋になってくれるだろう。
