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シャーロットの気持ち /劇団四季「ゴースト&レディ」を観て

ああジャック!
「駆け落ちしよう」だなんて
あなたはついにその言葉を言ってしまった。

嬉しくないわけがない。
ジャックは男らしくて、やさしくて、かわいくて、
そして何より、わたしを女神のように崇めてくれる。

でも、どうするの?
どこに行くの?
どこかの田舎に逃げて、みすぼらしい小屋に住んで、
手をあかぎれだらけにさせながら、
わあわあ泣く子どもたちを育てるの?

もうわたし、舞台に立てないの?

「おお…ロミオ…あなたはなぜロミオなの…」

逃げたら、「あの人」はきっとわたしたちを探すわ。
そしてあなたを殺すかもしれない。
どこに逃げても追ってくる。
ああジャック!
あなたが殺されるだなんて!

今夜、ジャックはわたしを待っているでしょう。
でも行けない。
死なせたくないもの。

「あの人」はどうしたら納得してくれるかしら。

「あの人」はすでに、
パリの有名な決闘士 シュバリエ・デオンを呼び寄せている。

ならば、デオンにジャックとの決闘を依頼しましょう。

ジャックはきっと勝ってくれる。

どこにも行けないカゴの鳥のわたし。
カゴの中で歌うしかない、わたし。

あなたと過ごしたちいさな罪の時間を、忘れない。
薔薇色の思い出。

どうぞ、あなたはあなたらしく生きていてほしい。


駆け落ちを告げられたとき


ジャックが「駆け落ちしよう」と言ったとき、
シャーロットは何を考えただろう。

嬉しくなかったはずがない。
男らしくて、やさしくて、少し愚直で、
なにより自分を女神のように扱ってくれる男。

けれど、現実をほんの少し想像しただけで、
頭の中に「無理」という言葉が押し寄せる。

そして何より、逃げたら「あの人」はきっと追ってくる。
どこにいても。
そしてきっとジャックは殺される。

シャーロットは、ジャックを失う未来を想像できてしまった。

だから彼女は行かない。
行けない。

代わりに、デオンを差し向ける。

それは裏切りだったのか。
それとも、唯一残された選択肢だったのか。

パリ一の決闘士、シュバリエ・デオン。
だがジャックなら勝てるかもしれない。
少なくとも、「ただ殺される」よりは生きる可能性がある。

シャーロットは、生存を信じたのだと思う。
確信ではなく、祈りに近い思いで。

彼女はいつも、選択の余地を残す。

ジンの飲み比べもそうだった。
負けたら従う、勝ったら自由。
完全な支配にはしない。

駆け落ちには拒絶ではなく、微笑みで返す。
決闘は処刑ではなく、闘いに変える。

それは優しさかもしれないし、
卑怯さかもしれない。
あるいは、生き延びるために身につけた処世術かもしれない。

ただ一つ確かなのは、
シャーロットは誰かの未来を
自分の手で一つの形に決めてしまうことだけは、しなかったということだ。


最後に


結果として、
この選択によってジャックは死んだ。

生まれてからずっと搾取され、
奪われ、裏切られ続けてきたジャックの人生の中で、

初めて
「搾取ではないかたちで選択の余地を与えてくれた人」
⸻その存在を失った。

それは、生きる意味を失ったに等しいこと。

そして、ジャックはゴーストになった。



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