罪と誕生石

今日は私の数少ない友だちと会っていた。
友だちと会うのは、年1回か2回か、くらいで、会わない年もあるくらいで。

元々、この友だちとはベタベタした付き合いをしたことがなく、その点お互いにめんどくさい感じにならないように、気をつけているくらいで。

最近、『メルカリ』にハマっている私は、ずいぶん昔の話を思い出した。これから書く話は実話である。

小学生の頃、私は壮絶な貧困生活サバイバーとして生きていた。見かけやイメージが絵に描いたような貧乏で、更に勉強がまったくわからない子だったので、ずいぶんまわりの子から、雑な扱いをされた。ただ、その中でも、数人の友だちができることもあった。その友だちの中で、『本ならなんでも買ってもらえる』という羨ましいことこの上ない家庭の子がいた。その子は勉強がわかり、博識で、夢は小説家だったと思う。その子は、その子の中で友だちを選んでいたようだった。私はその子の中で、家に呼んでもいい方の子というふうになった?のか?とにかく、誰でも家に上げていいという感じには思えなく。ただ近所とか、昔からのお友だちというのはほぼ無条件であり、選べない。ということは普通にある。私はその子の家とは真逆レベルに学校の反対側に自宅があり、その子から、「うちに遊びにおいでよ」という誘いがない限り、その土地の子からお誘いがない限り、その土地に行くことはなかった。同じ街の真逆に住む私は、自分が住む自宅から半径60メートル以内にすべての物が手に入る地域にいたため、学校の向こう側へ行くことがなかった。

その子の家庭はずいぶん厳しく、すごく若いお母さんだったので、若いことを理由にいろいろ言われるわけにはいかない。というプレッシャーがあったのかもしれない。若いと言っても、意味合いとしては、大学卒業を経て結婚という感じの若さだったので、おそらくほんとうに社会人経験がもしかしたらなかったのかもしれない。どういう厳しさか?というと、↑に『本ならなんでも買ってもらえる』という羨ましい環境ではあるが、お小遣いが存在しない。とか、自転車に乗ること自体が禁止。とか、お菓子はなるべくお母さんの手作りお菓子を食べる。とか、その子なりの窮屈さはあったようだった。帰宅は5時。とか。そういうやつで。逆に帰宅は5時。と決まっているので、その子のうちには5時まで遊んで、私が帰路につく。というのはできて。私もそのへんはギリギリで。

「こんにちは。お邪魔します」

「いらっしゃい。お人形さんごっこしよう」

「うん」

当時、私はみんながリカちゃん人形とかリカちゃんの友だちをマイドールにしている中で、まさかの紙人形で相当無理があるが頑張っていた。中には酷い子というのは普通にいて。私が紙人形しか手に入らない状況をあざ笑うように、私の紙人形の手を破り切る。というような非人道的な子は現実としていました。その子はそういうタイプではなく、私をあたたかく迎え入れてくれた。お人形さんごっこをしていたらその子が「見せたいものがあるんだ」ということになり、天板を上げるタイプの机だった記憶なのだけど、私も天板を上げるタイプの机を使っていたのだけど、厚みが別物で。私の机のようなマグネットタイプの塩ビではなく、北欧製のような分厚い天板に飾り模様が入っていたような記憶だ。その子は机から塩ビなのか、本革なのか、よくわからないけど、赤い箱のようなものを出して。その箱は、文庫本の半分くらいの大きさで厚みは一般的な文庫本の2倍くらいのちょっとした大きさで。最初はオルゴール?なのかな?みたいに私は思っていた。そのちょっとした大きさのある赤い箱には小窓があり、赤いものが入っていて。楕円形で。

「これね、私の誕生石で、私が大人になった時に、指輪とかネックレスとか、大人になった時にどういうアクセサリーにするか、決めることになっているんだ」

「え!宝石なの!」

「うん。宝石」

子どもの私はびっくりしすぎて。CMでは『結婚指輪は給料3ヶ月分』というダイヤモンドのセールス(デビアス)に毒されていたので

宝石(貴石)=100万円!

くらいの頭だったので、もの珍しさはあったから逆の怖さがあって。絶対触ってはいけない。そういうレベルの緊張だった。その石は赤だったので、ルビーかガーネットだと思うのだけど、ルビーとガーネットでは金額が大違いで。ただ、子どもだったけど、子どもに無制限に本を買ってくれる家だったので、ルビーだったのかな?みたいには思うんですよね。オーバルタイプで、すでにカットされていた記憶で。

「じゃあさ、大人になるの、楽しみだね。ネックレスか、指輪にするか、最終的に決めるんだね」

「うん。大人になるまでに考えるんだ」

帰路に着くまで、ひとんちは夢があるな。というのがあって。羨ましい以前の問題で、世界が違う。とか、親はそこまで与えてくれる存在なんだ。とか、その子はあの赤い箱に入った赤い石をネックレスにするのかな?ネックレスの方が指輪より落とさないんじゃないか?とか、自分にはまったく関係がない『人の将来の姿』を想像した。その子はきっと、ネックレスにする。そう私の青写真には映った。

それからどれくらい経ったのだろう。うまく時間が掴めない。おそらくは1年後?くらいだったんじゃないか?そのくらい突然その子からとんでもない知らせを聞くことになった。

「誕生石がなくなった。。。」

「え!だって、誕生石は箱に入っていたから、なくなりようがないんじゃないの?」

「ない。。。ないの!」
その言うと、その子は泣き出した。

「私じゃないよ。私はそういうことはしないから」

「わかってる。minoじゃない」
逆にわかっているから、私に教えてくれたのだと思う。

その時、私は相当ショックを受けた。
これは普通の窃盗とは別物の話で。
この誕生石を盗んだ人は、人の将来の楽しみを奪う。というありえないことをしたのだ。なんでこういうことができるのか、まったく理解できない。この話を友だちにした。友だちも「それは盗られた人も聞いた人もショックな話だ」と、理解してくれた。

「こういう話をするとさ、中には「子どものうちに宝石を与える」ということを責める人は絶対いるわけだけど、ピアスでバチこん!って、誕生石すぐ入れる場合もあるじゃない。自分の子とわかるように、幸せを願う。みたいな。まぁ、貴石だから、特別感はやっぱりあるのだけど、盗むというのが、まったく理解できないんだよ」

「だってさ、お母さんだって、子どもが誕生してさ、この子は何月生まれだから、この石って、わかっているから、用意して、ふたりで楽しみにしていたと思う。これ、酷いことしてくれた話だよ」

「まったく理解できなくて。たぶん、その子は誰が取ったのか、わかっていた可能性もあるんだよ。誰がうちに入った日に誕生石がなくなった。とか、その箱がなくなった。のか、そのへんほんとうにわからないのだけど、私はその子が泣くのをその時にはじめて見たんだよね。だってさ、ローズクォーツひとつぶ失くす。とかとは話が違うんだよ。貴石だと、それなりの金額とかあるじゃない。それをさ、なんで盗むのか、わからない!とか、言いようがない」

「たぶん、そういうことまで考えられないから、人のものを盗ることができるんじゃない?人の悲しみや将来の夢とか、考えてなくて、ただ「きれい」で「高そう」で「カネになる」くらいの頭なんじゃないの?」

「なんかさ、子どもが子どもの夢を奪う。みたいなことだったのかな?もうね、いろいろ盗った人の気持ちが理解できなさすぎる。子どもが盗ったところで、どうにもならないやつだよね。売ることもできないし、貴石をどうにかすることもできない。どういうことか、いろいろわからないんだよ。なんかさ

子どもだという理由で罪に問われない。と、勘違いしてるやつとか、いっぱいいるよね。普通に

子どもでも捕まる。って、わかってないじゃない。

なぜか成人するまでは刑法に問われない。と、勘違いして、無法なやつってどの時代にもいるじゃない」

「それはいる。なんでわからない?みたいなのはほんとうにいる」

友だちと私の小学生時代の話をしていると、私にとってのひもじい思いは、はっきりいって「ちょっとそれ、ただのいじめじゃん」という感じだったらしい。↑に書いた、紙人形だったから、リカちゃん人形なんかを与えられている子に紙人形の手を切られて、泣きながら、セロテープで貼って、紙人形を使い続けた。というのは、なかなか酷いことをされてるよ。という。また、自分が優位だと思って、それをやる気持ちは酷いというか

理解しようがない。と。。。

たぶん、今頃、なんらかのかたちで、その手を切ったり、足を切ったりした子は、苦しんでいることでしょう。。。紙人形とは。。。ひとがたなので!!!

ただ、私はなんとなく、その誕生石の子は、ほんとうは

犯人を知っているような気がするんです。
いえないような人物が犯人だった。みたいなことって、あるじゃないですか。いろいろこの先のことを考えると、丸く納めた方がいい。そういうので、言わない方を選ぶ。みたいな。私はそんな感じを受けたんです。

私はその子が泣くのを2回観ている。のですが、1回は↑の誕生石がなくなった報告を受けた時で、私もびっくりしすぎて動転して、うまく優しい言葉をかけることができなかった。というのが、当時も今も同じ温度で感じています。

たぶん、その子としては、ただそばに私がいるだけでよかったのかもしれない。

それでも、せめて、言葉くらいはなにか言えなかったものかな。。。みたいなのがあって。

ずっと、その後どうしたのだろう。と、思っていて。もしかしたら、私には「誕生石がなくなった」と泣きじゃくり、本音を表したけど

家族や他の友人には隠して

たとえば、高校生になってから、いろいろ調べて御徒町宝石ストリートまで行き、ルビーストリートのどこかの店に入り、なくなってしまったあの赤い貴石と同じくらいの大きさで、同じくらいの色の石の値段を知ることはできる。そうしたら、その石の値段を目標にして、バイトして貯金して、赤い石を買うことはできる。私は彼女だったら、それくらいのことは成し遂げるんじゃないか。と、そういうことを考えていて。

その子は27で結婚して。優秀な人で、頭いい大学卒業して。就職云々の話は知らなくて。あの大学入って、卒業したそうだよ。それで、もう結婚されるそうだよ。という感じで。外側から話を聞いて。一度バスで偶然会ったことがあって。もうその頃には婚約していたのだと思う。その時は「潰しが効かない」と難しいことを言っていた。潰しが効かない。難しすぎなんだけど、それまでは潰しが効く人生だったということなの?とは思った。ということは

そこそこ思い通りに人生運べていた。ということなのだと思う。

就職が潰しが効かないのか
結婚が潰しが効かないのか

難しすぎだった。

ただ、27歳のその子はきっと、誕生石の赤い石よりも何倍も素敵な貴石をもらって、結婚されたのだと思ってる。

もうきっと、世界が違う人になっていることでしょう。

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