あの人どうしているかしら
土曜日の昼下がり、私は不意にこんなことを思った。
そういえば最近、観月ありさはどうしているのだろう。
余計なお世話なことこの上ないが、思ってしまったのだから仕方がない。
最近、私の青春期に活躍していた人たちが、スキャンダルによって転落したり、活動の場をテレビではなく、他のところに移したりしている。
しかも今はスマホでもパソコンでも、自分好みの情報を勝手に選んで優先的に表示してくれたりする。
意図的にアンテナを立てていないと、ほうぼうの情報をまんべんなく得ることが難しくなっている昨今、私はここ数年、観月ありさがどうしているのか、まったくわからない状態に陥っていたのである。
観月ありさが活躍していた時期と、私の青春期が重なっていたこともあり、その頃はどんなにぼんやりしていても、今、観月ありさがどうしているのかをなんとなく知ることができた。
コマーシャルに出ていたり、ドラマに出ていたり、ときには熱愛報道があったり。
テレビのスイッチを入れ、電車内にぶら下がっている吊り広告に目を注いでいれば、無意識のうちに、観月ありさ情報を入手することができたのである。
しかし、今、私は観月ありさがどうしているのか、まったくわからない。
これは観月さんを揶揄しているわけでは決してなく、情報の拡がり方の質が、二十年前と今とではまったく異なっている証拠なのだと私は思う。それでも、なんでもない土曜日の昼下がりに
今、観月ありさはどうしているんだろう。
と、思わされてしまうのだから、一時代を築いた人というのは特異な引力を持っているものだ。
でも、どうしているのか、今、わざわざ調べたりしない。
調べはしないくせに、つい、夫には訊いてしまう。
「最近、観月ありさって、どうしているんだろうね」
昼下がりの、ぼーっとしているときだからできる他愛のない会話である。時間の隙間を無為に埋めるような行為だ。
夫は、パソコンから目を離すことなく言う。
「伝説になったんじゃないの?」
そのひとことに、私の頭が急に開きはじめる。
彼女がコマーシャルしていた清涼飲料水を好んで飲んでいたことを思い出す。歌も上手だったことを思い出す。あさくら~、と役名で呼ばれ、松下由樹に追いかけ回されていたことを思い出す。昔を思い出しはじめると止まらない。これは危険な症状だ。あれもあった、これもあった、と思い出探しをしてしまう。発掘を続けるうち、観月ありさを飛び越え、別件の検索をはじめたりしてどんどん収拾がつかなくなるので、今日はこの辺でやめておこうと思う。
このへんでやめた。
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