可愛いラテアートなんてなくても
娘たちを慣らし保育に送り届けたあと、コメダ珈琲のフカフカのソファでコメダブレンドをすすっていた。店内には、窓際のBOX席から楽しそうな女性たちの会話が聴こえてくる。
音楽のような会話と、店内に漂うコーヒーの香りを感じていたら、10年以上前に新大久保に通っていたときのことを思い出した。
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「今日新大久保行ける人いますかー??」なんて携帯で声を掛ければ誰かしらが「行きまーす!」と返事をくれた。K-POPが好きな友人たちと、新大久保に繰り出す。当時の唯一の楽しみだった。
駅前のファミマで待ち合わせして、大体向かうのは韓国イケメンたちが働くカフェだった。1号店2号店3号店と続き、最後の方にはまさかの4号店まで誕生した。女性たちはそれぞれの推しが働くお店に入る。
私たちはいつもその時入れそうなお店に入っていた。メニューはピンスという日本でいうかき氷や、イケメンが可愛い絵やメッセージを書いてくれるラテアートやワッフルだ。味も美味しかったけど、それより雰囲気が楽しいところだった。
そこはただ、女性たちがカフェを楽しむ場所ではない。コーヒーを飲みながらイケメンたちを眺める特殊な場所だった。いつもよりオシャレした女性たちが店員と写真を撮ったり、きゃっきゃっ言いながらイケメンを目の保養にデザートを楽しんでいた。
みんな、通い詰めて店員と顔なじみになるのを夢見ていた。店員たちは女性客たちのアイドルだったから。失礼、その中にも単純にコーヒーやデザートを楽しんでいる人たちもいた。
わたしは特に推しがいたわけではないけど、ツルツルの白い肌にすらっとした長身の韓国人男性は、やっぱり目を奪われるものがあった。目の保養とはこういうことだろう。
あるとき、アパレル時代の先輩を連れて行ったとき、「ねぇ、今まで見た中で一番生き生きした顔してるよ」って言われた。イケメンとコーヒーの相乗効果は、普段仕事でくたびれた女性たちをも生き返らせていた。
週1ぐらいで通うものだから、コミュ力不足の私でもさすがに店員さんに知り合いができた。きっかけは、当時のTwitterで一番優しそうな店員さんをフォローしたことだった。
ポロンとすぐに店員さんからメッセージが届いた。「おぉ!あなた、よくお店来てるよね。知っているよ」しまった。当時プリクラの画像をアイコンにしていたのを忘れていた。ゴリゴリの激しい加工がかかっているのに、よく分かったな。
話を聞けば、私が韓国にいる友人に顔が似ているで、よく覚えていたそうだ。私のこと韓国人の様な美人を想像したでしょ?
ここで言っておくけど、私はそんな韓国美女ではない。そもそも美女ではないから安心してほしい。だって「ほら?似ているでしょう」と見させられた女性の顔は、全然私に似ていなかった。
ただ、韓国人に知り合いが出来たのは、素直に嬉しかった。そしてあの店では店員さんと知り合いになって、ラテにメッセージを書いてもらうのが、当時のステータスみたいだったから。
中学生のときに男の先輩と仲良くなって、キャッキャッしている陽気な女の子たちを思い出した。憧れの青春が今謳歌できているようで変な優越感だった。
この韓国人のお兄さんとはこれはまた、1エピソードかけそうなのでまた今度書くとしよう。
韓国ブームが少し落ち着いたころ、久しぶりに新大久保を歩いたらそのカフェは1号店~4号店まで違うお店になっていた。そこにあったものがなくなるのは、なんとも寂しい気持ちになった。
きっとあそこに通い詰めた女性たちは、別の楽しいことを見つけてそこで生きているだろう。
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珈琲の匂いはそのときのキュンとした記憶や、ドキドキお店の扉を開いたことを思い出させる。
私は今、コメダ珈琲で当時は飲めなかったブラックコーヒーを飲んでいる。可愛いアートもないし、イケメン店員と呼ばれるアイドルも店内にはいないけど、私は今癒されている。
今隣にイケメンカフェがあっても、私はこのフカフカの赤いソファを選ぶだろう。
子育てに疲れた体には、可愛いデコレーションのワッフルより、この添え物の豆がちょうどいい。
