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『あいつ』第1話〜第3話 ついで…ね



第1話 ついで…ね



あいつの名前は宮森飛鳥。
違うクラスなのに、僕の一日に入り込んでくる。

大人びた横顔、硬い後ろ姿。
少し険しい表情。

あいつはいつも一人。
それは僕も一緒。

ショートカットが、派手に揺れる。
急かされるように、肩で息をしてる。

カバンで揺れるお守り。
それだけが、あいつのアクセサリー。



昼休み。
少しだけほっとする…

いつものように校舎の屋上へ。

巾着袋から取り出す、二つの物体。

食パンにマヨネーズやケチャップを塗って、
二つ折りにしてラップで包んだだけ。

高2男子の昼飯ではない。
だけど、入学した時から…これだ。


今日もいた…
初めて屋上に上がった日から、ずっと。

風に揺れるショートカットは、
ぼんやりと、いつも遠くを眺めていた。


今日こそは…と決めていた。
手のひらが、少し湿ってきた…


「昼飯、食べないのか?」

「持ってきてない」

「なんで?」

「………」

「忘れたのか?」

「………」

「ダイエット…とか?」

「……………」

「必要ないだろ?」

「それ…」

「何か、引っかかるのか?」

「どうかしら」

「ハラスメントとか?」

「まずいんじゃない?」

「そんなつもりはない」

「キムラ君、アウト」

「面倒だな」

「そう、面倒」

「ん?」

「持ってくるの、面倒だから」

「でも、腹は減るだろ?」

「気にしないから」

そういう問題か?

「ほら、食えよ」

「これ…」

「一個だけどな」

「キムラ、足りるの?」

「さっきのお詫び」

「ハラスメントの?」

「そんなつもりはないけど」

「気にしすぎ」

「でも、アウトって言ったろ」

「大変ね」

「考えたこともなかった」

「でも、面倒よね…」

「そうなのかな」

「それ、なあに?」

「マヨネーズ」

「わたしのは?」

「ケチャップ」

「それがいいな」

「文句言うなよ」

「キムラ君、言い方」

「わかったよ…」

今度から、四つ作るか。

「これ、キムラが作ったの?」

「ただ、食パンを折り曲げただけだよ」

「ふーん…」

「面倒でも、これぐらいならできるだろ?」

「キムラ君、イエローカード」

「これもか?」

「知らない」

「何も言えないじゃんかよ」

「黙るしかないわね」

「………」

あいつはラップを少しずつはがした。
人差し指だけ赤くなっている。

「でもさあ…」

「何?」

「普通、ジャムとか、
ピーナッツバターじゃない?」

「そういう発想はなかった」

「マヨネーズとケチャップって…ねえ?」

口の端にケチャップがついてるぞ。

「食べながら文句言うなよ」

「だって、ねえ…」

「しかも、最後に食べるはずの
マヨネーズを」

「最後って、二つだけでしょ」

「その一つを、宮森が食べてる」

「そんなことで文句言わないの」

「ホント、面倒くせーな」

あいつは、几帳面にラップを折りたたんだ。


「宮森の分、二つでいいだろ?」

「ん…?」

「明日から…作ってきてやるよ」

「これ?」

「マヨネーズ入り、二つ」

「頼んでないけど…」

「面倒でも、ちゃんと食べないと…な?」

「下心…ある?」

「何言ってんだよ、
メシの時間に食べないなんておかしいだろ」

「大変…でしょ?」

「ついでだから、大したことないよ」

「何?ついでって…」

「それで決まりな」

「キムラって、いつも作ってるの?」

「作るってほどのものじゃないよ」

「親は?」

「母親だけ」

「………」

「離婚したんだ、中学の時に」

「えっ?」

「時間が不規則だから、自分で作ってる」

「ごめん…」

「はい、宮森、アウト」

「………」

「ハハ…気にするなよ。
大したもの作ってないし」

「これ?」

「さすがに三食それじゃないよ」

「でも、えらいじゃない」

「腹減るんだから、しょうがないよ」

「キムラって…ひとりっ子?」

「どうして?」

「いや、なんとなく」

「妹が一人いるよ」

「妹?」

「歳が離れてるんだ。小4」

「妹のも作ってるの?」

「昼は給食があるから。朝と夜」

「大変でしょ?」

「もう慣れたよ」

「大したものじゃないけど?」

「言うなよ」

「だから気にするなよ。ついでだから」

「………」

「でもさ…」

「………」

「宮森って、結構喋るんだな」

「キムラも…でしょ?」

「久しぶりかも」

「どうしてかな?」





「前から気になってたんだけどさ、
宮森のカバンって、お守りだけなのな」

「あぁ…これ?  面倒だから」

「ここでもか」

「雨で濡れたら面倒でしょ?」

「そのために傘があるだろ」

「差すの下手だから」

傘を差すのが下手と言う人、初めて見た…

「でも…宮森だったら、どんなマスコット付けるのか気になるけどな」

「お守りで十分よ」

「そのお守りは?」

「おばあちゃんがくれたの」

「おばあちゃんか…」


「キムラは気にならないの?」

「何が?」

「わたしはひとりっ子なのか…とか」

「分かってる」

「え?」

「そう聞くって事は、ひとりっ子なんだなって」

「………」

「事情があるだろ?」

「…………」

「宮森にも俺にも」

「キムラってさあ、会話に若さが無いよね」

「はい、宮森、レッドカード」

「はいはい、とても高2の会話とは…ね」

「宮森だからかな」

「どういう意味よ」

「とりあえず、言ってみた」

「妹にも?」

「小4だからな、もう少し柔らかく」

「赤ちゃん言葉で?」

「柔らかすぎんだろ」

「聞いてみたいな」

「宮森のも聞いてみたいぞ」

「いきなり言われても困りまちゅ」

「それは困りまちゅね」

二人、お互いを指差して笑った。

もうすぐ授業の時間だ…


「キムラさあ、あれ、何に見える?」

「あれって…雲しか見えないぞ」

「その雲よ。何に見える?」

「うーん…ドーナツかな」

「うそー!何で同じなの?」

「??」

「幼稚園の時に聞かれて、みんなに笑われたんだ」

「みんなに?」

「先生にもね」

「面倒くせーな」

「………」

「面倒くさがりは、そこからか」

「そうかもね…」





「明日も、話…聞かせてくれよ」

「わたしの?」

「俺の話もするからさ」

「どうしようかな」

「昼飯のついでにさ」

「ついで…ね」



キーンコーン カーンコーン……


僕たちは慌てて階段を降りた。




第2話 食べかけのドーナツ



「おにいちゃん、朝だよ」

ミサキの声だ。

なんで、あいつじゃないんだろう?

天井に、あいつが浮かぶ。

目だけ笑ってるあいつ。
口を尖らせたあいつ。
そして…

「おにいちゃん、おへやちらかってるよ!」

あいつが消えた…



ミサキは少し歳の離れた妹だ。

親は、母さんだけ。

僕は冷蔵庫の貼り紙を見た。
看護師の母さんの勤務表だ。
明日は日勤か…

食事代をもらったこともあった。
でも、「大変だろうから」と、
僕が、あり合わせで簡単に作っている。

朝はトーストで、
昼はパンを折り曲げて、
夜はなんとなく、野菜炒めとか…

そんな僕の姿を見てか、
妹も手伝ってくれる。

しっかり者の、小学四年生。
「ちらかってるよ!」に反応してしまう僕。

そういえば…

夕飯の洗い物を後回しにして、
シャワーを浴びたところまでは覚えてる。

「おにいちゃん…つかれてるの?」

「ん?」

小さなポニーテールが、生意気に揺れている。

「おにいちゃん、バスタオル持ったまま、
ゆかでねてたよ」

「ん、ん…?」

ぐしゃぐしゃのバスタオルが、じゅうたんの上で丸まっていた。

「ミサキ、なんどもおこしたんだよ」

目が覚めた時は、ベッドの上だったな…

「ミサキ、母さん寝てるから…な」

シーッと人差し指を口に当てる。

母さんを起こしてしまうのは、なんだか悪い。

「ミサキ、ありがとうな」

耳を掻きながら台所へ行くと、
昨日の洗い物は、きれいに片付いていた。

「ミサキも手伝うよ…」

「洗ってくれたのか?」

ミサキは、こくんとうなずいた。

「大丈夫だよ。食パン折り曲げるだけだから」

ホントは、なんで今日は4枚なの?って聞かれるのが面倒なんだけど…

「急がないと。班のみんな、待ってるぞ」

「今日、もえるゴミの日だよ?」

「分かってるって」

僕はパンをラップで包んだ。


戸締まりよし。燃えるゴミもよし。あとは……

「母さん、行ってくるよ」

僕は心の中でつぶやいた。



朝の空は、雲も寝坊をしたみたいだ。
数えるほどしかない雲。
あいつには何に見えるんだろう。




午前の授業。

黒板の文字も、
先生の話も、
全部、あいつになっている。

あいつとは、違うクラス。
なのに、もう屋上にいるみたいだ。

あいつが、僕の名を呼ぶ…





「キムラ!」

先生の声で、ようやく黒板に戻った。
教室中のあいつが舌を出す。

キーンコーン カーンコーン……

天井のスピーカーが、僕を急かす。



昼休み。

風に揺れるショートカットは、
昨日と同じ、遠くを眺めていた。
少し険しい表情で。

何を見てるんだろう…

マスタードを多めに入れたことを、
ちょっぴり後悔した。



「どしたの?そんな所で突っ立って」

昨日の今日で何言ってんだよ……とは言わない。

「今日の雲は何に見えるかな?」

「ドーナツ以外でね」

「やっぱりドーナツだろ」

「なんか…気を引こうとしてない?」

「なんでそうなるんだよ」

気にはなるけど…

「キムラ君、ずいぶんと可愛い巾着袋ですな」

「仕方ないだろ、妹のプレゼントなんだから」

「プレゼント?」

「誕生日だよ」

「へえー」

「やめろよ、こっちだって恥ずかしいんだから」


「ねえ…」

「ん?」

「兄妹ってどうなの?」

「どうなの?って…何だよ」

「ミサキちゃん…だっけ?」

「少し歳が離れてるけどな」

「小学…」

「四年生」

「ミサキちゃんって、どんな子なの?」

「どんな子って…」

「キムラの妹だけに…」

「なんだよ、それ」

「いい意味で」

「片付けはするのか?」

「片付け?」

「家とか、部屋のさ」

「するに決まってるでしょ」

「意外だな」

「落ち着かないでしょ?」

「それはそうだ」

「キムラは片付け好きそうだよね」

「好きじゃないよ」

「ホントに?」

「やらないと、ミサキがうるさいから」

「ミサキちゃんが?」

「お兄ちゃん、散らかってるよとか、
出しっぱなしだよとか」

「しっかりしてるんだ」

「何でだろうな」

「ちょっと心配じゃない?」

「何が?」

「しっかりし過ぎると…」

「壊れて、
宮森みたいに面倒くさがりになっちゃうとか」

「それなら、ちょうど良くなるかも」


いつのまにか、
フェンスの上にカラスが顔を出していた。

「キムラは聞かないの?」

「何を?」

「わたしのこと」

「ひとりっ子なんだろ?」

「そう…だけど」

「なら、いいだろ」

「親のこととか」

「昨日言ったじゃん、事情があるだろ?って」

「うちの親、仲が…」

「宮森」

「………」

「無理に話すなよ」

「でも…」

「俺の話でいいだろ」

「………」


カラスが、お構いなしに鳴き始めた。

「中2の時に離婚したんだ。
俺たちは母親に引き取られた。いつも喧嘩ばかりしてたよ」

「喧嘩ばかり…ね」

「お守り」

「えっ?」

「別の話でいいだろ。ずっと気になってたんだ」

「分かりやすいわね」

「ん?」

「他の女子はぬいぐるみやマスコットなのに、
何でお守り一つだけなんだ…でしょ?」

「面倒なんだろ?」

「それだけじゃないの」

「他にもあるのか」

「ご利益」

「ごりやく?」

「ぬいぐるみや、マスコットでごちゃごちゃしてたら、ご利益の邪魔になるでしょ」

「高2の女子が言うセリフじゃないな」

「キムラ君、退場かしら…
おばあちゃん、毎年買ってくれるの。初詣に行った時に」

「おばあちゃんと?」

「親なんか喧嘩ばかりだから、一緒になんか行かないわよ」

「おばあちゃん子なんだ」

「そう…かもね」

「俺はじいちゃんしかいなかったからな」

「ご利益って、あると思う?」

考えたこともなかったな…

「毎年買ってくれるのに…全然ないじゃない」

「宮森…」

「わたしには……分からない」

「………」

「親も、キムラも、ミサキちゃんも」

「どうしたんだよ?」

「昔は、おばあちゃんも一緒だったのに…」

あいつは唇を噛んだ。

「分からないことが、もう一つ」

「………」

「何で、好きな味が分かるの?」

「え?」

「マスタード…入れたでしょ?」

「多すぎたか?」

「そうよ、涙が出てきたじゃないの」



「じいちゃんが、よく言ってたんだ」

「………」

「楽しみは後にとっておけ…って」

「………」

「だから…」


カアッ!
カラスが飛び立った…

夕立かと思った。
ザーッと降る雨みたいに、あいつは屋上から消えた。

キンコンカンコン…
チャイムまでびっくりしてる。


雲のドーナツが、食べかけみたいに欠けていた。





「ミサキ、
兄ちゃん卵かけご飯にするけど、どうする?」

食欲がなかった。
夕飯を作る気力もなかった。
かといって、妹の分もあるし…

「ミサキもたまごかけごはんがいい!」

大好物でよかった…
「ごめん」
心の中で、ポニーテールに謝った。


「ミサキ、
片付けは兄ちゃんがやっておくからな」


流しに茶碗を置く。
僕はしばらく動けなかった。

水を張った茶碗に、僕が映る。
なんだか、情けない顔だ。

ポタッと、蛇口から水滴が落ちた。
さらに情けない顔になった…


僕は、ピシャッと頬を叩いて、
洗い物を片付けた。




第3話 折り畳みの傘の向こう



パン!

誕生日のクラッカーみたいに。

箱の中。
ドアの向こう。
あの角の先。
そこに幸運が隠れている…
小学生の頃は本気で思ってた。


だけど…背が伸びるたびに、

箱を、
ドアを、
あの角を……素通りした。



「あれ? おにいちゃん、おきてたの…」

「いつも起こされたら、カッコ悪いからな」

「ゴミの日じゃないのに?」

「そうか、今日はゴミの日じゃないか」

「あやしいなぁ…なにかあるの?」

「なにもないよ。ほら、ご飯食べよ」

ホントはあるんだけどな。



クラッカーはいらない。
少しでいいから、幸運が欲しい…

改札を、
校門を、
あの階段を…


屋上。
曇り空。
あいつはいなかった。

隙間なく敷き詰められた雲。

「さすがに、ドーナツじゃないよな」

あいつの分、どうしようか…
雲が流れていく。

マスタードは控えめにしたのに…
目の端に涙が滲む。

残りのパンを巾着袋に入れた。



午後の授業。

黒板の文字も覚えていない。
あいつとは、違うクラスだ。

どうしたんだろう…
風邪か?
今日は休みだと勘違いしたか?

まさかな。



誰かに尋ねたかったが、
そんな勇気などなかった。

「キムラ、どうした? 顔色が悪いぞ」

先生が目の前に立っていた。


早退した…

具合が悪いように見えたのか、
勧められるままに学校を出た。



雨だ…

ぱらぱらと優しく降っていた。
すべてが色濃く見える。



しばらく考えて、折り畳みの傘を差した。
いつもと違う時間帯。
街の空気、すれ違う顔ぶれ。

少しだけ…あいつのことを忘れた。




キムラ君、退場かしら。


わたしには……分からない。




だめだ…


歩くたびに、ショートカットの
気だるそうな声が響いてくる。


クラッカーも幸運もいらない。
あいつがどうしたのか知りたい。



……?


折り畳みの窮屈な傘の向こうに、
何かが揺れている。

お守り…?

私服の後ろ姿。
背中がきれいに濡れていた。

確かに下手だな…




湿った風と雨の匂い…



「学校じゃなくても、そのカバンなのか?」

ゆっくりと振り返った、あいつ。


「様子を見に来たわけじゃないよ」

「そもそも、違うクラスでしょ」

「ちょっと気になったけど」

「なにそれ」

「お守りは濡れてないのか?」

「それだけは濡らさないから、カバンはこれで十分よ」

「面倒だから…だろ?」

「キムラ君、嫌な性格ですな」


「食べてないんだろ?」

巾着袋ごと、あいつに渡した。

「何?」

「残しといて…よかった」

「………」

「放っておいたら、
何日でも食べなそうだからな」


「病院…」

「えっ?」

「おばあちゃん…足、挫いたの」

「………」

「花の写真。いつも送ってくれるのに、
来なかったから、心配になって…」

宮森のスマホに、あじさいの花が咲いていた。

「近所の公園で撮ってるんだって。毎日…」

スマホは小さな植物園になっていた。


「味は…」

「お好みのマヨネーズ」

「マスタードは?」

「控えめにしといた」

「たっぷりでいいのに」

「ひねくれてるな」

「妹に怒られるでしょ」

あいつはカバンから巾着袋を取り出した。

「なんだ、持ってんじゃん」

「さっき買った」

「しかも、色違いだし」

「それしかなかった」

少し視線を逸らすショートカット。
お守りが大きく揺れていた。

気づけば、僕の背中も濡れていた。




「ドーナツ屋さん…」

あいつの指先の向こうに、
通りに面したドーナツ屋があった。

一瞬、僕のことかと思った。

恥ずかしくなるようなカラフルな外観で、
夕方になると店内は学生でにぎわう。
…入ったことはないけど。

店のガラスに僕達が映る。
あいつが少し幼く見えた。


「キムラ…ここ入ったことある?」

「ないよ。なんか場違いだし」

「わたしも…」

「そうだろうな」

「どういう意味よ」

「人が多いの苦手だろ?」

「でも…今は空いてる」

そういえば早退したんだっけ…


「おにいちゃん、ドーナツやさんだよ…」

「………」

「アスカ、ドーナツたべたいなあ…」

……………


「ねえねえ…」


「パンどうするんだよ?」

「よるごはんにする」

はあ?

「おにいちゃんって、おこづかいもらってるの?」

「いつまで妹やってんだよ」

「ドーナツ食べたいなあ…」

「ちょっとしかもらってないよ」

「わたしも出すから、ワリカンで」

「宮森はもらってるの?」

「たまに。おばあちゃんから」

「じゃあ、2個までな」

「おにいちゃん、アスカ3個食べたい〜」

またか…

「パン、食べられなくなるぞ」

僕はカバンを指差した。


「おばあちゃんがね……甘いものは別腹だって」

「それって、先にご飯でお腹いっぱいになった時のことだろ?」

「このことだったんだ」

「えっ?」

「キムラの…おじいちゃん」

「あっ」

「楽しみは後にとっておけって」

「やっぱ、面倒くさいな」



「せっかくだから……ね」



あいつの目が、少しだけ笑ってるように見えた。





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