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テレビの申し子

 久米宏さんの訃報に接した。若々しく活躍していたイメージが強いので、享年81と聞くと「え、もうそんなお歳だったのか」と思う。

 謦咳に接することはなかったが、同じテレビ業界にいるのでこんなレジェンドエピソードを聞いたことがある。

 スタジオには「プロンプター」というシステムがある。カメラの前のハーフミラーに手許の原稿を投影するもので、これがあればいちいち下を向かずともカメラ目線のまま原稿を「読み上げる」ことができるスグレものだ。

 ところが久米さんはこれを使わなかったというのだ。なぜか。

 テレビカメラを覗き込むと、中にレンズの“玉”がある。これがこちらに大きく迫ってきている際には自分がアップで撮られている。逆に玉が小さければルーズショットだ。つまり久米さんは自分がどのサイズで撮られているかによって所作を調整したいので、これを認識できないプロンプターを拒否していたのだという。

 すごい。まさにレベル違いのテレビの申し子である。

 私は業務の一環で外部の方をニュースのスタジオや副調整室に案内することがある。いろいろと「すごいでしょ」という機能を紹介することになるが、スタジオ内ではプロンプターの機能を説明するとともに、必ずこの久米さんのエピソードも披露するようにしているのである。

 合掌。
(26/1/14)

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