第17話: 繋がっていなかったエアー配管 —— 「商社が作った赤字工場の笑えない設計ミス」
5000万の赤字だった町の塗装工場を黒字化させた7つの方法17
なぜ、商社であった我々が「工場建設」という暴挙に踏み切ったのか。
その発端は、数年前の若手社員による「ヴィジョン委員会」だった。商社不要論が叫ばれる中、品質保証の拠点、そして開発のハブとしての自社工場を持つ——。その志は高かった。だが、実際に動き出したプロジェクトから、我々若手は完全に排除された。
主導したのは現場を知らない一部の役員たち。
初めて完成した工場を訪れた際、私は思わず「……既存の倉庫を流用したんですか?」と口走ってしまい、猛烈に怒られたのを覚えている。
それほどまでに、その建物は「工場」として体をなしていなかった。
クリーン度が必要な塗装ブースの隣に外直通の扉があり、重い塗装ラインはなぜか二階に鎮座している。屋根はただの波板で、夏は酷暑、冬は極寒。除電装置が効かないと思えば、床のコーティングが絶縁体となってアースを遮断していた。台風の日には機械室に「滝」が流れる始末だったが、建設担当の役員は「側溝の掃除不足だ」と怒鳴り散らすばかり。私が屋根に登って清掃しても、雨漏りが止まることはなかった。
だが、最も致命的だったのは「空気(エアー)」の問題だ。
塗装工場にとってエアーは命。メインに1.5馬力、サブに1馬力のコンプレッサーを備え、スペック上は十分なはずだった。しかし、現場からは常に「圧が足りない」と悲鳴が上がっていた。
エアー漏れを疑い、夜中に一人、壁の中に隠蔽された配管に耳を澄ませたが、音はしない。
謎が解けたのは、設備の更新時期に配管を徹底調査した時だった。
私は、目の前の光景に絶句した。
メインとサブ、2台のコンプレッサーは、そもそも「繋がって」すらいなかったのだ。
それどころか、最もエアーを消費する塗装ラインに繋がっていたのは、容量の小さい「1馬力」のサブ機の方だった。
1.5馬力どころか、1馬力の空気で戦わされていた現場。別の改善で低圧ガンに変えた事で必要エアーが3分1になった事から多くの不良が無くなっており黒字化に貢献したが、真の原因が明確になった瞬間だった
そんな物理的に不可能な条件で「不良を出すな」と強いてきた組織の罪は重い
この「配管の設計ミス」こそが、この工場の、そしてこの会社の混迷を象徴していたのであった。
