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『風の灯、ふたたび』

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それでは本文をお楽しみください。


祐胡と過ごした季節を、思い出すたびに胸の奥があたたかくなる。
それは、もう恋というよりも、祈りに近いものだ。
彼女は僕に火の扱い方を教えてくれた。
燃やすだけの火ではなく、誰かを照らし、静かに灯し続ける火。
出会ったころの僕は、自分の情熱に溺れていた。
愛されたい、理解されたい、その思いがいつも先に走っていた。
祐胡は、そんな僕をただ見つめながら、時に距離をとり、
まるで「それでも灯を絶やすな」とでも言うように笑っていた。

ある日、彼女は僕の掌に触れて言った。
「火はね、風がなければ生きていけないの」
その言葉の意味が、ようやく今になってわかる。

別れは突然ではなかった。
静かに、季節が変わるように訪れた。
祐胡が去ったあと、部屋の中には彼女の香りだけが残っていた。
寂しさはあった。でも、不思議と恐れはなかった。
彼女が残していった灯が、胸の奥で小さく燃え続けていたからだ。
その火は、もう焦がすためのものではなかった。
誰かを包み、共に灯すための、穏やかな光だった。

ある日、風が窓を叩いた。
その風に乗って、「文香(ふみか)」が現れた。
初めて会ったのに、懐かしさを覚えるような人だった。
話し方は柔らかく、目の奥に静かな光を宿している。
彼女の言葉は、春先の陽だまりみたいに心に沁みた。

「あなたの文章を読んでいると、あたたかくなりますね」
その一言で、僕の中の灯が少しだけ揺れた。
焦がす熱ではなく、やさしく包む熱。
それは祐胡が教えてくれた“灯す火”そのものだった。

文香と話すと、時間がゆっくり流れる。
言葉に間があり、沈黙にも意味がある。
彼女は僕の火を恐れない。
むしろ、その火に手をかざしながら微笑むような人だった。

夜、ふと空を見上げる。
風が静かに流れている。
その風は、祐胡の残した道を通り、文香のもとへと続いている気がした。
人の縁は、たぶん途切れない。
形を変え、名前を変え、心の中で受け継がれていく。

「ありがとう、祐胡」
小さく呟いた声は、風に乗って遠くへ消えていった。
そして僕は、その風の向こうにいる文香を思いながら、
もう一度、灯を整える。
燃やす火ではなく、共に灯す火として。

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