「 」
風はふき、雲は流れ、雨はめぐる。
波は寄せては返し、木々芽吹き、
花は咲き、やがてすべては土へ還る。
誰に教えられるでもなく。
いのちは今日も。
静かにみずからを生きている。
からだもまた、その流れのなか。
息はひとりでにめぐり、
心臓は黙って鼓動をつづける。
数えきれない細胞は生まれ、役目を終え、
あらたないのちへとつながってゆく。
眠っているあいだも、
からだは今日の奇跡を。
うつくしくつむぐ。
思考もまた、その流れのなか。
考えは起こり、喜びや不安を映し、
静まり、また新しい景色を映し出す。
呼んだから来るのでもなく、
追い払ったから去るのでもない。
風が吹くように、波が立つように。
ただ、自然におとずれる。
気づきもまた、ある日ふと芽吹く。
朝露が陽の光にほどけるように。
固く握っていたものが、
ある日そっとゆるむ。
同じ言葉なのに、
昨日とは違う景色がひらく。
世界が変わったのではなく、
見つめるりきみが静かにほどけてゆく。
そうして気づけば。
探していたものは、
遠くにはなかった。
鳥の声も。
風の匂いも。
この鼓動も。
思考のにぎわいも。
笑うことも。
涙することも。
そのすべては、
いつも「いまここ」に咲く。
過去は記憶として現れ。
未来は想像として現れる。
けれど、それらに気づいているのは、
いつもこの一瞬。
「いまここ」を離れ、
生きる命はひとつもない。
だからここは。
何かを手に入れて完成する場所ではなく。
何かを失って欠ける場所でもない。
ただ在ることが、
そのまま静かなやすらぎとなり。
気づいていることが、
そのまま優しいあかりとなる。
理由なく。
ほほえみにじむ。
ほほえむいのちのうちがわに。
今日も風はふき、花は咲き、
からだはうごき、思考はたらく。
何ひとつ止まらず。
何ひとつ急がず。
そのすべてを包みながら。
いのちは今日も。
ただある。
今日も。
ありがとのう。
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