変わらない毎日の中で変わっていくこと - odol『歩む日々に』
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odol『歩む日々に』の歌詞の話をします。
odol『歩む日々に』の歌詞
日常を描く難しさ
歌詞ってなにか特定の強い気持ちやわかりやすいドラマがあるシーンを描くことが多くて、書く側もそのほうが書きやすいんじゃないかとわたしは思います。
その逆の、日常に潜むささやかな感情はなかなか言葉にならず、そういうものは歌詞にもなかなかなりません。
今回の『歩む日々に』は、その日常側にいる歌詞です。
この曲の冒頭はこういう感じ。
ああ年をとって
ちゃんとしてみても着飾っても
鏡ごしに映った私は私のまま
年をとること、ちゃんとすること、着飾ること。そのどれもが変化することです。
それなのに「鏡ごしに映った私は私のまま」と歌われて、Aメロは始まっていきます。
「わたしはわたし」がこの曲の大事なところの一つになります。
年をとることや着飾ることをテーマにする方が歌詞にするのは簡単なはずなんです。
変化ってわかりやすくてキャッチーで、その差異の中に発見を見出すほうが簡単だから。
だけどこの主人公は、あくまでそうではない、日常の方に目を向けます。
もし隣にいても遠く離れても同じに
優しい眼差しであなたはあなたのまま
続く部分では「あなたはあなた」が歌われます。
こちらも構造は同じで、変化する点もあるけれど、変化しない点に目を向ける、という観点があります。
続くBメロでも、不変と変化の対立は続きます。
愛していたいずっと変わらず
ちゃんと胸の奥のほうで
どんな時間が経っても
どこに居て過ごしても
「愛していたいずっと変わらず」は不変の方。
「時間が経っても」「どこに居て過ごしても」は変化の方。
そしてここでも不変の方に重きが置かれます。
だけど、本当にこの曲の中で目を向けられているのは、じつは不変ではありません。
不変に見える中でのわずかな変化です。
ねぇ笑っていたら
ゆっくりと空がかがやく
新しい一日をまた迎えられるんだね
それがこの歌詞の「ゆっくりと空がかがやく」や「新しい一日」という表現です。
空の変化も、日付が変わって新しい日になるのも、目立ったわかりやすい変化ではありません。
だけどその積み重ねで、毎日は少しずつ変わっていきます。
この歌詞が目を向けているのはそういうところ。空の変化も、日付が変わって新しい日になるのも、目立ったわかりやすい変化ではありません。
だけどその積み重ねで、毎日は少しずつ変わっていきます。
この歌詞が目を向けているのはそういうところ。
今日だって晴れたのなら
同じに日灼けをしよう
もしも雨が降ったら
大丈夫なように傘を差そう
この歌詞のスピード感は、天気の変化と同じぐらいの速さです。
「あなた」との関係の変化
寄り添った肩が風に揺られて
近すぎる距離に不意にぶつかった
前を向く強さも肩の痛みも
生きていく中で人は分け合って
そのスピード感の中でも、人間関係は変わっていきます。
「近すぎる距離に不意にぶつかった」っていうのは、肩が物理的に当たることでもあるし、心理的なぶつかりでもあるだろうと思います。
しかし歌詞のその先で登場する「あなた」には、その物理的な距離を感じられる描写が伴いません。
引っ越した町の
空気の匂いが似ていた
電車に揺られても
どこかがあの日のまま
天気みたいなスピード感の中で、「あなた」との距離は少しずつ離れてしまったのではないか、とわたしは考えています。
ふたりは別れを選んだ、ということかもしれないし、天がふたりを引き裂いた、という感じなのかもしれず、それは歌詞の中からはわたしはわかりませんでした。
だけど主人公は新しい町に引越し、引っ越した先でいままでの町との連続性を感じます。変化は少しずつだからです。
もう一回答えを言うから
解き方だけを覚えて
この通りは迷うから
誰かの言葉でそう聞きたくて
「誰かの言葉でそう聞きたくて」ということはつまり、言葉を発してくれる「誰か」(=「あなた」)はもうそばにはいないということだと思ったのです。
あの日から今日まで
変わりなどなくて
明日また起きても私は私のまま
この目を通して前を見たなら
またあなたと同じの風に吹かれて
歌詞も終わりが近づき、「私は私のまま」という冒頭の歌詞が再登場します。
最初はわたしたちはこの歌詞の中には変化がないってことだと思いました。
でも違います。変化が少ない中にも空模様が変わるぐらいのスピードの変化があり、そこに目を向けているといつの間に変わってしまう人間関係がある、というのがこの歌詞で描かれていることです。
それを丁寧に描写する芯の強さがこの曲にはあって、わたしはそれが好きだなぁと思いました。
odol『歩む日々に』でした。
「私は私」というテーマの曲はほかにもたくさんあります。
だけどこんなふうに日常の描写を交えながら、自分に目を向ける曲はめずらしいように思って、今回文章にしました!
