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photochemie
深い森の湿り気をそのまま音にしたような
きょうの一曲:Comus - The Herald
こんばんは。夜11時、FM八丈島。始めていきましょう。
雨上がりの神社の参道を歩いてきました。長い石段が続いています。足元を見ると、石の角がありません。びっしりと生えた苔が、階段全体を覆っているからです。
この島は湿度が高い。だからじっとしているものは皆、こうして緑色の衣を纏うことになります。指で触れると、しっとりと濡れていて、ビロードのように柔らかい。硬くて冷たいはずの石が、まるで温かい生き物のように感じられます。
苔は、この島の消音装置なのかもしれません。僕の足音も、雨の落ちる音も、すべてそのふかふかした緑の毛布が吸い込んでしまう。人工的な直線や鋭い角を、時間をかけてゆっくりと曖昧にしていく。そんなに尖らなくていいよと、優しく諭されているような気がします。
圧倒的な静けさと、長い時間。この緑のビロードの上では、時計の針など何の意味も持ちません。
今夜は、そんな深い森の湿り気をそのまま音にしたような曲を。コーマス。美しいフルートの音色に導かれて、どこか知らない時代へ迷い込んでしまいそうです。繊細で、しかしどこかゾッとするような凄みを持った、アシッド・フォークの傑作です。
さて、そろそろお別れの時間です。僕たちの心の角も、少し丸くなっているといいのですが。
それではまた明日、この場所でお会いしましょう。おやすみなさい。
(2013.6.18 OA)
