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小説|影を食べる子どもたち


ルイは、夜になるのが少しこわかった。

なぜなら、夜になると 「あの子」 がやってくるから。

カーテンのすきまから、細い月明かりがもれるころ。

ルイの部屋のすみで、サクッ、サクッ という音がする。

まるで、クッキーをかじるような音。

「……だれ?」

布団の中で、ルイはそっとささやいた。

「ぼく?」

小さな声が、暗闇の中からかえってくる。

「ぼくはね、影を食べる子どもだよ」

ルイが目をこらすと、そこに 小さな子ども がいた。

黒い髪、黒い服、黒い目。

そして、黒い ルイの影 を、まるでお菓子のように食べていた。

「ちょっと! ぼくの影を食べないで!」

ルイがあわてて叫ぶと、影を食べる子どもは にっこり 笑った。

「だいじょうぶ。影はすぐにまた生えてくるよ」

「生えてくる……?」

「うん。影ってね、少しぐらい食べても、時間がたてばもとにもどるんだ」

「そ、そうなの?」

「そうなの」

影を食べる子どもは、サクッ、サクッ と影をかじりながら、にこにことほほえんだ。

ルイは、どこか こわいような、でもこわくないような ふしぎな気持ちになった。


それから、毎晩のように影を食べる子どもはやってきた。

ルイは、はじめはこわかったけれど、だんだん 友だちのように 思えてきた。

「影って、どんな味がするの?」

ある夜、ルイは聞いてみた。

影を食べる子どもは、またにっこりして、
「夜の味がするよ」 といった。

「夜の味?」

「うん。ちょっとさびしくて、すこし甘くて、ほんのちょっとだけ苦い」

ルイは、なんだか 不思議な気持ち になった。


けれど、ある日。

学校の友だちが、ルイの足もとをじっと見て、ふしぎそうにいった。

「ねえ、ルイ。きみの影、なんかへんじゃない?」

「へん?」

「うん、なんだか……すごく薄い」

ルイは、はじめてじぶんの影を見た。

いつのまにか、とても小さく、うすくなっていた。

足音も、いつもより ずっと小さい 気がする。

鏡に映るじぶんの姿も、どこかぼんやり していた。

「ねえ、影を食べる子ども。これって、おかしくない?」

ルイが聞くと、影を食べる子どもは、すこし さびしそうな顔 をした。

「……まだ、大丈夫だよ」

「ほんとう?」

「うん。影はね、なくなっても、平気だよ」

「でも、なくなったら、どうなるの?」

影を食べる子どもは、ぽつりと言った。

「ぼくみたいになる」

ルイは、ぞっとした。

「君みたいに……って?」

「ぼくもね、むかしは、君みたいに影があったんだ」

「でも、なくなったら、もう誰もぼくのことを覚えていなかった」


次の日。

ルイの影は もうほとんど残っていなかった。

学校に行っても、だれもルイの名前を呼ばない。

友だちがすぐそばにいても、話しかけてもらえない。

「ねえ!」 と声をかけても、みんな気づかない。

先生さえも、ルイのことを 見ていなかった。

家に帰ると、お母さんが ぽつりとつぶやいた。

「ルイ? あれ……ルイって、だれだっけ?」

その瞬間、ルイは 自分が消えていく のを感じた。


夜。

ルイは、影を食べる子どもに向かって 大きな声 で叫んだ。

「ぼくの影を返して!!」

でも、影を食べる子どもは ただ静かに 首をふった。

「影はね、いちど食べたら、もうもどらないんだ」

「そんなのいやだ!!」

「こわくないよ」

影を食べる子どもは、優しい声でいった。

「君が消えても、ぼくが覚えているから」




ルイの影は、とうとう 完全になくなった。

そして、世界からルイのことを覚えている人は、ひとりもいなくなった。





それから、しばらくして。

どこかの町。

どこかの家の 暗い部屋 で、小さな子どもが目を覚ます。

夜のしずけさの中、かすかな サクッ、サクッ という音がする。

カーテンのすきまから、月明かりがこぼれるころ。

その部屋のすみには、影を食べる子ども がいた。

――ルイだった。






















ホラー童話的なものを目指しました。自分で作って書いといてアレなんですが、後味悪すぎる。


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