日記③素晴らしきかな井の頭公園
井の頭公園には穏やかな時間が流れている。
吉祥寺駅から徒歩5分。吉祥寺には家電量販店、ホームセンター、映画館など全てが揃っているから外に出る必要がない、などと言われたりもする繁栄しきったあの街から、ものの5分の近さにこれほどまでに自然豊かな公園が存在するのが驚きだ。
のどかではあるが、公園といえども流石は人気スポットというべきか、往来は多い。静けさを求める人には向かないかもしれない。老若男女、園児に学生カップルに家族連れ、人間観察には事欠かないだろう。中学生の頃の趣味は人間観察などどのたまう若気の至り真っ只中の私を連れて来たいぐらいだ。
学生カップルを見かける、と書いたが今時デートで公園に行くというのもなかなか硬派なのかもしれない。そう考えると素直に微笑ましい目も向けられそうだ。
最近この辺りに越してきたばかりの私では以前と比較することはできないが、この公園にもインバウンドの波は押し寄せているようで、外国人観光客も目立つ。ただ、秋葉原や新宿で見かける外国人とは違って、あまり忌避感を覚えるようなこともなかった。井の頭公園の器が広いのか、それとも私の心を鷹揚にさせてくれているのか。外国人達は見る限りマナー違反などはしておらず、お行儀良く楽しんでくれている。どうやら私は越してきたばかりの新参者の癖に井の頭公園のことを半ば自慢に思っており、日本の中でも井の頭公園に目をつけるなんて、見る目あるね!などと謎の上から目線をかましているようだった。
公園の楽しみ方にも色々あるが、おそらくどんなニーズにも応えられるだろう。そのくらい井の頭公園は器が広い。私の主な楽しみは散策と読書なのだが、まずは散策からいこう。
まず第一に、自転車置き場があるのがありがたい。これがなければ足が遠のいていただろう。駅から近いが、私の家は駅から近くないのだ。
園内を歩く。今の時期は落ち葉が絨毯のようになっている。さくさくという落ち葉を踏みしめる音が心地いい。普段の私は落ち葉の音に趣を感じるような、風流な心を持ち合わせてはいないから、やはり井の頭公園という場所が私の心を豊かにしてくれているのだろう。

地面にばかり目を向けてもいられない。なんといっても今の時期は紅葉だ。イチョウやもみじなど多様な木々が色づいている。意識して見てみると素人には判別はできないものの、思いの外木々にも種類があるのだなと気付かされる。葉もそうだし、幹の太さや、実が成っているものなど。それに気づいた自分がなんだか嬉しかったりする。

井の頭公園を散策していると、なんだか神社の境内を歩いているような気分になる。清々しい気持ちだ。実際、園内にはお寺もあるので、パワースポットと言っても差し支えないのかもしれない。空気が清らかに感じるのは、俗にいうマイナスイオンを感じる的なことで、それはおそらく井の頭池や玉川上水なんかのせいであると思われるが、事実として自分が快さをおぼえているのだから大元が何であるかは些細なことだろう。
井の頭公園には食事処も割とある。お団子やソフトクリームなどの軽食はもちろん、ちゃんと食べられるお食事屋も併設されている。カフェもあるが、テイクアウトのみの小さい珈琲店でコーヒーを買ってベンチで池を眺めながら読書をするというのがなんとも優雅である。この時の私はしばしば自分に酔っている。側から見た自分を想像してはうっとりしている。理想の一つの到達点だ。お金がかからないで済むのも嬉しい。お手軽成功体験だ。
まだ行ったことはないがガレットを食べられるお店もある。いつか必ず行きたい。
井の頭公園には小鳥の森というエリアがあり、中には一般の人は立ち入れない区画で野鳥を保護している。保護エリアの一部には覗き穴があって、野鳥を観察できるようになっている。残念ながら私が見た時には野鳥は観察できなかったのだが、この公園では至る所で野鳥を感じることができる。頻繁に姿を見られるのは烏や鳩だが、インコなのだろうか緑の小鳥も見かけたし、そこかしこで聞き覚えのない鳥の囀りが聞こえてくる。
井の頭公園を散策する際は、時折上を見上げてみることが肝要だ。鮮やかに色づいた木々は陽光に照らされ、木漏れ日がまた暖かい。小鳥が木の実を啄む姿も見られるかもしれない。

井の頭公園で一番のメインスポットと言えば、なんといっても広大な池だろう。陽の光が紅葉の赤や黄色を照らし、その彩りが反射した川の美しさ。そしてそこに棲む水鳥たちも池を構成する重要な要素だ。ここではまず間違いなく水鳥を観察できる。

池に目をやると、名前の分からない黒くて首の細い鳥(どうやらオオバンという鳥らしい)と、鴨が泳いでいる。鴨はいい。鴨は可愛い。鴨はしばしば勇気を出せばさわれそうな距離まで接近することがある。もっとも、触らないことがお互いのためにいいことだが。鴨は水中の虫を求めてか盛んに首を川面に突っ込んでみたり、または水上に突き出た水草の虫を狙ってか、垂直に跳びはねたりしている。意外にも活発に動き、みていて飽きない。もうかれこれ20分近くは眺めている。黒くて頭に白い模様を持つ鳥は、鴨と違って仲間がいないのか一人で旅をしている。しばらく見ていたら鴨と小競り合いを起こしていた。この黒い鳥は甲高い声で鳴くようだ。そしてまたしばらくすると今度は遠くから大型の鳥も飛んできた。あれはおそらく鷺だろう。鷺から視線を戻すと至近距離まで鴨がやってきて、4羽から見つめられていた。視線を上に映すと烏の姿も見受けられる。普段ゴミ捨て場で見かけることの多い烏も、自然を構成する一つなのだと実感する。常に遠くで、近くで野鳥の囀りが聴こえる。鳴き声からは何の鳥かわからない。いつか顔と声が一致する時は来るのだろうか。

鴨らはにわかに川と縁の境界を超え、私の座るベンチのすぐ側までやって来ていた。観察しているとどうやら小さな木の実を啄んでいるようだった。

読書スポットとしても最適な井の頭公園だが、唯一の難点は鴨があまりにも近寄りすぎることだろう。
井の頭公園には犬を散歩させている人々も多く見受けられる。そして何故かは知らないがその多くは大型犬だ。心なしかこの辺りの犬は落ち着いている気がする。流石にそれは見方が偏りすぎか。
などと言っていたらポメラニアンもやってきた。うはぁ、思ったよりお尻が大きい。可愛い可愛い。鳥だけでなく犬までも、こんな可愛い動物たちを無料で拝めてしまっていいのだろうか。ここはさながら猫カフェならぬ自然カフェだ。
読書スポットとしても最適な井の頭公園だが、唯二の難点はわんちゃんが可愛すぎて読書に集中できないことだろう。
ちなみに、私はまだ行ったことがないのだが、井の頭公園の園内には実は動物園がある。素晴らしいに違いないのでぜひ行って見たい。(正確には井の頭自然文化園で、水生物館、彫刻園、スポーツラウンド等もあるようだ)
そんな訳で、井の頭公園は素晴らしいところなので、皆さんもお近くにお越しの際は是非立ち寄ってみてはいかがでしょうか。最後に、私のアイコンにもなっているお気に入りの写真を載せて終わります。それでは、この辺で。

