【不妊治療記録④】胚移植周期へ~自然周期を選んだ理由と経過~
採卵と凍結結果の確認を無事に終え、いよいよ凍結胚移植に向けての準備が始まりました。
今回私たちは、 「レトロゾールを併用した自然周期」 で移植を進めることにしました。
今回の記事では、この方針を選んだ理由と移植周期の経過、そして医師としての視点で整理した「自然周期 vs ホルモン補充周期」のエビデンスについてまとめておきたいと思います。
これから移植の方針を主治医と相談される方にとって、ひとつの判断材料になれば嬉しいです。
なぜ「自然周期」を選んだのか
今回の方針を決めた一番の理由は、PCOSの妻でもレトロゾールを使えば順調に卵胞が育ち、自然周期のメリットを十分に活かせると判断できたからです。
移植決定までの受診
月経4日目から8日目までレトロゾールを1日1錠内服し、月経11日目に受診。
主席卵胞が 17mm に育っているのを確認してホッとしました。
二人目不妊の患者様はみな感じていると思いますが、子育て中の不規則な通院や院内での肩身の狭さから、受診回数は1回でも少ない方がいい。
このサイズまで育っていれば排卵時期の予測がつきやすく、幸いにも今回は移植前の受診は1回で済みそうです。
翌日排卵として、移植計画を立てました。
レトロゾールで周期を「整える」
今回は完全な自然周期ではなく、レトロゾールを使って排卵をサポートする形をとっています。
自然周期の一番の懸念点は「排卵日が特定できず計画が立てれない」事ですが、排卵誘発剤を使うことでその見通しが立ちやすくなり、計画の実行性が上がります。
私たちのようにPCOSで月経周期がバラバラな場合は良い適応となります。
自然周期 vs ホルモン補充周期、どう選ぶ?
凍結胚移植の際、多くの患者様が迷われるのが 「自然周期とホルモン補充周期、どっちがいいの?」 という点ではないでしょうか。
自然周期の場合は「排卵がうまく特定できずにキャンセルになるリスク(約16%)」がホルモン補充周期(約11%)より高くなる一方、決定的なメリットがあります。
私たちも悩みましたが、今回は以下の3つの視点(妊娠率、母体リスク、負担)で整理して決めました。
1. 妊娠率・生児獲得率に大きな差はない
外来でもよく聞かれますが、これが現時点での医学的な結論です。
例えば、2026年のBMJに掲載された多施設ランダム化比較試験(文献①)では、排卵のある女性において、 自然排卵周期(41.6%)とホルモン補充周期(40.6%)の間で、健児出生率に有意差はありませんでした。
一部の研究(2025年のCOMPETE試験・文献②)では自然周期の方が良い結果が出たりもしていますが、基本的には「どちらを選んでも妊娠率は大きく変わらない」と考えてよさそうです。
少なくとも自然周期がホルモン補充周期に劣ることはない、と認識しています。
2. 自然周期は「妊娠高血圧腎症」のリスクが低い
ここが今回、私たちが自然周期を選んだ大きな理由の一つです。
先ほどのBMJの試験でも、 妊娠高血圧腎症の発症率は、自然周期(2.9%)の方がホルモン補充周期(4.6%)よりも低い という結果でした。
2025年の前向きランダム化比較試験(文献⑤)でも、レトロゾール刺激周期はHRT周期と少なくとも同等で、サブグループでは良好な傾向が示されています。
さらに、2022年のシステマティックレビューとメタ解析(文献⑦)では、ホルモン補充周期は自然周期に比べて、 癒着胎盤のリスク上昇(OR 6.29) と、 産後出血リスク上昇(OR 2.53) が報告されています。分娩での大量出血は本当に蛇口をひねったように出血するので、何度も怖い経験をしてきました。
いずれも母体死亡の大きな原因となるため、避けれるものなら避けたい合併症です。
3. スケジュール調整 vs 薬剤の負担
ホルモン補充周期の最大のメリットは、なんといっても 「スケジュール調整がしやすい」 ことです。仕事や育児で忙しい方にとっては、移植日をコントロールできるのは大きな魅力です。
一方で、ホルモン補充周期は貼り薬や腟座薬などを多量に長く続ける必要があり、それが負担になることもあります。
妻はテープかぶれがひどいため、ホルモン補充周期の時は長らく苦しんでいました。
自然周期は薬が少なくて済みますが、排卵日を特定するために通院回数が増える可能性があります。
今回も頻繁な受診を覚悟していましたが、レトロゾールが奏功したおかげで、最小限の受診で済みました。
まとめ
今回の胚移植は、レトロゾール併用の自然周期で行うことにしました。
月経11日目で卵胞がしっかり育ってくれたおかげで、今のところ順調にきています。
次は、いよいよ移植当日の処置と、判定日までの経過についても記録していく予定です。
良い結果だけでなく、迷ったことや不安に思ったことも含めて、ありのままを共有していければと思います。
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参考文献
- ① Wei D, et al. BMJ. 2026;392:e087045.
- ② Liu X, et al. PLoS Med. 2025;22(6):e1004630.
- ③ Baird F, et al. Hum Fertil (Camb). 2025;28(1):2448131.
- ④ Yuan Y, et al. Obstet Gynecol. 2023;142(5):1087-1095.
- ⑤ Jiang L, et al. J Assist Reprod Genet. 2025;42(6):1907-1915.
- ⑥ Tatsumi T, et al. Hum Reprod. 2017;32(6):1244-1248.
- ⑦ Busnelli A, et al. Hum Reprod. 2022;37(7):1619-1641.
