#13「Good」と「Bad」、どちらのイメージも共有しよう【建築パース制作がスムーズに進む、伝え方フレーズ集付き】
はじめに
建築パースを依頼する際、「参考イメージを共有してください」と言われたことがある方は多いと思います。
PinterestやInstagramから雰囲気の近い写真を探して送る──このステップ自体はもう一般的になってきました。
けれど、実際の制作現場ではこうした“イメージ共有”が原因でトラブルになることも少なくありません。
たとえば、
「雰囲気は合ってるけど、明るすぎる」
「構図はいいけど、質感が違う」
「この感じとは少し違うけど、うまく説明できない」
これらはすべて、Good(=好きな、理想的な)イメージしか共有されていないことで起きるズレです。
本記事では、GRUNDの制作現場で実際に感じている「Good」と「Bad」両方のイメージ共有がなぜ必要なのか、そしてどう共有すれば制作がスムーズになるのかを、実例を交えながら整理していきます。
1. イメージ共有は、制作を左右する最初のステップ
建築CGに限らず、クリエイティブの成功は方向性の共有で8割が決まります。
どんなに技術力が高いクリエイターでも、クライアントの頭の中が見えるわけではありません。
悲しいこと(?)ですが、クリエイターは魔法使いではありません。
たとえば「上品な雰囲気で」と言われたとき、それが「素材の質感を抑えた上品さ」なのか「照明を落とした静かな上品さ」なのかで、仕上がりはまったく変わります。
この“解釈の幅”を最初に埋めるのが、参考イメージです。

言葉で説明しづらい部分も、画像を見れば一瞬で伝わる。
だからこそ、どんなイメージを共有するかが、全体の方向を決めるポイントになるのです。
2. Goodイメージだけでは伝わらない理由
多くの人は「好きな雰囲気」だけをまとめて共有します。
もちろんそれでも一定の方向は見えますが、制作側としてはまだ“安全圏が広すぎる”状態です。
「Good」は“ここを目指してほしい”というサイン。
でもそれだけだと、どこまでがNGなのかがわからない。
建築CGの制作では、常に“情報の引き算”が発生します。
光の強さ、マテリアルの粗さ、色味、被写界深度、人物の距離感…。
Goodイメージだけを見ても、そのどこを重要視しているのかが判断しきれないことがあります。
結果的に、
クリエイターは「この方向かな?」と推測しながらつくる
クライアントは「ここまでは違うと思ってた」と感じる
というズレが生まれます。
つまり、Goodだけでは“方向”は見えても“境界”は見えないのです。

3. “Badイメージ”を共有する3つのメリット
「嫌いな例」「違うと思う例」を共有するのは、ちょっと勇気が必要かもしれません。
「否定的に取られたら嫌だな」「注文が多いと思われるかも、、」と感じる人も多いかもしれません。
でも実際には、この“Badイメージ”こそ制作側にとって最もありがたい情報です。

① 方向の“限界線”が明確になる
「こういう明るさは違う」「こういう人物の入り方はNG」など、何が“やりすぎ”なのかを知れることで、調整の振れ幅を明確にできます。
これは、制作時間=納期の短縮にも直結します。
② “好みの根拠”を理解できる
Badを共有すると、Goodとの対比で“何を大切にしているか”が浮き上がります。
たとえば、同じナチュラルでも「木目のトーンはGoodだけど、植物が主張するのはBad」といった、微細な感覚の線引きが見えてくるのです。
また、1枚だけでなく、いくつかのBadイメージを共有してもらうと、「どんな雰囲気が苦手なのか」「どこに違和感を覚えるのか」がよりはっきりして、方向性をさらに掴みやすくなります。
③ 「違うけど、近い」提案ができる
Badを知っていると、制作側が「これは方向が違うけど、好みに近いはず」と提案できるようになります。
クライアントの“言語化されていない美意識”を推測する精度が上がるのです。
また、1枚だけでなく、いくつかのBadイメージを共有してもらうと、「どんな雰囲気が苦手なのか」「どこに違和感を覚えるのか」がよりはっきりして、方向性をさらに掴みやすくなります。

あなたが、誰かに料理を振る舞うことになりました。
その場合、好きな食べ物だけでなく、嫌いな食材も教えてもらった方が、その人に合うメニューを考えやすいですよね。
建築CGも同じで、「好きなイメージ(Good)」だけでなく「苦手なイメージ(Bad)」を共有してもらうことで、制作者は“その人が求める料理”を正確に見つけることができます。

4. 実際にどう共有すればいい?
▪️Good/Badをそれぞれ3〜5枚ずつ用意
数は多すぎず、少なすぎず。
それぞれ3〜5枚程度が理想です。
「この雰囲気は好き」「この処理は違う」と並べて見える形にすると、方向性の整理が一気に進みます。
▪️「どこが好き/どこが苦手」まで書く
ただ貼るだけではなく、“理由”を添えるのが最重要ポイントです。
たとえば:
Good:「光は柔らかくて自然。床材の色味も理想に近い」
Bad:「光が強すぎて落ち着かない」「素材の艶が強くて人工的に見える」
文章にすると大げさに感じるかもしれませんが、制作側から見ると、この短い一文で判断基準が10倍明確になります。
▪️共有ツールは自由でOK
Notion、Miro、Google Drive など、どんな“最新の”ツールでも構いません。
大切なのは、チーム全員がアクセスできる1つのリンクに整理されていて、いつでも更新できる状態にあることです。
Badイメージを共有するときに使える言葉の例
苦手なイメージを伝えるときは、「違う」「嫌い」などの極端な言葉ではなく、少しだけ方向をずらすような言葉で表現するのがおすすめです。
次のような言い方を参考にしてみてください。

① 柔らかく伝える(印象ベース)
「もう少し落ち着いた印象にしたいです」
「少し華やかすぎるかもしれません」
「このトーンだとクールすぎる感じがあります」
「もう少し自然な雰囲気が理想です」
「照明の強さが少し目立ちすぎる気がします」
→ “〜すぎる”を使うと、否定ではなく調整リクエストとして伝わります。
② 方向を限定して伝える(距離感ベース)
「この感じも素敵ですが、今回はもう少し静かな方向を考えています」
「この質感の方向ではなく、マット寄りを想定しています」
「こちらの構図は好みですが、人物が入ると雰囲気が変わりそうです」
「全体のトーンは近いけど、背景の主張が強い印象です」
→ “違い”を言うより、“どちらの方向へ行きたいか”を添えるのがポイント。
③ 要素ごとに伝える(具体ベース)
「彩度が少し高いので、もう少し落ち着いた色味が理想です」
「反射が強く、素材の質感が伝わりづらいです」
「人物の入り方が目立ってしまって、建築が引いて見えます」
「影のコントラストが強く、柔らかさが失われています」
「家具や小物の密度が高く、空間が少し重たく見えます」
→ “何がどう見える”という事実ベースの伝え方にすると、制作者がすぐ対応できます。
④ ニュアンスを大切に伝える(印象+感覚ベース)
「少し“主張が先に来る”印象があります」
「この明るさだと、空間の深さより演出感が立って見えます」
「情報量が多く、視線が落ち着く場所がない印象です」
「色と光が競合していて、静けさが伝わりにくいです」
→感情的ではなく、「どう感じたか」を客観的に言葉にするタイプの伝え方です。
💡あわせて読みたい
「Good/Badイメージ」以外の伝え方も知りたい方は、こちらで、“画像”ではなく“言葉”で伝えるコツを、詳しく具体例つきで紹介しています。
5. 最初の共有で、完成度とスピードが変わります
Goodイメージだけで進めると、制作側は「どこまで踏み込んでいいのか」が判断しづらくなります。
結果、初稿は安全な範囲でまとめられ、完成までに修正が増えがちです。
一方で、「この感じは違う」「ここまではやりすぎ」というBadイメージがあると、最初から“外さない方向”で提案ができます。
つまり、初稿の完成度が上がります。
その結果、リテイクやスケジュール調整もスムーズになり、結果として全体のスピードも上がるのです。

GoodとBadの両方を共有してもらうことは、制作者を助けるだけでなく、クライアント自身の負担を減らす一番の近道でもあります。
修正のやり取りが減り、スケジュールも安定し、最終的には「納期が守られた」「思っていたより早く終わった」と感じられるケースがほとんどです。
最初にイメージ共有を少し丁寧にするだけで、プロジェクト全体の効率と仕上がりの質が、驚くほど変わります。
6. まとめ
“良いイメージ”は方向を示し、 “悪いイメージ”は境界を示します。
どちらか一方ではなく、両方あって初めて「どこまでが正解で、どこからが違うのか」が見えてくる。
建築パース制作は、クライアントとクリエイターが同じ“世界の見方”を探すプロジェクトです。
そのスタート地点にあるのがイメージ共有。
GoodもBadも、どちらも作品の輪郭をつくる大切な要素です。
「これは違う」と伝えることは、否定ではありません。
むしろ、あなたの“好き”をより鮮明にする作業です。
次に参考画像をまとめるときは、ぜひ“Goodフォルダ”の隣に“Badフォルダ”もつくってみてください。
これまでの「いまいち伝わらない」が、「そう、これ!」に変わる瞬間が、少しでも増えますように。

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