#24「絶妙なバランスが生み出す作品の空気」─haya.archvizさんの制作プロセス
CGビジュアライザー|haya.archviz
GRUNDでは、印象的な世界観を生み出すCGビジュアライザーたちが活躍しています。
彼らの作品の“表”には見えない、制作の裏側や大切にしている価値観には、創作のヒントや熱い想いが詰まっています。
そこで今回は、GRUNDのCGビジュアライザーに、作品づくりの“裏側”や、大切にしている想いや考え方についてインタビューしました。
第3回目はhaya.archvizさんです。
作品に込められた想い、制作の裏側、そして日々のインスピレーションの源流に至るまで——創作を支える“原点”に光を当てながら、お話をじっくりと伺いました。
“ちょっとだけ本物”が作り出す空気感
──ではまず、建築CG(ビジュアライゼーション)の仕事を始めたきっかけを教えてください。
haya.archviz 学生時代にCADで3Dを触った時、ただ遊んでいるだけのつもりが、先生に「それを作る仕事があるよ」と言われ、そこから流されるように気づけばこの業界にいました。
──そうだったんですね、学生時代の何気ない体験が、結果的に今の仕事につながっているんですね。
そうして続けてきた今、作品づくりの中で最も大切にしていることは何ですか?
haya.archviz それは、空気感ですね。
写真でも3Dでもない、ちょっとだけ本物の雰囲気を目指してます。
光の入り方や影のにじみ、素材の反射、輪郭の曖昧さ。
そういった細かな要素が重なったときに生まれる、言葉にしづらい雰囲気こそが、空間の魅力だと思っています。
「きれい」や「リアル」で終わらせるのではなく、画面越しでも、その場の温度や静けさ、時間の流れまで感じられるような一枚をつくりたいと考えています。
そのためには、あえて作り込みすぎない余白も大切にしています。
──図面通りに作るだけでなく、イメージに沿う足し算、引き算ができるところがCGの魅力ということですね。
具体的に、その「自分らしさ」が出ている作品を教えていただけますか。

haya.archviz 広告用のビジュアルでは、まず全体をどう見せるかというマクロな視点が大事になります。
ただその一方で、実際につくっていると、誰も気づかないような細かい部分まで、ついつい整えたくなってしまうんです。
そういうところに、自分らしさが出ているのかなと思います。
──一目では気づかない細かい部分の描写こそ、全体の空気感や仕上がり、「ここに引き込まれるかどうか」を左右する重要な点だと思います。
その細部にhaya.archvizさんらしさが宿っていますね。
では、いまはどんなジャンル・案件を中心に制作していますか?
また、最近制作の過程で特に意識しているポイント(光、構図、空気感など)があれば教えてください。
haya.archviz 主にインナー(内観)パースの制作をしています。
特に意識しているポイントとして、光と空気の自然さを一番大事にしています。3Dは便利な嘘がつけますが、その嘘がバレるのも早いのでなるべく慎重に扱うようにしています。
最近は物の重さがきちんと感じられるように作るのを心がけています。


──なるほど。先ほどおっしゃっていた“ちょっとだけ本物の雰囲気”に通じるものがありますが、CGだからこそできる効果的な「嘘」が「ニセモノ」にならないバランスや適切な扱い方はとても重要なポイントですね。
制作を進めるうえで「ここだけは譲れない」と思うこだわりはありますか?
haya.archviz 制作時間ですね。
どれだけ効率化しても、丁寧に積み重ねた時間は、最終的に必ずパースに表れると思っています。
光の当たり方や影の濃さ、素材の見え方など、細かい部分ほど、その差は正直に反映されます。
だからこそ、ここは手を抜けないと感じています。
──いつもhaya.archvizさんの作品を拝見しているので、とても納得します。
一つひとつの制作に誠実に、きちんと向き合って時間を積み重ねている姿勢が伝わってきます。
そのうえで、仕事として求められるスピードとクオリティを両立するために、制作の中で意識している工夫があれば教えてください。
haya.archviz 最初の段階で、できるだけ多くリファレンスを集めて、
完成形のイメージを自分の中で明確にしてから制作に入るようにしています。
あらかじめ「どこを目指すか」「どこに着地するか」が見えていれば、
途中で迷うことが減りますし、無駄な修正も少なくなる。
結果として、スピードとクオリティの両方を保てると思っています。
──丁寧に積む制作時間が最も効果的に使えるよう、前もっての準備はなによりも大切ですね。
では、実際に制作を進めていくにあたってクライアントとのコミュニケーションにおいて大事にしているポイントはありますか?

haya.archviz 言葉にされない部分ほど、実は一番大切だったりすると思っています。
なので、クライアントが本当に何を見せたいのか、その意図をできるだけ読み取ることを意識しています。
資料や言葉だけで判断せず、背景やプロジェクトの文脈、「なぜこの表現を求めているのか」を考えながら進める。
そうすることで、認識のズレを減らせると感じています。
──たしかに、ニュアンスの共有は難しい部分ですよね。
言葉にならない意図を読み取ることが、結果的に細部の表現や取捨選択の判断につながっているのが伝わってきます。

建築パースを制作するための、インスピレーションの源
──ここからは、haya.archvizさんご自身についても少し伺いたいです。
影響を受けた建築家・アーティスト・映画・作品などはありますか?
また、普段インスピレーションを得ている場所や、習慣のようなものはあったら教えてください。
haya.archviz 映像作品(映画・PV)やイラストレーション、SNS、AIなど、動きと静止画のどちらからも刺激をもらっています。
誰かひとりのスタイルというより、日々いろんな作品をつまみ食いして影響を受けています。
その中でも、映画を見ているときが一番何か制作したくなる気持ちになることが多いです。
最近は、SNSを目的を決めずにスワイプして、ふと流れてきたものに引っかかった瞬間をなるべく大事にしています。

──自分の感覚、心が惹かれた瞬間を大事にしているんですね。
目的を決めずに、感覚のまま流れてくるものに触れる、その距離感でSNSを使っているというのも新鮮でした。
意識して探すより、ふと引っかかる瞬間のほうが、制作の種になることも多そうですね。
haya.archviz そうなんです。
何か特定の“情報収集”というよりも、写真や建築、映画、音楽、アニメ、イラスト、AIアートなど、なるべく幅広いジャンルから良い匂いがする部分を少しずつ吸収しています。
根気強く、丁寧にー
──そうしたインプットを制作に落とし込んでいく中で、思うように手が進まない瞬間もあると思います。
制作中に行き詰まったと感じたとき、どのように気持ちを切り替えていますか?
haya.archviz とりあえずコツコツと進めます。
CG制作に関しては可逆性があるので、なるべく全体像を考え直して、
それでも完成形が見えないときは思い切って一度壊して仕切り直します。
──コツコツ進めつつも、必要な時は思い切って組み立て直すこともあるんですね。
そうした判断が必要だった制作の中で、特に印象に残っている案件や出来事があれば教えてください。

haya.archviz この「湖畔」の作品は、色合わせがいちばん神経を使った制作でした。
照明の色温度やレタッチのかけ方ひとつで、空間全体の印象が簡単に変わってしまうんです。
こちらとしては成立しているつもりでも、クライアントが思い描いている色の感覚と、微妙にズレてしまうことがあって、その境界を探り続ける作業がとても難しかったです。
色が主張しすぎてもだめだし、抑えすぎても空気感が失われる。
そのちょうど間を探しながら、何度も見直しを重ねました。
──haya.archvizさんは、クライアントと丁寧にやり取りを重ねながら、言葉になりきらないニュアンスまで汲み取って制作されている印象があります。
一方で、微妙な感覚の共有が難しい場面があるのも、正直なところですよね。
それでも最後まで向き合い、納得のいく形を探り続ける姿勢が、作品の完成度につながっているように感じます。
建築CGがAIとの共存するということー
—では、ここからは将来の展望や未来のイメージをお聞きしたいと思います。
これから「挑戦してみたいこと」や「試してみていること」はありますか?
haya.archviz 最近は、AIとの共同制作にも少しずつ取り組んでいます。
完全に任せるというより、発想のきっかけや検証のスピードを上げるための相棒として使う感覚に近いです。
また、これまでは静止画の制作が中心でしたが、最近は時間の流れや空気の変化まで含めて表現できる映像表現にも、強く惹かれるようになってきました。
一枚では伝えきれないニュアンスを、どう動きで補えるかを考えるのが面白いと感じています。
加えて、一般ユーザー向けにSTLデータを制作することにも興味があります。
CGとして終わらせるのではなく、実際に触れられる形に落とし込むことで、
表現の幅がさらに広がるのではないかと考えています。
──AIを排除するのではなく、制作の一部としてどう付き合うか、というスタンスが伝わってきます。
表現の幅を広げるための選択肢として、これからを見据える視点としてとても現実的ですね。
また、STLデータのように、CGを「見るもの」から「触れられるもの」へ展開していく発想も、とても面白いと感じました。
表現が画面の外へ広がっていく可能性は、GRUNDとしてもぜひ一緒に考えてみたいテーマです。
haya.archviz これからは、AIが膨大な量のCGを生み出す時代になっていくと思います。
その中で、どう作るか以上に、何を選び、どう組み合わせるかが、より重要になってくると感じています。
すべてをAIに任せるのではなく、自分の感覚や判断を軸にしながら、
必要なところで力を借りる。
そうやって協力し合うことで、結果的に質の高いパースが生まれるのではないかと思っています。

──AIとどう向き合うかは、技術そのものよりも、使う側の判断や環境が大きいのだと感じました。
では、制作環境や使用しているソフトの中で、「これが自分の相棒だ」と思えるものはありますか。
また、現状でもAIを取り入れている場面があれば教えてください。
haya.archviz レンダラーは、Corona Rendererを使っています。
光の回り方や影の出方が、自分の手の感覚にいちばん近く、空気感をつくるうえで直感的に扱えるところが気に入っています。
また、考えが少し煮詰まったときや、制作の方向性を整理したいときには、
ChatGPTに相談することも多いです。
答えをそのまま使うというより、頭の中にある考えを言語化して、自分で判断するための補助として使っています。
──制作の中で、感覚的な部分と論理的な整理をきちんと使い分けているのが伝わってきます。
これからAIがどんどん発達していくことが予想される中で、手作業への取り入れ方や共存の仕方を考えながら制作されている点は、表現を続けていくうえで大きな強みになりそうですね。
では最後に教えてください。
これまでのお話を踏まえて、
haya.archvizさんにとっての「理想の建築CG」を、あえて一言で表すとしたら何でしょうか。
haya.archviz それは、映画の一瞬を切り取ったような一枚です。
物語の途中で、たまたま立ち止まって覗き込んだような。
説明はされていないけれど、その前後の時間や空気が、自然と想像できる。
そんな余白のある建築ビジュアルをつくりたいと思っています。
──本日は、haya.archvizさんのお話を伺いながら、建築ビジュアルがどのような思考や試行錯誤、そして感覚の積み重ねによって形づくられているのかを、丁寧に辿る時間となりました。
空気感や余白を大切にする姿勢、言葉にならないニュアンスを汲み取りながら制作に向き合う姿勢、そしてAIや新しい表現に対しても、冷静に向き合いながら可能性を探っていく姿から、haya.archvizさんが一つひとつの作品に誠実に向き合っていることが強く伝わってきました。
お忙しい中、制作の裏側や率直な思いをお話しいただき、誠にありがとうございました。
本インタビューが、建築CGを依頼する方にとっても、そして制作側として表現に向き合う方にとっても、haya.archvizさんの作品や姿勢をより深く知るきっかけとなれば幸いです。

──以上、今回はhaya.archvizさんへのインタビュー記事を紹介させていただきました。
GRUNDでは、このhaya.archvizさんに制作を直接依頼することができます。
完成度の高さだけでなく、空間の魅力が自然に立ち上がる一枚を目指す企画において、haya.archvizさんは心強いパートナーになるはずです。
株式会社GRUND(グルント)
「つくってほしい、この人に」をコンセプトに、建築ビジュアライゼーションを専門とする【国内唯一】の審査制CGスタジオ。
建築の意図や空気感を、美しい一枚のビジュアルとして届けます。
技術と感性を兼ね備えたクリエイターと、本気のビジュアルを求めるクライアントの最良の出会いを生み出します。
ご相談は無料です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
