第9回GROWリハ勉強会レポート|脳梗塞5年経過後の手指機能改善と感覚入力へのアプローチ
📍症例概要
〈対象者〉
・60代男性👨🏻💼
・5年前に脳梗塞(皮質)を発症し、左片麻痺を呈している🧠
・現在は週2回デイサービスへ通所
・母指対立動作の行いづらさを改善したい🤌🏻
〈主な症状〉
・麻痺側の頸部痛🗯️
・外側上顆周囲の疲労感と軽度疼痛
〈理学所見〉
・手指Brunnstrom Stage V
・母指・薬指の対立動作は可能
・Wernicke-Mann肢位
・独歩
1.この症例の評価・触診で注目したいポイント
Mくん👦🏻:「できる時とできない時があるみたいで、タイミングによって違うんです。
できる日とできない日、その条件が何なのか。どう評価すれば良いのか気になりました。」
Sさん👱🏻♂️:「できるタイミングはしっかり聞くね。朝・昼・晩や、風呂上がりなのかとか。
“現状とできた時の差“を聞くのは大事。」
Mくん👦🏻:「どういった評価をしますか?」
Sさん👱🏻♂️:「対立運動で輪っかを作れるかどうかを診るね。MPだけで曲げて触れるか、PIPやDIPでどうか。“どう触っているか”を見て、掴み動作や中腰筋握りも確認する。オーリングテストで手が離れるかどうかも見るよ。手が離れる場合は、対立筋が使えてない=指の力がマッチしてない。ピンチ力(つまむ力)を診るイメージ。」
Mくん👦🏻:「筋力の確認ということですか?」
Sさん👱🏻♂️:「筋力もあるけど、指示通りに動けるか=随意性の確認でもあるね。協調性の低下してる人が多い。皮膚・靱帯・筋が全体的に硬くなってる印象。」
Mくん👦🏻:「随意性だけでなく、PIPラインがうまく使えていない可能性もありますよね。」
Sさん👱🏻♂️:「そうそう。掌屈位で触れるか、背屈位で触れるかどうかみているね。」
🔍 代償・連鎖の評価
Mくん👦🏻:「腱の伸張具合や代償動作も見ます。肩の内転が入るなど、どこでカバーしているかを確認します。ただ、代償を評価したところで何が変わるのか…と感じる時もあります。」
Sさん👱🏻♂️:「肘や肩の連鎖も見るね。手関節や指の角度によっても違う。肘が伸びてる方ができる人もいれば、屈曲位の方が良い人もいる。
手→肘→肩と一つずつ関節を分けて確認していくと良いね。」
💪 ストレッチとアプローチの選択
Mくん👦🏻:「柔軟性が足りない場合、ダイレクトストレッチで伸ばすのか、それとも動かすのか悩みます。」
Sさん👱🏻♂️:「ケースによるね。筋が“1番良い状態”でストレッチして改善するなら表層筋で済んでるケース。筋肉の伸張性が乏しいが、風呂上がりに調子の良いケースや、季節で変わるケースもある。これらは伸張や循環の問題になるね。」
Mくん👦🏻:「動かす量を増やすのが一番ですか?」
Sさん👱🏻♂️:「そうだね。等尺より等速、細かい動きが良いね。ただし手は難しい。スマホ📱のスワイプ動作みたいな日常動作でも、循環に効く訳じゃないからね。負荷の選別が重要になる。」
✋ 感覚入力への工夫
Sさん👱🏻♂️:「表在感覚が弱いなら、イボイボボールやザラザラした素材を使う。“日常ではない感覚”をあえて入れて、感じ取りやすい感覚入力を探すのがポイント。
その人が“入りやすい感覚”でアプローチするのが大事。」
Mくん👦🏻:「手の感覚がない人への感覚入力って効果ありますか?」
Sさん👱🏻♂️:「視覚情報と触覚認識が合ってるかどうかを見てる。合っていないなら知覚障害の可能性があるね。」
🩹 テーピングや小指機能
Sさん👱🏻♂️:「皮膚が硬い人はテーピングも良い。
ただ理論がなく貼るだけでは意味がない。小指ができない人は小指球の収縮ができてない可能性もある。MPアーチを意識して、親指と小指を交互に固定してつける動作も有効。」
🔄 疲労感・震えへの対応
Sさん👱🏻♂️:「疲れない範囲で実施する。疲労が“動かせないから”なのか、“分離運動で疲れる”のかを見極め、震えが出たら一度休ませる。協調性や筋力低下の可能性もある。」
Mくん👦🏻:「震える場合はどう判断しますか?」
Sさん👱🏻♂️:「協調性がうまく発揮できていない一方で、筋力低下も見られるね。
脳梗塞による中枢の問題が背景にあるため、筋・腱・靱帯などの物理的な硬さが存在する場合は、まずフィジカルなアプローチが必要となる。
可動性はあるが運動がうまくできない場合には、協調性へのアプローチを行う。
介入は段階的に進めることが重要で、
①物理的評価 → ②運動評価 → ③神経生理学的アプローチ(Ⅰa・Ⅰb抑制)→ ④筋トレ
という流れで実施する。
特に、持続的な伸張を行うとパフォーマンスが低下するため、伸張反射を抑制する目的でⅠa・Ⅰb抑制を用いる。
その後、短時間での筋トレを取り入れ、神経-筋の再教育を図る。
基本姿勢からスタートし、手首 → 肘 → 肩と段階的に運動を導くことがポイント。
発症から5年が経過しているため劇的な改善は難しいが、現状より少し前の状態を取り戻すことは可能だと考え、まずはフィジカルの介入が効果的である。
筋・腱の硬さを丁寧に評価し、改善したうえで再評価を重ねていくことが、回復への第一歩となる。」
💡ポイント
・「できる/できない」の差を生む条件(時間・姿勢・環境)を丁寧に聴取する
・筋力よりも随意性と協調性の評価を重視
・代償動作は“悪”ではなく“機能の適応”として観察
・ストレッチよりも動かすこと(等速・微細運動)で循環改善を図る
・感覚入力は“日常ではない刺激”を選び、入りやすい感覚を探す
・テーピングは皮膚・小指球・MPアーチを意識した目的設定を
・疲労や震えは協調性 or 筋力低下のどちらかを見極めて対応
💬あなたなら、手指の「できる日」と「できない日」の違いをどう捉え、どんなアプローチを最初に選びますか?
2.手指リハビリの介入方法
Mくん👦🏻:「ボールを握る時の意識づけや対応法を教えて下さい。」
Sさん👱🏻♂️:「ザラザラ・ツルツルなどの感覚を感じてもらう。物を対立のみで拾い、サイズや硬さを変えて評価する。ボールを握るだけでも手のシワやMPラインの状態が分かる。感覚入力として有効だね。」
Mくん👦🏻:「痙性が強い場合はストレッチも限界がありますね。」
Sさん👱🏻♂️:「そうだね。痙性の程度で変えるしかない。」
他のツール例 🧰
ペグ、お手玉、小豆、豆、グミ、砂袋、ゲーム、チューブ、輪ゴム、紙をくしゃくしゃにするなど。
💡ポイント
・触覚・運動覚の複合刺激を意識
・動作そのものが“リハビリツール”になる
・素材・硬さ・形状で刺激を変化
💬あなたは手指訓練でどんな動作を取り入れますか?
3.「5年経過した片麻痺」でも機能は戻るのか?
Mくん👦🏻:「患者さんの目標設定とOTができることは違うことが多いため、できないことはしっかり伝えることが大事ですよね。」
Sさん👱🏻♂️:「“完治”は難しいけど、まず受け入れることが大事。何かを失っても他で補うしかない。目標が“元に戻りたい”だけだと弱いから、“どうしたいのか“を明確にしていく必要がある。」
Mくん👦🏻:「フィジカル的な部分で良くなりそうな時は希望がありますね。」
Sさん👱🏻♂️:「そうだね。フィジカルと協調性の判別が重要になるね。」
🧩 麻痺側の頸部痛への考察
Mくん👦🏻:「麻痺側の頸部痛は筋性や循環不全、伸張痛と考えます。肩甲骨下制や下方回旋が強い場合は、腱側から刺激を入れて麻痺側への促通を図ります。」
Sさん👱🏻♂️:「神経の色調も見ると良いね。痛みが毎回変わる人は特に。痛みを感じる機序を精査することが大切。」
Mくん👦🏻:「短い時間でできるだけ的確にアプローチをかけて精査することが大事ですね。」
💡ポイント
・「回復=元に戻す」ではなく、「今ある機能でどう生きるか」を共有することが大切
・目標設定は“再現”より“再構築”
・麻痺側の頸部痛は筋・循環・神経いずれの要素も関与する可能性が高く、原因を1つに絞らず機序の精査することが重要
・腱側からの促通や神経の色調確認など、間接的な刺激も有効
💬あなたなら、“5年経過した片麻痺”の患者さんに、どんな希望や目標設定を伝えますか?
📍ディスカッション後
Mくん👦🏻:「前腕の疲労感や痛みがある場合、脳的な問題なのか協調性の問題なのか…判断が難しいです。」
Sさん👱🏻♂️:「まず“痛みの感覚”をどう感じてるか解釈する。橈骨・尺骨・骨間膜の動きを触ってみると良い。骨間膜の深部が硬いなら物理的アプローチをする。」
Mくん👦🏻:「骨間膜の深部はどの位置で診ますか?」
Sさん👱🏻♂️:「遠位は関節。真ん中が一番わかりやすい。粗大筋ばかり使ってると小筋群が働かないので、協調性を見直すことも必要。」
Mくん👦🏻:「骨間膜をアプローチしても戻ってしまう場合は意味がないのでは?」
Sさん👱🏻♂️:「その時に変化があるなら意味はある。良い状態を脳に“何度も入力する”のが重要。」
💡ポイント
・“痛み”を構造だけでなく感覚としてどう認識しているかを観察する
・橈骨・尺骨・骨間膜など、深部組織の可動性を確認し、表層との関係性を捉える
・変化が一時的でも、その感覚を脳に繰り返し入力することが回復の鍵
・「戻ってしまう=無意味」ではなく、“再入力の機会”として捉えることが大切
💬あなたなら、変化が一時的に戻ってしまう患者さんに、どんな言葉をかけますか?
✅まとめ
・脳梗塞後5年経過していてもフィジカルな要素は改善可能。
・連鎖・協調性・感覚入力を意識した評価が重要。
・“良い状態を脳に繰り返し入力する”ことが回復の鍵。
・フィジカルと脳的要素を分けて考え、段階的にアプローチすることが大切。
💭この症例検討を通じて、あなたはどのような気づきを得ましたか? 同じような症例を担当された経験や、異なる視点があれば、ぜひコメントで教えてください。
⚠️注記
本記事で取り上げている症例は、実際に当院へお越しいただいたクライアント様の状況を確認し、勉強会でディスカッションした内容を整理したものです。
記事化にあたっては、クライアント様ご本人から掲載の許可をいただいております。
本記事の目的は、臨床に携わる理学療法士・作業療法士をはじめとしたリハビリ専門職の方々と、学習・知識を共有することにあります。
実際の診療行為や診断を代替するものではありませんので、その点ご理解ください。
