何もそこまでしなくても
何かを得るには、たいていの場合対価が必要になる。
物を買いたいなら当然お金を支払わねばならないし、それを欲しくて並んでいる人たちがいるなら、やはり時間という対価を支払って列に並んで待たなければならないだろう。ごく自然なことだ。
だが、それを得るためだけにそこまでのコストを支払えないというケースも多々ある。
今日はそういう話をしようと思う。
近所のラーメン屋は、毎月特定の日になるとメニューがラーメンだけになる代わりに、すごく安くなるというサービスをやっている。じゃあせっかくだから晩飯はそこのラーメンにしようと思って出かけたときのことだ。
店の前に、20人ほどの行列ができていた。
確かにその店はこの地域ではだいぶ旨い方のラーメン屋ではある。ただ、行列ができるほどではないというか、何ならいつ行っても割と気軽に食えるのがウリみたいなところのあるラーメン屋だと俺は勝手に思い込んでいた。
だから、その行列を車の窓越しに見かけたとき、少し動揺してしまった。
何もそこまでしなくても。
そう思い、俺は近所のスーパーで売れ残りの弁当を狙うことにした。
戦利品を車に積んだ帰り道、そのラーメン屋の前をもう一度通り過ぎた。最初に行列を見てから大体30分ぐらい経った頃だろうか。店の前の行列は消えていた。
失敗だったかな、と一瞬思った。行列に動じず、素直に並んでいれば晩飯は予定通りラーメンだったわけだ。あるいは、そのラーメン屋は夜遅くまで営業しているから、例えば夜の10時頃まで家で待機してそれから行くというアイディアもあったかもしれない。だがそこで、また例のワードがふと脳裏をよぎった。
何もそこまでしなくても。
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