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振り返って抱きしめたい

父のことが大好きだった。
一緒に手を組んで歩いて、近所の人に見られると嬉しかった。自慢の父だったの。
もう随分会ってないなぁ。
その直後、父のランニングシャツに時々顔をうずめてた。
そういえばあのシャツはどこへ行ったんだろう。いつのまにかそのことさえ忘れてる。
友人が後になって「あの時あなたどうかなっちゃうかと思った」と言った。
人が見たらそうだったんだと逆にびっくりした。
「チベットの死者の書」だったかなぁ?
赤い光だの青い光だの。
シャーリー・マクレーンの『Out on a Limb』だのずいぶん読んだ。
とにかく父に会いたかった。
人間てさ、わかっていても当然のことでも相当悲しいよね。
「親の死は最も平凡な不幸」と昔読んだ本の中にあった。
本当だなと今は思える。
親がいれば普通自分より先に亡くなるし、そもそも人間は誰一人として死なない人はいないんだよ。
そんなことは知ってたけど、でも人から見たら心配なほど嘆き悲しんでいたわけでしょ、私。
今になってみるともっと理性的に受け止められなかったものかと思う。
別れた年齢にもよるんだろうね。
いくつだったらかしら?
確か三十七歳くらい?

おーそりゃあ悲しかったわけだ。
う〜かわいそう私。
悲しかったね。
いま涙出た。

でもさ。
時間。時。
こういうので救われるんだろうね。
ただ今は、そういう悲しい時間が短いほど賢いんじゃないかって思う。
自分の人生の時間が短くなってきたからか、いい時間を増やしたいと思うの。
でもきっとこの先また私の手を離して空に行く人がいたら、きっとどっぷり泣き暮らすんだろうな。
そう。
わたし賢くなかったんだわ(笑)
きっとその時また新しい何かに巡り会い乗り越えられるね。

そんなことを書いたら、一人で暮らしている娘からLINEが来た。
「ママがタンクトップ嗅いでたの覚えてる」
「見ててかわいそうで、小さいながら悲しくなった」

なんということだろう。
わたしはやはり自分の悲しさを好きなだけ放出していたんだ。
その背中の後ろで小学一年生の小さな小さな娘がわたしを見て悲しんでいたなんて。
わたしはわがままで我慢のできない人間で、自分の感情全部出して子供達を育てていた。
世界で一番大切で死ぬほど愛してる自分なんだから、いいとか悪いとか何も思わず全力投球していた。
出来ることならあの時に戻り、振り返りあなたを抱きしめたい。
そう思っていたら、また娘からLINEが来た。
「弟はその時一緒にポロポロ泣いてたよ」
そしてわたしはその息子をぎゅーっと抱きしめてたらしい。
親が亡くなるとこんなに悲しいんだって娘は思ったって。

年子の二人なのに何故か娘と息子の間隔はもっとずっと離れている感じ。
それは今でも続いていて、娘の弟LOVEは激しい😇
生まれた時からしっかりしていた娘を、わたしはずっと頼っていた気がする。
そのせいで娘は知らず知らずはるかお姉さんになり、家族も含め小さい胸でみんな受け止めてきたのかと思う。
細い三つ編みがくせ毛のせいでくるくる巻けちゃうあなたが強烈に目に浮かぶ。
あの時記憶はないけど、息子だけでなく娘も何故抱きしめなかったのか。
ごめんね。
許してもらえるだろうか?

また娘からライン。
その時から、私は弟が激かわいかったから、全然大丈夫🙆と。

やっぱり娘がいないと生きていけないなと実感。

あの日の私は、父を亡くした娘だった。
そして同時に、二人の子供の母親だった。

出来ることならあの時に戻りたい。
そして振り返って、娘を抱きしめたい。

#創作大賞2026 #エッセイ部門

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