倦まず、たゆまず----ゲーテ『ファウスト』と、化城喩品の道案内
ゲーテ(1749年~1832年)は、生涯をかけて書き継いだ大作『ファウスト』第二部、終幕「山峡」の場において、天使たちにこう語らせています。
Wer immer strebend sich bemüht, / Den können wir erlösen.
絶えず努力し続ける者を、我らは救うことができる。
ファウストは、生涯にわたり過ちを重ね、悪魔メフィストフェレスと契約を交わし、多くの罪を犯した人物です。それでもなお、最後の瞬間まで倦むことなく求め続けたその一点をもって、天使たちは彼の魂を救い上げます。完璧であることが救いの条件ではなく、ただ、たゆまず努め続けることそのものが、救済に値する----このゲーテの人間観は、挫折と後悔を重ねながらも歩みを止めずにいる、あらゆる人の背中を静かに押してくれるものではないでしょうか。
この「倦まず、たゆまず」という励ましは、法華経化城喩品第七に説かれる、あの道案内人の逸話とも深く重なり合います。
五百由旬という険しい悪路を、宝を求めて進む一行が、疲れ果てて引き返そうとしたそのとき、導師(どうし)はこう告げます。
「汝等勿怖、莫得退還。今此大城、可於中止。」
汝等(なんだち)怖(お)づることなかれ、退(しりぞ)き還(かえ)ることを得(う)ることなかれ。今(いま)此(こ)の大城(だいじょう)、中(なか)に於(お)いて止(とど)まるべし。
道案内人は、疲れ果てて心折れかけた人々を見捨てず、方便の力によって仮の城を現し、休息を与えて、再び前へと歩ませます。城が消えたとき初めて明かされるのは、その城が仮のものであり、真の宝処はすぐそこに近づいていたという事実です。
ゲーテの天使が「絶えず努力する者」を救うと告げたように、化城喩品の導師もまた、たとえ足が止まりかけても、なお歩みを止めない者だけを、真実の宝の地へと導いていきます。
倦まずたゆまず歩み続けることそのものが救いであるという東西の智慧は、疲れを知る全ての者への、変わらぬ励ましとして響いているのではないでしょうか。
考え、歩みを進めてまいりましょう。
諸仏の智慧が、甚深無量であるように。

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