バトルに乾杯!|第二話「盾の男」
【閲覧上の注意】
本作には、剣戟・魔法・モンスターの討伐などの戦闘シーンが含まれます🌱
過激な表現が苦手な方は、ご注意ください⛱️ では🐢🐾

第二話 「盾の男」

水が、足首をなでた。
ダベッドは目を閉じたまま、少しだけ眉を動かした。
遠くで鳴った鐘の余韻は、もう消えている。
かわりに聞こえるのは、ぬるい水が流れる音だった。
ゆっくり目を開ける。
足元には、黒く濁った水。
つま先を動かすと、底の泥がぬるりと返る。
「……やっかいだな」
ブレスレットを顔の前に持ち上げると、その内側が光った。
大きく息を吸って、静かに吐く。
どうする。
サイカは休んだほうがいい。
さっきの炎は、少しこたえたはずだ。
それに、この足場では派手には動けないだろうな。
だったら、ジードだ。
あいつなら、頼りになる。
ダベッドは、手首のそれを親指ですっとなぞった。
よし、いくか。
足を前に出すたび、泥が重くからみつく。
水は浅い。
だが、よどんで底が見えない。
ぬかるんだ道の先に、大きな背中。
「ジード!」
呼びかけると、その背中がわずかに揺れた。
ジードは肩に盾を担いだまま、振り返って片手を上げた。
なんだか少し、傾いている。
「こっちは、もう足を取られてる」
「だはっ。見りゃわかる」
ぐじゅり。
足を引き抜き、盾の横まで近づいた。
並ぶと、大きな手がダベッドの肩をぽんと叩いた。
「今回は俺にまかせろ」
「ああ、頼りにしてるぜ、盾」
「物にするな。よけるぞ」
「すまん、すまん。それは困る」
ジードはにこやかに、盾を構え直した。
二人は、しばらく沼の奥を見た。
遠くで、鳥の鳴き声がぽつりと響く。
「静かだな」
「ああ」
そのとき、隣で声が跳ねた。
「ダベッド、なにかある!」
沼の奥で、黒い水が押し上げられるようにふくらんだ。
ぼこり。
その下から、鈍い宝石みたいな突起がひとつ、ぬっと浮かび上がる。
盾の陰で、その笑みが消えた。
「おい、こいつはやっぱり……」
ダベッドは目を細めた。
「ああ。硬いやつ、アルマジドンだ」
ギェェェエエ――。
空をつんざくような響きが、湿った空気を震わせた。
もう、巨体の半分が水の上に出ている。
外皮は黄土色で、泥と草にまぎれてまだらに見えた。
「おい、足元に気をつけろ! これはかなり深いぞ」
盾越しに声が飛んだ。
「どうする、ダベッド」
沈み方を読む。
はまれば、自由がきかなくなる。
それなら、立ち上がったところを狙うより、まず足場だ。
それに、ジードが盾を使うには、踏んばれる場所がいる。
「とりあえず距離を取る」
「どこへだ」
「草の多いところだ。白い花のかたまりを探せ」
「花?」
「あれは浅いところに育つ。そこなら踏める」
「よし、先に行け。追いかける」
ダベッドは先に動いた。
白い花のかたまりへ向けて、ぬかるみを踏み分ける。
ジードが、その後を追う。
巨体は低く沈んだまま、全身を震わせた。
泥が、雨のようにまき散らされる。
「おい、泥を飛ばすな、カメやろう!」
ダベッドが吠えると、ジードは盾の陰で顔をしかめた。
「ダベッド、カメではないぞ」
「じゃあ、トカゲだろ」
「それもちがう。あいだだ、あいだ」
「なんのあいだだよ」
「知らん。来るぞ」
白い花のかたまりが、すぐ脇に見えた。
ジードは一歩前に出た。
盾を掲げ、突き出す。
「タウントガード」
低い音が湿った空気に沈み、盾がじんわり光りはじめる。
アルマジドンの顔が、ゆっくりジードへ向いた。
盾を下げ、そのまま足を開く。
「シールドアンカー」
盾の下端が、水の底へ食い込んだ。
ずん、と鈍い手応えが返る。
ジードの体が、そこに根を張ったように止まった。
ダベッドは迷わず、柄のくぼみに土色の宝珠をはめ込んだ。
カチリ。
刃の根元に、鈍い茶色の光がじわりと灯った。
地の宝珠。
硬いものを割り、斬った傷口を石のように固める宝珠だ。
「あいつの外皮を砕く。割れたら、剣をぶっ刺す。あとは腹だ」
「だな」
「見えたら迷わず狙う」
「わかった。なら、まず俺が止める」
ギェェェエエ――。
アルマジドンが、低く身を沈めた。
水が押しのけられ、岩のような巨体が迫る。
「来るぞ!」
ジードが盾を正面に据えた。
ドバゴオォォン
「ぐはっ」
ずずずぅ、と鈍い音が続いて響く。
だが、倒れない。
ジードは衝撃を殺すように、盾の角度をわずかにずらした。
巨体の勢いが、そこで止まる。
「よし!」
水を蹴った。
「おりゃあああっ!」
地の宝珠を宿した刃が、外皮へ叩き込まれる。
グシャ。
鈍い音を立てて、装甲のかけらが飛び散った。
「ギェェェアア――!」
「よし、いけるぞ、ダベッド!」
盾の向こうから、ジードの声が飛んだ。
「だが、長くはもたないぞ」
「ああ。こりゃ最初から飛ばすぜ」
剣を握り直す。
二人の視線が、一瞬だけ合った。
それだけで、十分だった。
30秒で聴けます。
Gemini(Lyria 3)で制作しました。
こちらからどうぞ☘️↓聞く🎯
アルマジドン~♪
今回は、男たちの熱いタッグ戦です🌋
ストーリーソングもつくりました🎧
物語でも、ストーリーソングでも、気になったほうの感想をいただけるとうれしいです✨🐾
第三話 仮 「沈む盾」


いいなと思ったら応援しよう!
お読みいただき、ありがとうございます😊時間をかけてひとつの記事を書くスタイルです☘️「続きも読みたい」「応援したい」と思っていただけましたら、目指せnote小説家。その今後をチップでそっと応援いただけると励みになります🐦プライバシーを尊重し、気楽に交流できる世界へ🌏