『テレビショッピング』|ショートショート集 36
「本日おすすめする商品はこちら」
テレビのほうからしきりと宣伝文句が聞こえてくるが、右から左へ聞き流す。
三分ぐらい経ったのでカップラーメンの蓋をとった。シーフードの香りが鼻腔をつく。
やっぱりこれだ。いろいろと新商品が登場して、様々な味が出てくるが、結局ここに帰ってくる。
「なんと! 今日は、この道二百年のベテランの手による祟りをご紹介! ええ!? すごい!」
ずるずると麺をすすりながら、ついつい習慣でテレビの画面を見てしまった。
販促に忙しそうな女と目が合った気がした。が、気にしないほうがいい。
少し、麺がふやけすぎている気がする。ちゃんと時間を計らなかったのが失敗だ。
「健康優良児でも一日で健康診断赤紙にできるような上質の素晴らしい祟り。さらに! 今なら、出血大サービスで、意味なく鼻血が出る呪いまでついてきます。ええ!? すごすぎ! でも、お高いんでしょう?」
食感は多少そこなっても味はかわらない。ずるずるすする。シーフードはやっぱり美味い。
「ご心配なく。勉強させていただきます。ベテランの祟り、鼻血出る呪い、これがセットで、なんと今なら期間限定で無料! 無料でのお届けです! えええええ! 安すぎ! やばすぎ! 絶対ほしい!」
麺を食べ終わって、締めにスープを飲み干す。まずいラーメンは汁まで飲む気になれないが、シーフードヌードルなら、もちろん別だ。
空のカップをテーブルに置いて、ふうと一息つくと、先日壊れて映らなくなったテレビの画面で茶番をしていた女が、何かを期待した目を向けてきた。
顔をそむけてやったが、着物の女は「よっこらしょ」などと言いながら、テレビの画面から、ずるずると這い出て近寄ってきた。
「どう? 欲しくなったでしょ? 祟り。呪い付きですよ! しかもタダ! いるでしょ?」
「いらねーよ」
にべもなく断ると、女はぷーと頬を膨らませた。
「ケチ」
俺のアパートは駅近で家賃も破格の安さだ。だが、曰く付きなのが玉にきず。こいつが出るのがちょっと鬱陶しい。
「はぁ。本当、毎晩毎晩うるせーなー。っていうか、なんでいちいち祟るのに許可がいるんだよ」
「最近はコンプライアンス的なのがうるさくて。同意なしで祟ったりすると、クーリングオフ対象になっちゃうし」
いったい、幽霊の社会はどうなっているのやら。
とりあえず、生きている人間の社会にも近しい面倒事があるみたい。
まあ、それはどうでもいいけど――
「――早くテレビ買わないとな」
「これが本当のテレビショッピングって感じ?」
「うるせえよ」
了

