アルトバイエルンと福砂屋のカステラを前にすると、夫はこうなる。
夫は、好物を「単品で大量に食べる」という、ちょっと変わった癖がある。
まず一つ目は、結婚前の出来事。
夫のアパートに遊びに行ったときのことだった。
彼は冷蔵庫を開けると、おもむろにアルトバイエルンを取り出し、袋からそのままむしゃむしゃ食べ始めた。
私は思わず固まった。
「え、大丈夫なの!? 生で!?」
私の中では、ウインナーは焼くかボイルするもの。
そのまま食べるという発想がなかったのだ。
すると夫は、何事もない顔で言った。
「え? 焼かなくても食べられるんだよ〜。」
半信半疑で袋を見ると、そこにはしっかりと書いてあった。
『加熱済みですので、そのままお召し上がりいただけます。』
……確かに。
間違っていたのは私だった。
でも、だからといって、アルトバイエルンをおやつ感覚で何本も食べる人を、私はその日初めて見た。
しかし、これは序章にすぎなかった。
長崎へ旅行に行ったときのこと。
夫は福砂屋さんのカステラがお気に入りだ。
特に、底にあるあのザラメが大好きらしい。
滞在中のホテルでは、夜な夜な「ミッドナイトカステラパーティー」が開催された。
もちろん私も参加したので、共犯である。
……とはいえ、これはいつものこと。
以前、小樽へ旅行したときも、「ミッドナイトチーズケーキパーティー」と称して、LeTAOのドゥーブルフロマージュを夜中に食べていた。
そのパーティーにも、もちろん参加した。
長崎を満喫し、帰路につく長崎空港。
夫は福砂屋さんのカステラ0.6号を2本購入した。
「家に帰ってから食べるんだろうな。」
私は何の疑いもなく、そう思っていた。
搭乗まで時間があったので、待合でのんびり過ごしていると──
夫が、おもむろにカステラの箱を取り出した。
包装を開ける。
……まさか。
こんなところで!?
「ゆかちゃんも食べなよ~。」
そう言われたら、もちろん食べる。
空港の待合で食べる福砂屋さんのカステラは、もちろんおいしかった。
……いや、そういう問題じゃない。
家まで待てなかった夫と、
「おいしいね」と言いながら一緒に食べた私。
結論。
夫は変わっている。
……でも、一緒に食べた私も同罪である。

