グランティア建国記#32
第32話「ドラクマの捕縛」
地下牢の前、静寂の中に足音が響いた。
イリナ、テミストス、アグレオンの三名が並び、鉄扉の前に立っている。
「……これが、ドラクマか」
イリナの低い声に、奥の男がゆっくりと顔を上げた。
暗がりの中に浮かぶその男の目は、怯えも怒りもない。
ただ、空虚な冷たさだけが宿っていた。
「捕えられたか……だが、奴らは解き放たれるぞ」
ドラクマは呟いた。
テオ
「何を言っている」
テオが槍を突きつける。小柄な中年兵士である彼も、この男の存在には警戒を緩めない。
ドラクマ
「奴隷解放? 滑稽だ。人は己の欲望を縛れぬ。ならば、誰かが“縛る”のだ」
その歪んだ思想に、イリナが静かに短剣を抜いた。
「もう、お前の“思想”はこの国に不要だ」
背後では、リシュアが気配を消して待機している。
銀髪のフード姿、いつでも暗殺に転じられるよう短剣に手を添えて。
アグレオンは重く口を開いた。
「……こいつを、生かしておくべきかどうか、王に問う必要がある」
彼の声は低く、だが揺るぎなかった。
一方、外ではテミストスが兵を整え、新たな命令を待っていた。
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