グランティア建国記#29
第29話『眠れぬ国、叫ぶ声』
アグレオンの帰還から数ヶ月。
グランティアは、かつて荒れ果てていた城下町の再建に尽力していた。
石畳は整備され、民は徐々に笑顔を取り戻し始めていた。
だがその裏側で、灰の帳の存在、仮面の騎士の襲撃、
ドラクマの影は、なお国中に「眠れぬ夜」を残していた。
商人たちの『取り引き条件』の裏では、
幼くして奴隷にされた子どもたちが、
そのまま『影の市民』として成長していた。
王の目が届かぬ“裏社会”。
それが、確かに息づいていた。
■ 城下町・昼下がり
アグレオン、テミストスを伴い、グラントは久々に城下町を歩いていた。
目的は、灰の帳周辺の地形と活動状況の偵察。
日は高く、夜の住人たちは姿を見せていなかった。
一通りの偵察を終え、帰還しようとしたその時──
???(女性の声)
「王様!この国は奴隷商人を放っておくおつもりですか……!?」
グラントが振り向くと、
市場の片隅に立つ、若い女性の姿があった。
髪はぼさぼさで、衣も粗末。
だが、その瞳には炎のような光が宿っていた。
アグレオン「貴様!! 王に突然何を言う!」
女性「私は奴隷です。ですが私はこの国を“笑顔”にする政策を生み出せます!どうか話を聞いてください!」
グラント
「アグレオン、やめろ。私はこの者の話を聞きたい」
アグレオン
「おー?珍しいこともあるもんだぁー……」
王が歩み寄ると、女性は一瞬たじろぎながらも
真っ直ぐに顔を上げた。
グラント
「名は何という?」
女性「私は……アリシア。名前なんて、奴隷には関係ないのに……どうして……」
グラント
「“笑顔にする政策”か……詳しい話は城へ来て話すがよい」
アリシア
「王様……私は奴隷です。勝手にお城へ伺えるような身分ではございません……」
グラント
「そういうものなのか……」
テミストス
「王、どちらにせよ──奴隷商人とはいずれ決着をつけねばなりません。これは良い機会かと」
グラント
「奴隷商人か……アリシア、少しだけ時間をくれないか」
アリシア
「王様……お待ちしております……」
その声には震えがあった。
だが、それ以上に──希望があった。
こうして、グラント王と“影の民”の声が初めて交差した日。そして、国を蝕む最大の敵──ドラクマ・ヴァルキスとの戦いが、静かに、だが確実に始まろうとしていた。
【次回予告】
第30話『王と奴隷の約束』
アリシアの語る“政策”とは何か?
そして、灰の帳への総攻撃計画が水面下で動き出す。
王は、民の痛みにどこまで踏み込めるのか──
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