「誰にも相談できない」が33%——子どもの不登校と仕事の両立における「見えない壁」
「共働きが当たり前」の現代社会において、もし我が子が学校へ行けなくなったら。 その時、私たちは今の職場環境で働き続けられるでしょうか。
先日、働く親と企業の「子どもの不登校」に対する認識の差を浮き彫りにする調査結果が発表されました。そこから見えてきたのは、多くの親が抱える深刻な「孤立」と、企業側との大きな温度差という現実です。
今回は、この調査結果から見える課題と、私たちがこれから目指すべき「働き方のあり方」について考えてみたいと思います。
働く親を襲う「孤立」の現実
調査対象となったのは、正社員として働く子育て中の男女1000人。その中には、子どもの不登校を経験した親も含まれています。
まず突きつけられたのは、厳しい現実でした。 制度を使えなかった際、親の33%が「誰にも相談できなかった」と回答したのです。家族に相談した割合(24.6%)よりも、「相談先がなかった」とする回答が多いという事実は、どれほど孤独な戦いを強いられているかを物語っています。
不登校による仕事への影響も深刻です。 離職(5.8%)、転職(8%)、職種変更や時短(7.8%)、休職(3.2%)など、キャリアの変更を余儀なくされた方も少なくありません。そして、働き方を変えた親の74.2%は「収入が減った」と回答しており、中には半分以下になったというケースも存在します。
企業と従業員の「埋まらない溝」
一方で、企業側(人事担当者500人)の認識はどうでしょうか。ここには、従業員の受け止め方との間に明確なギャップがあります。
子どもの不登校に関する従業員の相談を「把握している」と答えた企業は、半分にも満たない46.6%でした。27.8%は「おそらくいるが把握していない」と回答しており、実態が見えていない企業が多いのが現状です。
また、企業は56.2%が「子どもの不登校は離職リスク」と認識しているものの、制度を「積極的に周知している」と回答したのはわずか19.4%にとどまりました。働く親の53.6%が「制度の周知」を企業に求めているのと比較すると、支援の手が届いていない現状が浮かび上がります。
「家庭の事情」を持ち込める職場へ
ある企業は今回の結果を踏まえ、次のようにコメントしています。
「共働き家庭が多数を占める今、家庭の事情を持ち込まずに働き続けることは困難」
この言葉は、現代のビジネスパーソンにとって非常に重い響きを持っています。これまでの日本社会では「仕事と家庭は別物」という意識が強かったかもしれませんが、もはやその前提自体が限界にきていると言えるでしょう。
では、私たちはどうすればよいのでしょうか。
鍵となるのは、「相談しやすい文化」と「情報のオープン化」です。 不登校は、決してその親の能力や育て方の問題ではありません。企業側は「家庭の事情を持ち込んでもいいんだ」というメッセージを出し、従業員側も「情報共有をためらわない」という姿勢を持つこと。この相互の信頼こそが、働く親の孤立を防ぎ、結果として離職リスクを低減させるのではないでしょうか。
最後に
仕事と子育ては、どちらかを選ぶための二者択一ではありません。 「困ったときはお互い様」と声をかけ合える職場、家庭の事情を隠さずに共有できる関係性。そうした寛容な空気が、今、私たちの組織に最も必要とされています。
まずは今日、隣で働く誰かと「家庭と仕事の両立」について、少しだけ深く話してみることから始めてみませんか。
