【裁判】市役所の部長が商品券を2度受け取った“言い訳”とは… 裁判官が怒りの追及「自覚なさすぎ」
【事件概要】男性被告(59)は神奈川県内の某市環境部長だった2024年8月、便宜を図った謝礼として建設会社の営業部長の男性(62)から贈られた1000円の商品券100枚を受け取ったほか、25年2月にも同様に同じ男性から贈られた1000円の商品券100枚を受け取った。(収賄罪)
「封筒を差し出されて、何度か断ったのですが、執拗に受け取りを懇願されて、『個人的にお世話になっているから』と言われて、受け取ってしまいました」。横浜地裁で開かれた公判で、被告はこう釈明した。
被告は1989年に入庁して約37年になる。秘書室長などを経て2024年7月に環境部長となった。贈賄側の営業部長とは約10年前に職務を通じて知り合い、被告が剣道を指導していた道場に営業部長の妻が通っていた縁もあって、さらに親交を深めていったようだ。
1度目の商品券授受については、営業部長が勤める建設会社が請け負った住宅新築工事に絡むものだった。下水道が建築予定地の手前までしか整備されていなかったため、営業部長は下水道の延伸ができないかどうか被告に相談を持ち掛けた。
下水道工事は環境部の所管ではなかったが、被告は弁護人による被告人質問に対して「(書簡の)上下水道局長は同い年で話しやすい関係だったので、ちょっと聞いてみようかな」と考えたと説明。あくまでも「質問をしにいっただけ」と強調したが、結果的には下水道が延伸されることになった。その“謝礼”としての商品券だった。
被告人質問での被告自身の説明をもとにすると、茶封筒に入った形で渡され、中身は確認せずにデスクの引き出しにしまった。その後、中身を確認して「まずいな」と感じたが、「日が経っていて今から返すのは申し訳ない」「だいぶ執拗に受け取りを懇願されて、裏切るような形になってはいけない」などと考えて返却はせず、金券ショップで換金してローン返済などに充てた。
2度目は同建設会社社長の息子が取得予定の土地近くにあるゴミ集積場について、移動ができないかどうか同じく営業部長から被告に相談。これは環境局の所管で、被告が担当部局に相談して最終的に移動が実現した。このケースについても、被告は直接の担当部局に「ちょっと聞くぐらい」だったと強調したが、2度目の商品券も明らかにこの“謝礼”だった。
被告の説明では、2度目の茶封筒についてはさすがに中身を「想像できた」し、「収賄になると思った」ともいうが、「個人的に親しい営業部長から受け取りを懇願」されたため1度目と同様に返却はせず、同じく換金して自宅修繕費に充てた。
検察官は、被告が捜査当局の取り調べを受けた直後に「送受信メールを削除した」と追及した。
検察官「メール削除は罪証隠滅ですよね」
被告「役所を辞めるつもりだったので、身の回りをきれいにして、と思っていた」
検察官「でもメールって証拠ですよね」
被告「……」
検察官「捜査対象になって、まずいと思ったのでは」
被告「そこまで深く考えてなかった。(削除しても)役所のサーバーから復元はできるので」
営業部長からは個人的にも中元や歳暮が送られていたという。
検察官「あなたから営業部長に中元や歳暮を送ったことは」
被告「ないです」
検察官「なぜですか」
被告「特に理由はないです」
検察官「中元や歳暮は返す(お互いやり取りする)のが割と普通だと思うのですが、あなたばかりがなぜ一方的に受け取る立場なのですか」
被告「受け取る立場…お返ししても不自然ではないが…一方的にもらうことについても深く考えたことはないです」
茶封筒の中身について問われても「その時に推測したことはない」「金券だろうという発想にはならなかった」「可能性の一つとして、簡単なお菓子ということもあるかと」などと回答した。検察官に「商品券を換金しましたよね。せめて家に置いておくとか考えなかったのですか」と追及されると…。
被告「……ウーン……考えなかった」
起訴事実は認めているものの、被告人質問では歯切れの悪い証言に終始した被告。一連の証言が言い訳やごまかしのようにも聞こえたのだろう。検察官による被告人質問の後、裁判官が検察官ばりの厳しさで被告を問い詰めた。
「(公務員は)商品券を絶対に受け取ってはいけない。ならば、絶対に受け取ってはいけないんですよ。返します、という決断をしなかったのはなぜですか」
「仮に1度目は返却しづらかったとしても、少なくとも2度目は絶対にダメと断るのではないんですか」
「(両案件とも)『担当部局に問い合わせしただけ』というけど、問い合わせがどういう意味を持つと思います?単なる問い合わせ、というのは自覚なさすぎじゃないですか」
「自覚なさすぎ」との“口撃”に、被告は「はい」と答えるしかなかった。
被告は剣道七段の腕前で、最高段位の一歩手前だった。「もう子供たちに『道』を指導する立場にない。剣道はやめようと思っています」。職場でも役職定年まであと1年のところで、「道」を踏み外した形だ。判決は懲役1年、執行猶予3年、追徴金20万円。裁判官は「謝礼の趣旨で金券と分かった上で受け取ったと考えるのが自然。贈収賄に対する認識が甘すぎたと言わざるを得ない」などと断罪した。
