【ショートストーリー】今夜も意識が旅をする
繰り返し見る夢がある。
しかも、3パターン。
ある時は、
「曲者じゃー!」と、着物の裾を引きずりながら、城の長い廊下をひた走る御局。
またある時は、
「殿をお守りいたせ!」と、刀を振りかざして突進する武士。
そしてまたある時は、
「あの城に忍び込み、敵の兵糧を探るぞ」と、野戦場の茂みに身を潜める忍び。
それぞれ立場は違うが、共通しているのは、「戦国時代の日本のどこか」だということ。
そしていずれも、最後は敵に背後を取られて地に沈む――という不運な結末だ。
とにかく、背中の守りが甘いのだ。
同じ夢をたびたび見るので、
「今度こそは」
と背中に意識を集中させてみるけれど、やはり毎回、背後を取られて倒れる。
これは何かのメッセージなのだろうか?
それとも、前世の記憶?
眠りに落ちると、意識が勝手に戦国の世へ旅立ってしまうのだから、私にはどうしようもない。
後ろに気をつけることしか――
「今度こそ、背後をとられてなるものか……!」
御局、あるいは武士、あるいは忍びが熱り立つ。
けれど、毎度懲りずに――
「やっぱりか……!」
「なぜじゃ……!」
「いい加減に……!」
ダメなのだ。
背後の防御が薄い。
――やはり、何かのメッセージのように思えてきた。
「おやすみなさぁい」
腕にすり寄ってくる子どもたちに、
「おやすみ、いい夢見てね」と、さらさらの髪を撫でる。
……よし。次は、セリフを言い終える前に後ろを振り返ろう――そう心に決めて、
(いざ――)
私はまぶたを閉じ、今夜も意識の大海原へと旅立つ。
完🌙
こちらの企画に参加させていただきました🌿
#あなたの旅ショートストーリー
https://note.com/yoshiro2024/n/n1f50a644a0c0
よしまるさん、楽しい企画をありがとうございます。
