削られながら、生きている
人の多い街の中で、
ひとりだけ取り残されたような気がすることがある。
仕事帰りの銀座線、終点浅草。
疲れた夜は、みんなが降りてから、ゆっくり立ち上がった。
誰もいなくなった車両に、
自分の足音だけが、やけに響いた。
東京は、私にとって生きる場所。
好きとか、憧れとか、そういう言葉では全然足りない。
ここは、優しい場所じゃない。
削られるたびに、少しずつ、自分が軽くなっていく。
何を落としたのかも、わからないまま。
部屋で、何度も泣いた夜がある。
鏡の中の腫れた目を指で押さえながら、
今日も「明日で変わるかも」と自分を騙す。
それが、怖かった。
それでも、好きだったんだと思う。
離れはしなかった。
なぜかは、今もわからない。
ただ、ここでしか息ができなかった。
それだけのことかもしれない。
同じ景色を見ているのに、昔とは違って見える。
街が変わったのか、自分が変わったのか。
たぶん、どちらでもある。
削られながら、それでもここにいる。
東京は、何も言わない。
削られた分だけ、ここが深くなった。
それでも、東京が好き。
