見出し画像

【番外編※R18】陽だまりと焦燥

【企画参加作品】① #noteでBL

↓に登場したふたりの、とあるひとコマです。

企画とは無関係に書き始めましたが、テーマが拓真にぴったりな気がしたので参加させていただきました。
よろしくお願いいたします。

※※BL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください※※
【テーマ】 激重感情仄暗不穏ブロマンス~BLでも可
【お題】  視線
【タイトル】陽だまりと焦燥(スペース除き約2,600字)



律 :一度受け入れた相手には乳児並みの信頼感を示す完全受動型。
   スキンシップへの抵抗感は限りなくゼロに近い。
拓真:律の親友。
   自身の空虚さを埋めるために律を取り込もうとしている(本人談)。
直 :律の兄。精神的乳児の弟が心配で、拓真への態度が厳しめ。

【本編未読の方向け】登場人物紹介


「支配したい。おまえの心を、俺だけが」
 俺に望むことを訊かれて、彼は即答した。意味がわからず応えられない俺に、悪い笑顔で言う。
「言ったろ、おまえが思ってるより、俺の欠落は深い。やめろって言われても、やめられないかもよ」

「今、おまえだけ?」
「うん。兄ちゃんが帰ってくるのは大体18:00くらいかな。直帰とか言ってもっと早いこともあるけど」
 遊びにきた拓真は、真っ先に兄の所在を確認した。学校では泰然として見える彼が、困ったように兄のことを訊いてくるのがおかしい。苦手意識は強いようだ。
「なに笑ってんだよ」
 不満そうに言って、俺の頬を両手で押しつぶす。やめさせようと手を掴むと力が緩んだ。そのまま、頬に唇がふれる。
「…律、ここにほくろあんな」
 唇に近いその場所を親指が撫でる。灼けつくような視線。両手は耳から頬までを包んだままだ。こめかみに、瞼に、次々と唇がふれていく。
 右手が顎を持ち上げた。
「…抵抗しないの?」
 吐息のような声。
「別に、嫌ではないから」
 ふぅん?
 そう言って微笑った顔は、何を考えているかわからない。

 遊びにきたと言っても、特にやることはない。思い思いに漫画を読んだりゲームをしたりして、飽きたら動画配信を見る。並んで座って、笑ったり話したりしているうちに、拓真が腕を引いてきた。
「…なに」
「こっち来いよ」
 膝の間に座れと言うことらしい。示されたとおりに移動すると、すぐに後ろから抱きしめられる。拓真は俺の髪に顔を埋めて、深く息を吐いた。
「ちょ…くすぐったい」
 払いのけようとする手を押さえられて動けない。元の体格差と後ろからの抱擁が合わさると無理だ。俺は早々に抵抗を諦めた。
 俺が大人しくなると、拓真はそのまま髪から項、首筋、頬と唇を移動させていく。
 くすぐったいな、とぼんやり考えていると、耳に息がかかり、背中が跳ねた。
「なっ…」
 俺の反応を楽しむように、拓真は耳に唇を当てたまま笑っている。生温かく濡れたものにふれられて、背中を痺れるような浮遊感が走る。
 ウソだろ、と思ううちに、気がついたら床に押し倒されていた。覆いかぶさられて、耳を執拗に舌が這う。
「たくま、ほんとに、やめ…」
「やだ」
 頭がじんと熱く痺れて、次第に視界が滲み出す。背中を電流が走って、拓真の胸にしがみついて耐えるのが精一杯だ。
「超エロい、その顔」
「…ふざけんな…なんだよ急に…」
 ようやく解放された俺の苦情に、拓真がはは、と笑って髪を梳く。怒るとこおかしいだろ、と呟きながら。
「その言い方じゃ、突然じゃなきゃいいってことになるぜ?」
 視線が絡まる。口元に笑みを浮かべた拓真の瞳は暗く光っていて、少しも笑ってはいない。
 別に間違いではない。そもそも耳にはあまりさわられたくない、というのが受け入れられるなら別だけれど、拓真にその気がなければ意味がないからだ。
「…やめろって言ったら嫌だっつったじゃん」
「そりゃ、俺は律にさわりたいからね。でもそれと律の意思は別だろ」
 別、なのだろうか。俺にはそこが良くわからない。
 嫌だけど我慢できる、という程度のことを相手に求められた場合、他の人は拒否するのだろうか。そのうえで、自分も相手も納得する方法をちゃんと探すのだろうか?…少なくとも俺にとっては、それは少し面倒だ。
「俺が言うのもなんだけど、おまえ、さわられることに抵抗なさすぎないか?俺はおまえを恋愛対象としては見てないけど、独占も支配もしたい。…その手段になるなら、他のことも平気でやるよ」
 たぶん怖いことを言われているのだろうけれど、相手を拒否する気がない俺にはあまり深刻に響かない。…きっと、俺の良くないところだ。
「おまえ、俺がそうしたいならそれでもいいかな、って思ってるだろ」
 バレている。
「…だって、別に嫌じゃないし…あ、痛いんならそれは嫌かも」
「そういう問題じゃないと思うけど」
 僅かに躊躇う気配を見せてから、拓真がそっと俺の頬にふれた。
「…受け入れてくれるのは嬉しいけど、律の意思が感じられないことが寂しい」
 心臓を掴まれたような気がした。…こういう顔をさせたくないって、思ってるのに。
 受け入れるだけでは、大切にしていることにならない。彼の意思に沿っているようで、俺の望むことをしたいという彼の真意には沿えないから。
 …他人に一番求めることが、ただ傍にいてくれることである俺にとって、それは結構難しい問題だ。
「それなら…俺は、抱き合うほうがいいな。拓真に抱きしめられるのは気持ちいいし、嬉しい」
 言うと、拓真は眉を下げて笑う。
 彼を大切にするためには、どうやら俺はもっと、俺自身を知らなければならないらしい。
「じゃあ、早速」
「あ、おい。もう耳はやめろよっ」
「えー」
「…どうせなら頭撫でるとかにしろよ。背中でもいい」
「いや、頭はともかく背中は…なんか急に色気ねーな」
 そもそも、俺は別に色気は求めていない。だんだん拓真のやりたいことがわからなくなってきた。
 …俺の望むことをしたいと、思ってくれていたのでは?
「言っただろ、独占も支配も、って。他の誰にも見せない顔、見たいんだよ」
 …それが、おまえの望むことでなせるなら、完璧。
 艶やかな笑みとともに言われて、しばし言葉を失う。なんだかさすがに、俺も少し怖くなってきた。
 あまり感情が動かない俺にとって、拓真に見せたことのない顔は、俺も経験したことのない顔にほぼ等しい。…そうでないとすれば。
「そういう意味では、手っ取り早く泣かせてみたいんだよな」
「…いくらなんでも、そう言われてはいどうぞとは言えねーな」
「まずは要交渉かぁ」
「まずは、ってなんだ」
「え?そりゃ…」
「やっぱいい、言わなくて」
 そんなことを言い合っていると、不意に手を引かれて抱きしめられる。
「抵抗しないの?」
「…なんで。拓真に抱きしめられるの、好きだって言ったじゃん」
 抱きすくめられて顔が見えない。それでも、なんとなくわかる。強く鳴る鼓動が、熱い吐息が。
 こうやって俺を求めることで、彼の心が埋められるのかはわからないけれど。誰かの心に自分が存在していると感じられることは、確かにとても幸せなことだ。
 俺は彼に、それを感じさせているだろうか。…この抱擁がそれを示すなら、いつまでもこうしていたい気がした。




いいなと思ったら応援しよう!