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【SS】星のかけら

数日前から右の瞼が腫れている。
「石が入っているのよ」
彼女はこともなげに言った。
「石が目に入るわけないだろう」
「いいえ、間違いないわ」
彼女の細い指が瞼に触れる。ひんやりとして気持ちがいい。
「この前の星月夜のお祭りで、南十八番の空から小さな星の子がひとつ落ちたの。きっとそれね」
「…星?石じゃなくて?」
彼女はふふ、と微笑う。理解の悪い子どもに向けるように。
「星の子が落ちていくなかで小さく割れて、ひとかけらがあなたの瞼に降ったのよ。…あなたの寝室、西向きの窓があるでしょう」
彼女の真意がわからず、はぁ、とぼんやりとした返事しか返せなかった。なんにせよ、目がこのままでは困る。今日医者に行くつもりだ。
「医者じゃ治せないわよ」
「…なんだって」
「だって入っているのはばい菌じゃなくて石だもの。彼らには病気は治せても、砕けた星のかけらは取り出せない。悪化するだけよ」
それは困った。…入っているのが石(星)という前提で、だが。
「どうすればいいって?」
「放っておけばいずれ星になって自然と抜けるわよ」
「どのくらいで?」
「さぁ。数日か、あるいは数年か」
それは困った。自然治癒に賭けてはいられないようだ。
「それ以外の方法は?」
そうねぇ、と彼女は少し考える。
「わたしが取り出してみようかしら」
「…できるの?」
「たぶんね」
不安しかないが、数年間片目でいるよりましだろう。
「どうすればいい?」
「目を閉じて」
言われるままに目を閉じると、彼女の指が瞼に触れるのを感じた。ひんやりとした、細い指。
その感触の心地よさに眠気を感じた頃、ふっと瞼が軽くなった。
「…取れた、」
目を開くと、彼女の手に、澄明な碧が美しいひとかけらの石があった。
「これが目に?」
「そう。あなたのよ」
石を手渡し、彼女が微笑む。
「…大事に育ててね」

それ以来、目は特に問題なく過ごしている。取り出した(?)石は、箱に綿を敷き詰めて西の窓辺に置いてあった。碧は日に日に深く、かつ透明度を増しているようだ。
「今日は満月ね」
彼女が微笑むように言った。月の光が部屋を満たし、石が一際輝いた瞬間、
ぱりん
小さな音がして、石が割れた。
「…え?」
「産まれたわ」
彼女の声に導かれるように、窓辺を見る。
砕けた石のかけらのなかに、小さな『星』が所在なげに座り込んでいた。
『星』は困ったように部屋を見渡し、…目が合うと、小さな声でないた。
「可愛いわね」
彼女がこちらを見て微笑む。
「大事に育ててあげてね?」
…これは、困った。

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先日読ませていただいた冬野さまの美しいお話に触発されて、初めてファンタジーを書いてみました。
出来はともかく、楽しかったです☆
冬野さま、素敵なご縁をありがとうございました。
(勝手にご紹介して申し訳ございません)

なお、"瞼に石が入った"という設定は、『天体議会』(長野まゆみ)からお借りしました。秋から冬にかけて読みたくなる、昔から大好きな本です。

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