見出し画像

世界最高の主食は何か

副題:トウモロコシという、文明のエネルギー通貨

トウモロコシ四部作第3回

主食とは、口に入れるものではなく、人類が何を循環させて生きているかである。


「世界一の朝食」と呼ばれるものがある。

だが、世界一とは何だろうか。

味なのか、評判なのか、場所なのか、物語なのか。

では、世界最高の主食とは何か。

一番うまいものか。

一番古いものか。

一番多く食べられているものか。

それとも、人類の文明を最も深く支えているものか。

世界一の朝食に神奈川県にある七里ヶ浜のbills(ビルズ)の名が上がることがある。

筆者も一度行ったことがあるがカップルだらけだった。

「なぜ“世界一”という言葉に人は惹かれるのか」

「味ではなく文脈が価値を作る」

では、世界最高の主食はなんだろうか

あるいは 人類が何を循環させて生きているのか

世界最高の主食は何かと聞かれたら
多くの人は米か小麦を思い浮かべるだろう

文化
歴史
宗教
食卓

確かにそれらは人の生活の中心にある

だが ふと思う
主食とは本当に 口に入れるものだけを指すのだろうか

もし
主食を「人類が最も多く依存しているエネルギー源」と定義し直したら
話は少し変わってくる。

栄養学や農業統計という観点から見ると、「主食」としてどれがどれくらいシェアしているかは、世界のカロリー収支を基準に語るのが一番実質的だ。

単なる生産量ではなく、人々が実際にエネルギーとして摂取している割合で見ると、次のような大まかな比率になる(数字はおよその世界平均、統計元の違いで多少前後する)

世界全体のカロリー摂取で見ると、

トウモロコシ(Maize/Corn):約19.5%

米(Rice):約16.5%

小麦(Wheat):約15.0%

この三つで人類の摂取エネルギーの約51%を占めている。

他にも根菜・塊茎類(芋類など):約5.3%

 うち

  タピオカ(キャッサバ):約2.6%
  ジャガイモ:約1.7%
  サツマイモ:約0.6%
  ヤム:約0.4% という推計もある 。

その他の穀物(ソルガム、玄麦、オート麦等)・豆類・バナナ/プランテーンなど:累計で数%(足すと全体で100%になる)

統計の取り方によって順位や比率は変わる。

直接人間が食べるカロリーで見れば、米と小麦の存在感は非常に大きい。

一方、生産量・飼料・燃料・工業利用まで含めて見れば、トウモロコシは別格の存在になる。

そして意外にも、小麦より米のほうがカロリーベースでは人間を養っているのだ。

そしてその中でも
トウモロコシは少し異質だ。

米は主に人が食べる。

小麦はパンになり 文明と結びつく、
芋は飢饉に強く 人を救ってきた。

では トウモロコシは何か。

トウモロコシはすごい

燃料になる。

紙になる。

プラスチックになる。

家畜の餌になる。

人が直接食べなくても、

肉になり、
エネルギーになり、
社会を動かす。

トウモロコシは、
食卓に座る前に
工場と発電所と畜舎を経由する。

ここが決定的に違う。

トウモロコシの本質は、
味でも文化でもない。

変換可能性だ。

太陽光を受け、
炭水化物を作る。

それを
糖に変え、
アルコールに変え、
燃料に変え、
繊維に変え、
脂肪に変え、
最終的に人間のエネルギーに戻す。

トウモロコシは
エネルギーの通貨だ。

しかも
非常に両替しやすい。

だから
トウモロコシは主食である前に
インフラに近い。

人を直接生かすというより
システムを生かす。

資本主義
大量生産
均質化
スケール

トウモロコシは
思想と相性がいい

万能であるがゆえに
どこにも属さない
宗教を持たず
物語を背負わず
ただ黙って変換され続ける。

ここで問いが反転する。

主食とは
何を食べるか ではなく
何を循環させて生きているか ではないのか

もしそうなら
トウモロコシは
人類が炭素をどう扱うかという思想の結晶だ。

トウモロコシが世界最高の主食かどうかは分からない。

だが、

世界で最も多く
世界を支えている作物であることは
ほぼ間違いない

無機質で
匿名で
それでも確実に
この文明の下支えをしている

それが
トウモロコシという存在だ。

つまりトウモロコシは、
太陽エネルギー → 化学エネルギー → 社会インフラ

この変換を一身に引き受けている。

米は人を養い、小麦は文明を語り、芋は飢えを救ってきた。

だがトウモロコシは、食卓の外側で文明そのものを動かしている。

それは、もはや一つの作物ではない。

太陽を糖に変え、糖を燃料に変え、燃料を物流に変え、物流を生活に変える、巨大な変換装置である。

だからトウモロコシは、世界最高の主食かどうかは分からない。

しかし、現代文明が最も深く依存している“見えない主食”であることは、ほとんど疑いようがない。


最終命題


トウモロコシとは、太陽エネルギーを化学エネルギーへ変え、それを食料・飼料・燃料・素材・資本へと両替する、文明のエネルギー通貨である。


関連記事


いいなと思ったら応援しよう!

谷博貴の哲学【フォロバ100】 応援よろしくお願いします!いただいたチップは研究費用に回します。