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右脳回帰してガッカリしてる

夫と死別して、恐ろしい思考が止まらなくなった。それはわたしを恐怖のドン底に突き落とす思考で、わたしはその思考に支配され翻弄された。その頃のわたしは思考を自分で止めることができなかった。その恐ろしいぐるぐる思考から逃げることに必死だった。

そしてあるとき、気づいた。

思考はわたしじゃない

ということに。



そんなときにネドじゅんさんに出会った。


思考に支配されていたわたしにとって、思考を止められるというのは画期的だった。
わたしは必死になってエレベーターの呼吸をやりまくった。
犬の散歩をしながら、お風呂のなかで、何度も何度もやった。最初はうまくできなかったけど、続けるうちにエレベーターがからだの中を上下する感覚を掴めるようになってきた。




それから2年。

わたしはついに右脳回帰した。

したんだと思う。


ぐるぐる思考はなくなり、たとえ思考が出てきても、それはもはや影響力を持たなかった。
気づいたらすぐに止めることができるようになった。ドラマにも入らなくなった。まるでコントのように思考にツッコミを入れている自分がいる。

そして思考のない空白を感じられる時間がふえた。ただ美しい景色だけが流れていくシーンとした感じ。その静寂を味わえるようになった。

からだの中からうれしさが込み上げてくる。
なんてことのない日常がしあわせでしあわせで、今あるすべてがありがたく感じる。

ここがゴールだった。
わたしが来たかったのはこの場所だった。

うれしさと温かさがじーんと沁みる感じが込みあげてくる。


ああ、ここなんだ。
これなんだ。

コレなのかーーーーーーーーーーーーーーーーーー‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

マジかー、
コレなのか‥‥
思ってたんと違う




わたしはずっと苦しくて、その苦しみから抜け出すために思考を止めたかった。

親から否定されて育ったわたしの頭の中は、自分を否定する言葉でいっぱいだった。
もっとがんばって、努力しまくって、理想の自分になりたかった。

そんな自分を変えるために、自分の内面と真摯に向き合い、傷を癒し、内なる子どもを育てなおし、エレベーターの呼吸を必死になってやった。

右脳回帰したかった。
右脳回帰すれば、自分を責める思考はなくなる。きっとその頃には、ネドじゅんさんみたいな立派な人になっているのだろうと心のどこかで思っていた。

ネドじゅんさんみたいに、思慮深く謙虚でけっして傲らず、物腰柔らかで、でも深みと説得力があって信頼できる、あんなふうになれるんだと思っていた。

右脳回帰すれば、ネドじゅんさんみたいに大勢のまえで緊張せずに上手に落ち着いてお話しできるようになるのだと思っていた。


でも違った。

わたしはわたしのままだった。
なんならより、素のわたしになった。

人前で話すのはいまだに緊張するし、全然上手にもならない。思慮深くも謙虚でもない。

ネドさんが謙虚でお話が上手なのは、もともとネドさんが謙虚でお話が上手な人だったのだ。

「右脳回帰したら、素晴らしい人になるわけじゃないです。なんも変わりません。そのまんまです」

そう繰り返しネドさんはおっしゃっていたけれど、ほんとにそうだった。

わたしは本当にわたしのまま、さらに飾らない素のわたしになった。ポンコツさがポンコツのまま現れていて、そのことに否定を感じなくなった。ポンコツのまま愛されることを受け入れた。

自分を否定する言葉が消えて、そのままの自分でいられるようになった。

いまだに話すことは苦手だけれど、そんな自分が愛おしいと思えるようになった。

それはわたしが思い描いていた未来とはまったく異なるもので、大きな安堵感に包まれている一方で、小さくガッカリしている自分もいる。

そうはいっても、もう少しマシな自分になっているかと思ったよ。
まさか、こんなにも「そのまんま」だなんて‥‥


「長くて暗いトンネルを抜けたら、スコットランドの平原みたいな素晴らしい景色が広がっているのかと思ったら、散らかったままのいつもの自分の家だった」みたいな感じ。

でも散らかったままのそこが、温かくて居心地よくて心からくつろげる場所になったような感じ。


そんな理想とのギャップに戸惑いつつも、やはりうれしさをじんわりと感じている。

それは「いつかどこか」にあるものじゃなかった。
それは「今ここ」で選択できるものだったんだよ。

わたしが選んだから、いまこうして静寂の中にいられる。この静けさを、温かさを、存分に味わおう。わたしはこれから、ずっとここにいる。




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