駒澤大学に聞く、職員の 9 割以上が自走して AI を楽しむ組織のつくり方
こんにちは、Google の AI「Gemini(ジェミニ)」の公式 note 編集部です。
生成 AI は教育の分野でも様々な形で活用が進んでいます。その中でも、関心の高いテーマのひとつが「大学における業務 DX」です。
そこで、今回は全国の大学での導入事例から、Gemini や Gemini Notebook (旧称:NotebookLM) を職員業務に活用されている、駒澤大学の AI 推進プロジェクト「K-AI」についてご紹介します。
本プロジェクトは同大学の職員向けの AI 推進活動で、そのひとつとして 2025 年 4 月から「Google AI Pro for Education」を全職員に導入しました。
半年後の 2025 年 10 月には職員の満足度が 9 割を超え、業務に大きな変化を起こしています。
お話をうかがったのは、AI 活用を推進してきた駒澤大学 学長室 学長企画課 学長戦略企画係の武田享也さんと、駒澤大学 総合情報センター 情報ネットワーク課 アプリケーション係の山村僚さんのお二人です。
1 年間で月間 90 %のアクティブ率を達成した背景から、職員が実践している Gemini 活用事例、さらには、AI 分析による入試広報のマーケティングサポートまで、駒澤大学での取り組みをご紹介します。
※Gemini を含む生成 AI の利用に関する説明は例示を目的としています。実際の回答結果については、ご自身で正確性をご確認いただくようお願いいたします。
1 万 4,700 人の学生を抱える大学の課題に Gemini で挑む
東京都世田谷区にキャンパスを構える駒澤大学は、7 学部 17 学科を擁する文系中心の総合大学です。
自他協創を目指し、2028 年 4 月には、グローバル・メディア・スタディーズ学部に文理融合の「メディア・インフォマティクス学科(仮称)」の新設を構想するなど、先端 IT 人材の育成にも注力しています。

学生数は大学院生を含めて約 1 万 4,700 人に上りますが、対する職員数は約 200 名、教員数は約 340 名という体制で運営されています。
「職員に対しての学生の数が非常に多く、職員一人ひとりの業務負担が、他大学に比べて大きいという構造的な課題がありました」と話すのは、2024 年から「K-AI」プロジェクトを牽引してきた駒澤大学の武田享也さんです。
さらに、2026 年度から AI 推進を担当している山村さんも、「大学に求められる機能が増えていく中で、教職員の業務が逼迫し、リソースが不足する中でいかに業務工数を削減するかが課題だった」と話しています。
そこで、もともと駒澤大学で導入されていた Google Workspace for Education の環境を活かし、「安全かつシームレスに AI を活用できる」として、「Gemini for Education」が採用されました。
プロジェクトが目指したのは、教職員が AI を使うことを当たり前にする環境づくりです。
導入から 1 年経った 2026 年 4 月時点で、職員の月間アクティブユーザー(MAU)は 9 割超えに達しました。
「当初の『当たり前のように AI を使う』という目標は実現できていると感じている」と山村さんも、その浸透ぶりを実感しているそうです。
さらに、この急伸の背景について「Google Workspace for Education に Gemini が組み込まれたことで、メールやドライブから直感的に使えるようになり、敷居が圧倒的に下がったことが大きいです」と分析します。
では、具体的にどのような活用をされているのか。実際の職員の方のエピソードとともに事例をご紹介します。
業務を大幅に時間削減!「弱みを補完するパートナー」としての Gemini
現在、駒澤大学では、文書作成、メール対応といった基本業務から、ウェブ制作、データ分析、業務自動化まで、様々な大学業務で Gemini や
Gemini Notebook が活用されています。
その中でも特徴的なのが、AI が単なる効率化ツールを超えて、職員の「苦手」を補ってくれる頼れるパートナーになっている点です。
「文章作成」の心理的ハードルを下げる
武田さん自身が、最も効果を感じているのが、日常的な文章・メール作成における活用です。
「私は文章をゼロからつくるのが苦手で時間がかかっていました。しかし、その『ゼロからイチ』の部分を Gemini がつくってくれるおかげで、一歩目のハードルが大きく下がり、どんどん資料をつくろうという前向きな気持ちになれました」と武田さんは語ります。
また、日常的なメール対応でも、1 通あたり 5 分かかっていた作業が、今では 1 分で済むようになりました。「宛名の『様』を漢字ではなくひらがなにする」という武田さんの細かなこだわりまで、Gemini がしっかり反映してくれるそうです。
導入当初の試算でも、職員一人あたり年間で約 126 時間の削減効果が見込まれていました。現在では、Google Workspace for Education に Gemini が組み込まれたことで、メール作業がより直感的に行えるようになり、当時をさらに上回る圧倒的な時短につながっています。

時間のかかるスライド作成を 5 分で
山村さんは、スライド作成で特に恩恵を感じたそうです。
「これまでスライド作成の際、細かいデザインや文字の配置などにこだわり、非常に時間がかかってしまうことが課題でした。
しかし、Gemini にドラフトの構成案と、Google ドライブに入れている参考資料を読み込ませるだけで、5 分もしないうちに 8 割完成したスライド構成案をつくってくれます。
自分の弱みを補完してくれる良いパートナーを得たことで、本来の提案業務に、より積極的に取り組めるようになりました」と、自身の変化を教えてくれました。
組織の知識を AI に集約!教職員の「わからない」をなくす Gemini Notebook 活用術
メール対応などの個人活用が浸透する一方で、駒澤大学では大学組織特有の課題を解決するために、Gemini Notebook を活用した業務サポート環境の構築も進んでいます。
その代表例が、学内の「研究費ルール」に関する問い合わせ対応の自動化です。教員の研究費にまつわる学内ルールは非常に複雑で、年々ルールブックが分厚くなっていくという課題を抱えていました。
そこで、AI 推進プロジェクト活動の一環として Gemini Notebook を使った教員向けの「チャットボット Q&A」を構築しました。
「当初はハルシネーションの懸念や、先生方からの反発がないか心配していました。
しかし、Google のデータポリシーに基づき『機密情報は保護され、二次学習もされない安全な環境であること』を全面的にプッシュして展開したところ、反発はまったくありませんでした。
ベータ版を経て正式運用に切り替えてからは、逆に利用率が伸びるという嬉しい悲鳴が上がっています」と山村さんは振り返ります。
このチャットボットは、正式運用を開始した 4 月からほぼ毎日利用されており、6 月までの時点で延べ 215 人、400 件以上の質問がされているほど、教員の疑問解決ツールとして定着しています。
さらに、Gemini Notebook は学内の各種委員会におけるナレッジシェアでも重宝されています。
大学の委員会は委員任期が 2 年程度と短く、頻繁にメンバーが入れ替わります。そのため、新しく就任した委員が、長年継続している重い議題の資料や議事録を読んでも、「これまでの文脈が分からない」という問題が起きていました。
この課題に対し、山村さんは担当する一部の委員会で、過去 3 年分の膨大な議事録や関連資料を Gemini Notebook に読み込ませて共有する運用を試験的に導入しました。
これにより、委員が事前に過去の経緯や情報を Gemini Notebook で確認した上で、本質的な議論へスムーズに参加することが期待されます。
一方で、会議を運営し質問を受ける職員側も Gemini Notebook を活用しています。これまでは委員会や会議などの場で質問が出た際、膨大な資料から該当箇所を探し出して回答するのに時間がかかっていました。
しかし、事前に議題に合わせた規程や資料を Gemini Notebook に入れておくことで、その場で素早く検索し、スムーズに回答できるようになったそうです。
「長年の勘」からデータ重視へ!AI で進化する入試広報
大学ならではの高度な活用例が、入試広報における Gemini の分析サポートです。
高校への訪問といった広報活動は、担当者個人の経験や「長年の勘」に頼る部分が多くありました。そこで同大学が実証実験(PoC)として進めているのが、入試広報部門が持つデータを活用したデータ重視のマーケティングです。
本来、膨大なデータを統合して分析を行うのは専門知識が必要で、一般の事務職員にとっては非常にハードルが高い作業でした。
そこで同大学は、データの蓄積・可視化を行う BigQuery や Looker Studio に Gemini Enterprise を掛け合わせ、難しいシステム操作なしで高度なデータ分析を行える仕組みを構築しました。
武田さんはこれを「データ分析・データ活用の民主化」と称し、「分析をもとに人間が判断を行い、次のアクションにつなげることができます。
こうした取り組みによって、誰もがより有効な業務を行える大学環境を目指しています」と話しています。
たとえば、宮城県の高校データを分析する際、Gemini に「駒澤大学への出願者を大幅増する期待値が高い高校をリストアップして」と指示を出します。
すると Gemini は、「競合大学への出願者は多いが、駒澤大学への出願者が少ない高校」をポテンシャルが高いと定義し、偏差値や学校の規模などを総合的に判断して、アプローチすべき高校を可視化したリストを自動生成してくれます。
「分析という専門的でハードルの高い作業は Gemini に任せ、人間はその結果を見て『どこにどうアプローチするか』という次のアクションを判断する。誰もがデータに基づいた有効な業務を行える環境づくりを進めています」(武田さん)
「やらされる」から「自走する」へ。AI を楽しむ組織文化
「AI を使わない層」をどう巻き込むかは、多くの組織の課題です。
そこで駒澤大学では、学内向けナレッジプラットフォーム「Gemini Lab」を開設。
「メール時間の短縮方法」や「らくらくスライド作成」「手入力の自動化」など、業務に役立つ活用事例やプロンプトを自由に投稿し、共有できるサイトを提供しています。

武田さんによると、最初は反応がなく閲覧されるだけだった投稿に、徐々に「いいね」ボタンが押されるようになり、コメントもつくようになっていったそうです。
「AI を単なる流行りとして冷めた目で見るのではなく、自分ごととして捉え、職員自身が主体的に新しい使い方を見つけて共有するようになっています」と、職員の変化を話しています。

現在、職員からの声としては、機能改善などの前向きな提案がほとんどで、職員が自走して AI の活用を楽しむ文化が、高い利用率を支える基盤となっています。
AI で創出した時間を「人にしかできない学生支援」へ
現在、駒澤大学では職員にくわえて、教員への AI Pro ライセンス展開を検討しています。しかし、プロジェクトが見据えるゴールは「教職員の業務の効率化」だけではありません。
「AI が得意なのは、端的な答えを簡潔に出すことです。しかし、窓口に相談に来る学生は千差万別な背景を抱えています。そこは AI ではなく、人がしっかりと話を聴き、一人ひとりに寄り添って対応すべき領域です」と山村さんは話してくれました。
武田さんも「大学として一番大事にしなければいけないのは学生です。我々がやらなくて済む業務をどんどん AI に移し、そこで創出できた時間を『学生のサポート』に割いていく。人がやるべき業務に集中できる環境をつくることが、私たちの目指す未来です」と、ビジョンを語ってくれました。
駒澤大学の事例は、AI が単なる時短ツールではなく、人の弱みを補い、「人との向き合い」の時間を生み出すための、心強いパートナーになり得ることを示しています。
効率化のその先にある「人がやるべき教育や支援の充実」を見据えた同大学の挑戦は、AI 時代における新しい大学運営のモデルケースと言えるでしょう。
今回ご紹介した「Google Workspace for Education」の詳細は、以下のサイトをご参照ください。Gemini や Gemini Notebook の基礎知識から認定資格試験の対策まで、オンデマンドで体系的に学べる「Google AI オンライン講座」もぜひご利用ください。
▶ Google for Education 公式ウェブサイト
▶ Google for Education ラーニング センター
▶ Google for Education 認定資格試験
▶ Google AI オンライン講座
