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【映画感想文】『フロム・ダスク・ティル・ドーン』なぜ後半を“許せる”のか?

※この記事を読んでいるような人にそんな人はいないと思われるが、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』…?いったいどういう映画なんだろう?となるような方はこんな記事なんか読まずブラウザバックしてさっさと配信かなんかで本編を視聴すべきだ。とにかくそういう映画なのである。

現在、早稲田松竹にて『フロム・ダスク・ティル・ドーン』がレイトショーにて上映されている。
おそらく二本立て作品の内の一本である『罪人たち』のオマージュ元であるが故のチョイスなのだろう。
まあその『罪人たち』はくだらない映画だったのだが……しかし『フロム・ダスク・ティル・ドーン』はそれなりに面白かった記憶がある。

監督はロバート・ロドリゲス、脚本はクエンティン・タランティーノ主演ジョージ・クルーニー……とこれが今考えればなかなか豪華な座組。しかし内容はそれを感じさせないB級志向……というのが僕が覚えている映画の雰囲気である。配信かなんかで観たんだと思うのだが。
しかしそれ以上は特に印象に残っておらず、このリバイバル上映の話を見つけた時も行くつもりはなかった。
しかしまあ今週の観たい映画がどれも混雑の極み、それもあって予定がズレにズレまくり、プランAからのB、CD超えてEみたいな感じなのだが急遽行くことにしたのだが……
これが劇場で観たら記憶の5倍くらい面白かったのである。

各地で強盗と殺人を繰り返している凶悪犯であるゲッコー兄弟は逃げ込んだダイナーにてたまたま隣の部屋にいた一家を人質に取りメキシコ国境を目指すこととなる……

というのが“前半”の物語である。
まずこの前半部分からなかなかの面白さである。
まず何と言っても乾いた画づくりが良い。アメリカの荒野を舞台にいかにもロードムービーという感じの雰囲気だ。
話法はいかにもタランティーノ然とした感じだ。冒頭から場面ごとにツイストを用意し、暴力的でありながらも同時にダラっとした会話も多い。
しかし今作はあくまでロドリゲス監督作品である。タランティーノ映画のようなじっくりとした空気はなく、あくまで娯楽映画的なテンポや画づくりが保たれている。
ある意味で最良のバランスなのでは?とすら思ってしまう心地よさだ。内容は全く心地よくないが……

まあとにかく容赦の無さが印象的な映画だ。
主人公兄弟が冒頭から特に罪の無さそうな人間をいたぶりまくる。そこにいかにも共感を呼ぶためのバランス取りのための描写など存在しない。
特にタランティーノ演じるリッチーの不快感は凄まじく、その容赦の無さが良い映画だ。ヤクをやらない良いヤクザ、みたいな事にはしないのだ。

特に良いのが冒頭のシークエンスだ。
ここではいかにもタランティーノ然としたツイストに会話、ロドリゲス的なテンポが詰まっており、さらには兄弟のキャラクター性も伝わるようになっている。お手本のようなシークエンスである。

そんなクズ兄弟にこれまたなんの罪もない一家が巻き込まれ、逃亡していくロードムービーとなるのである。
この妙なロードムービーがまた面白いのだ。
序盤で描かれた兄弟のキャラクター性故にこの一家がどうなってしまうのかハラハラしてしまうし、一つ一つの展開づくりも巧みだし、そこからストックホルム症候群めいた友情が生まれていく様も面白い。

さてそんなこんなでこの妙な集団はメキシコのとあるクラブに行き着く。
ここがなかなか猥雑の極みという感じで、前半の乾いた荒野から一転雰囲気が変わるのが良いのだが、まあ問題はここから。
実はそのクラブは……吸血鬼によって運営された殺人クラブだったのである!!!!!

は!?!?!?
となるのが正しい反応だろう。
が……まあ、リアルタイムで観てない人間の大多数がそうだろうが、まあそういう映画であることは前もって知っていたのでなるほどここでか〜というのが正直な反応であった。
まあつまり前半は犯罪映画なのに後半で急に吸血鬼と戦う映画になるのである。犯罪ロードムービーとしてちゃんと面白かったのにも関わらずだ。

しかしまあこのジャンル転換に関して、改めて観て伏線のようなものが一切無いのに改めて驚かされた。普通なら何かしら入れるもんだからだ。
だが、それでも何故かズルされた感覚もないし、しっかりと面白いのである。
これは不思議だ……一体なぜなんだろう?と考えた時に思いつくのが、今作が「ロードムービー」であるということだ。

というのもロードムービーというのはシーンごとの分離が許される映画だからである。
まあ分かりやすく言えば、普通の映画なら後半で急に登場人物が増えるのは良くないことなので序盤から出しておくものだが、ロードムービーであれば旅の後半に新しく出会う人がいてもおかしくないだろう。さらにさまざまな地を移動するので、シークエンスごとの連続性も弱くなるものである。
その性質を考えれば、今作はあくまで旅の途中でたまたま吸血鬼に出会っただけの犯罪ロードムービーであると考えることができるのだ。
そんなもんとたまたま出会うなよ!と思いつつ、やはり最高のアイディアであると言えるし、ジャンルの勘所を分かってるなと改めて感心させられる。

さて、この吸血鬼パートもちゃんと面白く作られている。
アクションの羅列はバリエーション豊かで見応えがある。倒し方が何種類もあって、全く飽きさせないのだ。それにゴア描写もバッチリだ。絶望感のある展開づくりも良い。クラブの猥雑さも、良い雰囲気作りとなっている。ここら辺はロドリゲスらしい娯楽性だと言えるだろう。
そして何より良いのが一家の父親が元神父であるという設定を活かした展開だ。前半では一体どのようにして信仰を取り戻すのだろうか?と思われた元神父が、まさか吸血鬼に出会うことで復活するとは……予想外すぎるが筋は通っている。もしかしたら唯一の伏線か!?(いや違うか…)
まあ地獄を見て逆説的に天国を信じるという展開はすごく良いなと再見して思ったところである。

本来なら100分まるまるかけてやるようなパートを後半に圧縮しているが故のテンポの良さもあるだろう。
その短い尺の中に、オリジナルの武器で武装して暴れまくるケレンも入れ込むのだから最高だ。

まあそういう訳で改めて観たら最高に面白い映画だったという感想である。こういうことがあるから映画を観るのが終わらない。

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