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編み物の世界を知るためのおすすめ本11選

近年、「手を動かす時間」を暮らしに取り戻したいという人が増え、編み物はその代表格として静かなブームが続いています。スマートフォンから少し離れ、一段ずつ目を数えながら過ごす時間には、忙しい日々の中では得がたい落ち着きがあります。

この記事は、これから編み物を始めてみたい方はもちろん、基礎は覚えたけれど次の一冊に迷っている方、あるいは眺めているだけで幸せになれる作品集を探している方に向けて書きました。読み終えるころには、自分の「今」にちょうど合う一冊が見つかっているはずです。棚から順に、ゆっくりご紹介していきますね。


まずはここから — 編み物のはじめの一歩

道具の持ち方も、記号の読み方もまだこれから。そんな方に安心して開いていただけるグループです。写真とイラストで一段ずつ導いてくれる基礎書と、小さな作品で「編めた」という達成感を味わえる本を集めました。最初の一冊選びで、その後の楽しさが大きく変わります。

『イチバン親切なかぎ針編みの教科書』せばたやすこ

編み物を始めるとき、多くの人が最初に手に取るのがかぎ針です。一本の針と一玉の毛糸から始められる手軽さがあり、この本はそのかぎ針編みを、まさに手取り足取りといえる丁寧さで案内してくれます。著者のせばたやすこさんは初心者への配慮に定評があり、つまずきやすいポイントをあらかじめ想定して解説を組み立てているのが特徴です。

本書の魅力は、なんといっても写真の大きさと工程の細かさにあります。鎖編みや細編みといった基本の目を、指の動きが見えるほどの大きな写真で示してくれるので、「本を見ながらでも同じ形にならない」という初心者ならではの悩みに寄り添ってくれます。編み目記号の事典としても使えるため、少し編めるようになったあとも長く手元に置ける一冊です。

まったく編んだことがなく、何から始めればいいか分からないという方に、まず開いていただきたい本です。動画や教室に通う前に、まずは自分のペースで基礎を固めたい方の心強い伴走者になってくれるはずです。

『イチバン親切な棒針編みの教科書』せばたやすこ

かぎ針の次に、あるいは最初から挑戦してみたいのが棒針編みです。セーターやマフラーといった「編み物らしい」作品の多くは棒針で生まれます。本書は先ほどのかぎ針版の姉妹編にあたり、同じ親切な語り口で棒針編みの世界へと導いてくれます。目の作り方から模様の編み込みまで、段階を追って学べる構成です。

棒針編みは二本の針に目を移しながら進めるため、最初は手がこわばりがちですが、本書は基本編・応用編・事典編・作品編と役割ごとに章が分かれており、今の自分に必要なページへすぐたどり着けます。編み目記号と編み方を一覧できる事典部分は、編んでいる途中で分からなくなったときの辞書として本当に頼りになります。

かぎ針に慣れて次のステップへ進みたい方、あるいはどうしてもセーターを編んでみたいという方におすすめです。一冊やりきれば、編み図を見て自分で作品を選べる力が自然と身についていきます。

『編みものこもの』三國万里子

基礎を学びながら、できれば可愛いものを作りたい。そんなわがままに応えてくれるのがこの本です。著者の三國万里子さんは今や編み物界で絶大な人気を誇る作家ですが、本書は洋書からニットを独学したという著者らしい、伝統的なテクニックがぎゅっと詰まった小物集になっています。北欧風のミトンやどんぐり型のキャップ、ベレー帽など、手のひらサイズの愛らしい作品が並びます。

小物のよいところは、大きな作品に比べて完成までが早く、途中で挫折しにくいことです。本書は一つひとつの作品にていねいな解説がついており、少しずつ技術を積み上げながら「作れた」という喜びを何度も味わえます。眺めているだけでも、次はどれを編もうかと心が弾んでくるはずです。

セーターのような大物にはまだ自信がないけれど、実用的で人に見せたくなるものを作りたいという方にぴったりです。プレゼントにも喜ばれる作品が多く、誰かの顔を思い浮かべながら編む時間もまた格別です。

暮らしに寄り添うニット — 作りたくなる作品集

基礎を終えて「さあ、何か作ろう」と思ったときに開きたい作品集です。日常の中で実際に身につけられる服や小物を中心に、長く愛用できるデザインを選びました。作りたいものから逆算して技術を伸ばしていく、そんな学び方を支えてくれる本たちです。

『風工房の定番ニット』風工房

人気ニット作家の風工房さんが「丁寧に編んで、長く着たい」をコンセプトに提案する、大人のための作品集です。流行に左右されないエイジレスなセーターやベスト、小物が並び、シンプルでありながら着るほどに愛着がわくデザインが揃っています。派手さはありませんが、だからこそ何年も着続けられる、そんな確かさを感じさせる一冊です。

本書は作品が編み方のグループごとに整理されているのが特徴で、表目と裏目の組み合わせ、ケーブルなどの交差やねじり目、すべり目と引き上げ目という順に難易度が上がっていきます。まずは易しい作品から始めて、徐々に技術を広げていける構成になっているため、実用書でありながら学びの階段としても優秀です。上質な糸選びの参考にもなります。

自分のために、あるいは大切な人のために、飽きずに長く着られる一着を編みたい方におすすめです。トレンドを追うのではなく、自分の定番を持ちたいと考える方の本棚にそっと加わってくれる本です。

『手あみのすべて 秘訣と要点「赤本」』日本ヴォーグ社

編み物愛好家のあいだで長年「赤本」の愛称で親しまれてきた、まさに名著と呼ぶにふさわしい一冊です。作品を作るための本というより、きれいに仕上げるための知恵を凝縮した技術書で、作り目のとり方から素材と編地の選び方まで、上達に欠かせない要点が丁寧にまとめられています。復刻版も出るほど、世代を超えて支持されてきました。

本書の真価は、「なぜそうするのか」まで踏み込んで教えてくれる点にあります。同じセーターでも、作り目やとじはぎの仕方ひとつで仕上がりの美しさは大きく変わります。そうした差を生む細部の技を、豊富な図とともに解説してくれるので、独学ではなかなか気づけない領域へ一歩踏み込めます。読むたびに新しい発見がある、そんな奥行きを持った本です。

一通り編めるようになったけれど、仕上がりにもう一歩の美しさが欲しいと感じている方に強くおすすめします。腰を据えてじっくり技術を磨きたい方にとって、手元に置いておく価値のある一冊です。

模様と伝統を味わう — 技法を深める本

ケーブルや配色編みなど、特定の技法や各地の伝統模様を掘り下げたい方のためのグループです。編み物を単なる手芸ではなく、受け継がれてきた「技」として味わう楽しさに触れられます。腕に覚えのある方ほど、心が躍る棚かもしれません。

『シェットランド・レース 棒針で編む伝統のレース』嶋田俊之

スコットランドのシェットランド諸島に伝わる、羽のように繊細で優雅な透かし編みのレースを紹介した専門書です。著者の嶋田俊之さんは本場の伝統に深く通じた作家で、その知識と美意識が一冊を貫いています。透かし模様が織りなす軽やかな作品は、ニットの中でも究極の域といえるもので、見ているだけでため息が出るほどの美しさです。

本書のうれしいところは、伝統をふまえながらも初心者が挑戦できる作品から始まっている点です。少し太い糸を使えば冬のショールとして、細い糸で編めば本来の繊細なレースとして楽しめるよう、幅を持たせた作品構成になっています。難しそうに見える透かし編みが、順を追えば手の届くものだと実感させてくれます。

配色や模様の編み込みに慣れ、次は透かし編みという新しい世界に踏み出したい方におすすめです。完成した一枚は一生ものになり得る、そんな挑戦しがいのある本です。

『志田ひとみのクチュール・アレンジ』志田ひとみ

オリジナルの優美な編み模様で多くのファンを魅了してきた、人気作家の志田ひとみさんによる作品集です。編み物ファンのバイブルともいえる雑誌『毛糸だま』で発表されてきたデザインを軸に、まるで洋服のクチュールのように計算され尽くした模様が並びます。編み地そのものが主役になる、そんな贅沢な一冊です。

志田さんの模様は、複数の技法を組み合わせて立体的な表情を生み出すところに真骨頂があります。ケーブルや透かし、玉編みなどが緻密に配置され、一枚の編み地が芸術作品のような深みを帯びていきます。編んでいる最中も、模様が少しずつ立ち上がっていく過程そのものが大きな喜びになるはずです。

基本的な模様編みには慣れ、もっと表現の幅を広げたい、人とは違う一着を編みたいという方にぴったりです。じっくり時間をかけて、自分だけの美しい編み地と向き合いたい方の意欲に応えてくれます。

北欧と手仕事を愉しむ

眺めるだけでも心が躍る、デザイン性と技法の面白さで選んだグループです。北欧の手仕事は色づかいやモチーフに独特のあたたかさがあり、インスピレーションの源として多くの編み手を魅了してきました。作る楽しさと見る楽しさ、その両方を味わえる棚です。

『復刻版 フェアアイル・ニッティング シェットランドに出会って』佐藤ちひろ

スコットランドのフェア島に由来する伝統的な配色編み、フェアアイルを紹介した一冊です。著者の佐藤ちひろさんは実際にシェットランドを訪れ、その風土や人々との交流を通してフェアアイルの魅力に深く魅せられた作家です。伝統的なパターンを大切にしながら、新しい配色を取り入れた作品は、古さと新しさが同居する独特の美しさを放っています。

本書には、ダイス・パターンやオーエックスオー・パターンといった伝統模様の解説とともに、著者が撮影した現地の写真やエッセイも織り込まれています。技法書でありながら、フェアアイルという文化そのものを旅するように味わえる構成が魅力です。細かな模様も、色が次々に変わっていくため編んでいて飽きることがありません。

配色編みに興味がある方はもちろん、北欧やスコットランドの手仕事の背景ごと楽しみたい方におすすめです。眺めているだけでも、遠い島の風景に思いを馳せられる一冊です。

『ボスニアンクロッシェのこもの 北欧のかわいい手編みテクニック』帯刀貴子

北欧に伝わる手編み技法「ボスニアン・クロッシェ」を、日本語で本格的に紹介した貴重な一冊です。著者の帯刀貴子さんが、フラットフックと呼ばれる平たいかぎ針を使った独特の編み方を、基礎からていねいに手ほどきしてくれます。仕上がる編み地は密でしっかりしており、一般的なかぎ針編みとはひと味違う表情が生まれます。

本書には、小物や靴下など二十点ほどの作品が収められており、いずれも北欧らしい素朴であたたかな雰囲気をまとっています。写真つきの詳しい工程解説があるため、耳慣れない技法でありながら初心者でも安心して取り組めるのがうれしいところです。見慣れない編み方に触れると、編み物の世界の広さをあらためて実感します。

いつものかぎ針編みに少しマンネリを感じている方や、珍しい技法に挑戦して手仕事の引き出しを増やしたい方におすすめです。北欧の暮らしに息づく手仕事の温もりを、指先から感じられる本です。

編み物を「読む」 — 言葉で味わう手仕事

手を動かすだけでなく、編み物という営みそのものを言葉で味わう本を集めました。作り手の思いや半生に触れると、次に針を持つときの気持ちが少し変わってきます。糸と針から少し離れて、心で編み物を感じたいときにおすすめの棚です。

『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』三國万里子

人気ニットデザイナーの三國万里子さんが、自らの半生をつづったエッセイ集です。作品集とは異なり、ここにあるのは編み図ではなく言葉です。傷つきながらも一歩ずつ進み、やがてニットデザイナーとなっていった著者の歩みが、静かで誠実な文章でつづられています。詩人からも称賛された文才が、隅々まで行き渡った一冊です。

読み進めるうちに不思議なことが起こります。著者の思い出をたどっているはずなのに、いつのまにか読者自身の「あの頃」がよみがえってくるのです。編み物が人生の折々にどう寄り添ってきたか、その語りは手仕事を愛するすべての人の胸に静かに響きます。編むという行為が、単なる趣味を超えて自分を形づくっていく過程が丁寧に描かれています。

編み物が好きな方はもちろん、何かを地道に続けることの意味を考えたいすべての人におすすめです。針を休めた夜、あたたかい飲み物とともにゆっくり読みたい、そんな滋味深い一冊です。

『毛糸だま 2025年秋号 vol.207』日本ヴォーグ社

最後にご紹介するのは、書籍ではなく季刊のムック誌ですが、編み物を語るうえで外せない存在です。長年にわたり編み手たちのバイブルであり続けてきた雑誌で、毎号その季節のトレンドや作家たちの新作をたっぷり味わえます。ページをめくること自体が、編み物という文化の「今」を読むことにほかなりません。

この号の巻頭特集は「ノルディックヨーク」。流行の続く丸ヨークを中心に、グラフィカルでおしゃれな配色の編み込みニットが並びます。とじはぎのない編みやすい構造の作品も紹介されており、眺めて楽しむだけでなく、実際に編みたくなる作品にもきっと出会えます。多彩な作家の個性が一冊に集まっているのも雑誌ならではの魅力です。

最新の流行を知りたい方、さまざまな作家の作品を横断的に見て刺激を受けたい方におすすめです。一冊手に取れば、編み物の世界がいかに豊かで移ろい続けているかを肌で感じられるはずです。

おわりに

こうして棚を眺めてみると、編み物という手仕事の懐の深さにあらためて気づかされます。一本の針と一玉の毛糸から始まる営みは、実用の技であると同時に、遠い島の伝統や作り手の人生とつながる文化でもあります。一段ずつ目を数える静かな時間の向こうには、想像していたよりもずっと広い世界が広がっているのです。

この記事が、あなたと一冊の本との出会いのきっかけになればとてもうれしいです。読んでくださってありがとうございました。楽しめていただけたら、ぜひ「スキ」で教えてくださいね。

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