【漫画原作】メメンタオ ~女道士とキョンシー少女~【連載版脚本】#2
■とある農家の一室(夜)
ベッドの上、ぐっすり眠っている老人。
何者かの影が、老人に近づく。
老人、気配に気づいて目を覚ます。
目の前には、死に装束に身を包み、牙を剥いたキョンシーが。
額に符を貼っており、暗さで顔はよく見えない。
老人「(慌てず)そうか……もう儂の番か」
キョンシーの尖った爪が、老人の首に迫る。
瞬間、部屋の扉が開く。
そこには、銃を構えたルオが。
後ろにメイファとリウの姿もある。
ルオ「おーっと、ギリギリぃ!」
ルオ、間髪入れず銃を撃つ。
銃口から放たれたのは、弾丸ではなく円形の銭。
腹に衝撃を受けたキョンシー、
壁をぶち破って屋外へと吹っ飛んでいく。
ルオ「ち、トドメはさせてねーな」
リウ「何それ、拳銃じゃないの……?」
ルオ「浄めた銭を撃ち出す『銭銃<センガン>』だ。勿体ねーんだこれが、とほほ」
ルオ、懐から銭の束を取り出し銃に装填。
リウ、老人に駆け寄って。
リウ「おじいさん、怪我してない?」
老人「(虚しそう)余計なことを……」
リウ「え……」
ルオ「メイファ、追うぞ!」
メイファ「はい師父(すーふ)」
壁から外に飛び出すルオ、メイファもそれを追って飛び跳ねていく。
リウ「ちょっと、置いていかないでよ!」
■村道(夜)
弱い玉陽光の下、銃を構えてキョンシーを追うルオ、メイファ。
キョンシーは、両足で跳ねているとは思えない速さで遠ざかっていく。
ルオ達に追いついてくるリウ。
リウ「ねえ撃たないの? チャンスじゃん!」
ルオ「ああ、案内して貰う」
リウ「案内ってどこに?!」
ルオ、キョンシーの後ろ姿を睨む。
■コウの義荘近くの竹林(夜)
木々の間を走るルオ達。
逃げるキョンシー、やがて見えてきた邸宅の裏手に入っていく。
リウ「コウ様の義荘……?」
ちらりと見える、キョンシーの横顔。
それを見たリウ、愕然と目を剥く。
■義荘・裏(夜)
石畳が一部外され、そこから地下深くに階段が延びている。
■同・地下への階段(夜)
小さな蝋燭を手に、階段を降りていくルオ、リウ、メイファ。
ルオ「臭うな、メイファ。廟会(みせもの)の臭いだ」
メイファ「はい、師父(すーふ)」
リウ「(とてつもなく不安)……」
■同・地下祭壇(夜)
広い空間に出るルオ達。
そこは地上の義荘と同じような儀式を行う場だが、
土壁で出来た洞穴のようで、湿っぽく薄気味悪い。
義荘にいた者達とは別の、10体ほどのキョンシーが壁際に並んでいる。
それらは全てが老人で、端には追いかけてきたキョンシーも。
リウ「(見て)やっぱり、おじいちゃん!」
キョンシーの顔には、リウの回想に出てきた祖父の面影がある。
ルオ「リウ、残念だがお前のじいちゃんはもう死んでいる」
リウ「(嘆く)そんな……!」
声「見てしまったか、宮道人」
空間の奥から、コウが鈴を握って現れる。
コウ「せっかくもてなしてやったものを、覗き見とは礼を失する行為ではないかね」
リウ「コウ道士!」
コウ「彼らは『老鬼兵』。村の老人達をキョンシーに転化させ、労働力・兵力に変えた者だ」
リウ「おじいちゃんを――人を殺してまで、キョンシーにしたの……?!」
コウ「自然死する前にキョンシーにすれば『素材』が傷つかないですむからな」
ルオ「(睨んでいる)……」
コウ「本来なら無粋で暴力的な真似はしたくないのだが、例外は尽きないな……お前達にもキョンシーになってもらおう」
コウ、鈴を掲げて振り始める。
鳴り響く鈴の音に、キョンシー達も揺れ始める。
コウ「かかれ、『老鬼兵』!」
キョンシー達、手を突きだし、跳ねながらルオ達に向かってくる。
ルオ「リウ、下がってろ!」
即座に銃を連射するルオ、
銭を食らってキョンシー達が吹っ飛んでいく。
メイファにもキョンシーが群がる。
小柄な体を生かし、
腕や爪を振り回してキョンシーをなぎ倒すメイファ。
ルオ、死角から迫ってくるキョンシーにも、
曲技のような姿勢で銃を撃つ。
コウ「(動揺)つ、強い!?」
ルオ「じじい束ねてキョンシーにした程度で、宮道人に勝てるとでも思ったか?」
メイファ「思ったか」
ルオ「真似しなくていい」
メイファ「はい師父(すーふ)」
最後の一体、リウの祖父もルオ達に迫りくる。
無言で銃を向けるルオ。
リウ「駄目、おじいちゃんを傷つけないで!」
ルオ「(リウを横目に見て)…………」
リウ「おじいちゃん、目を覚ましてよ!」
ルオ、無言で銃を撃つ。
放たれた銭弾は胸に命中、崩れ落ちる祖父キョンシー。
リウ「(へたりこんで)ああ……」
ルオ「あれはもうお前のじいちゃんじゃない。道士の魄に操られた死体だ」
コウ「(後ずさり)たった二人に『老鬼兵』が全て倒されただと……」
ルオ「観念しろ。お前にはまだ聞きたいことが……」
コウ「い、嫌だ! 俺は捕まりたくない!」
逃げだそうとするコウ。
ルオ「ち……」
コウの背後、闇を突いてくる切っ先。
ハッとするコウの喉を、木剣が貫く。
ルオ「!」
コウ「(血を吹き出し)かは……」
叫ぶ間も無く絶命し、倒れてくるコウ。
その亡骸の向こうに、あのメイドが剣を手にして立っている。
メイド「役立たずの、半人前め」
ルオ「てめーが黒幕か……」
銃を向けるルオ、だがメイドは瞬時に、
駆け出し獣のような跳躍力で壁を蹴り、ルオの後方へ。
メイド「道士がまたしても我が妨げとなるか」
メイドの体からは、ガス状の気が絶え間なく漏れており、
破れた服の下に球体関節が見える。
リウ「に、人形の体……?」
メイド「その通り。この体は仮初めに宿った殻に過ぎぬ。我は道士にあらず、死を越えた『仙人』なり」
ルオ「死して後に、魂魄のみで羽化登仙を果たす――『尸解仙(しかいせん)』だな」
メイド「然り、我が名はレイ・セイ。ルオ道士、貴様と同じかつての宮道人だ」
ルオ「聞いたことがあるよ。働けない者達を強制的にキョンシーに転化、人足や兵に利用しようとして、追放された道士の名だ」
メイド「我が名が轟いているようで光栄だ!」
メイドの体から吹き出す気が、倒れていたキョンシー達を覆う。
額に貼られていた符が、一瞬で炎上。
瞳に黒々と怪しい光を宿し、起きあがるキョンシー達――
ゆっくりと地面を離れて、宙に浮き始める。
銃を乱射するルオ、しかしキョンシー達は宙を舞いながら避ける。
ルオ「飛僵(フェイキョン)か! さすが元宮道人。キョンシーを操る方力も、八九玄功ってわけだ」
レイ「キョンシーの力は、魄を込めた者の力に比例する! コウのような、金と権威魂を売るような傀儡とは違うのだ!」
指先一つ動かしていないレイ。
飛来してくるキョンシー達の爪が、八方からルオを襲う。
リウ「(怯え)ひいい……!」
全身を滅多刺しにされ、宙に浮かぶルオの姿。
メイファだけが平然としている。
不敵に笑うメイド、だがすぐに顔が曇る。
ルオの体からは、一滴も血が流れていない。
代わりに全身の傷から、墨で書かれた文言のような物が、
空間に流れている。
ルオ「ひっでえな……俺だから良かったよーなものの」
メイド「(動揺)き、貴様……その体は一体?!」
続く
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