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鹿児島の掟「お湯が先」。焼酎お湯割りの物理学に学ぶ、心の整え方|だれやめ語り

いやぁ、今夜も冷えるね。
今日も一日〝おやっとさぁ〟
帰り道、コートの襟を立てて歩きながら、何を考えていたかな。
終わらなかったタスクのこと、上司に言われたトゲのある一言、それとも、家に帰っても待ち受けている父親や夫としての役割のこと……。
本当にお疲れ様。
さぁ、カバンを置いて、ネクタイを少し緩めて。
まずは、お湯を沸かそうか。
今夜は、おいちゃんと一緒に焼酎のお湯割りで、その冷え切った心と体を、ゆっくり解いていこう。

なぜ「お湯が先」なのか。グラスの中で起きる小さな魔法

鹿児島の掟

お湯割りを作る時、あなたはどうしてるかな。
適当に混ぜれば同じだろうなんて思ってないかい。
実はね、鹿児島の「だれやめ」には、譲れない掟があるんだよ。
それは、お湯が先、焼酎が後。
これ、実はただのこだわりじゃなくて、ちゃんと理屈があるんだ。
お湯を先にグラスに注ぎ、その上からゆっくりと焼酎を注ぐ。
するとね、重たい焼酎が温かいお湯の層を通って下へと沈み、そこで熱せられてまた上がってくる。
この比重と温度の差が、グラスの中で自然な対流を生むんだ。

「お湯が先」が生み出す対流

わざわざマドラーでかき混ぜる必要なんてない。 ただ、じっと見つめているだけで、お湯と焼酎は手を取り合って、最高の一杯へと勝手に混ざり合っていく。

無理にかき混ぜなくていい。人生も焼酎も「ゆとり」から

仕事でも家でも、僕たち中間管理職っていうのは、ついつい余裕をなくしがちだよね。
「次はあれをやらなきゃ」「この問題も片付けなきゃ」って、
心の中にゆとりがないまま、焦りや責任感だけをドボドボと注ぎ込んでしまう。 そうすると、どうしても心がトゲトゲしてくるし、無理に自分を奮い立たせようとして、余計に疲れちゃうんだよね。

でもさ、このお湯割りの作法を思い出してほしいんだ。
まずは、お湯を注いで、器そのものを温めてあげる。
それから、自分という焼酎を、そっとそこに乗せてあげるんだ。
そうすれば、必死にかき混ぜなくたって、時間はかかるかもしれないけど、自然とちょうどいい塩梅に馴染んでいくもんなんだよ。

「自然に任せる」っていうのは、決して手抜きじゃないんだ。
一番いい形になるのを、じっと待つっていう、実は最高に贅沢な過ごし方なんだよ。

黄金比「6:4」が教えてくれる、ちょうどいい自分の愛し方

お湯割りの黄金比といえば
やっぱりロクヨンだね。
焼酎6に対して、お湯が4。
これを計算すると、アルコール度数はだいたい15度くらいになる。
日本酒やワインと同じくらいだね。
食事の味を邪魔せず、それでいて一日の疲れをふわっと浮かせてくれる、絶妙な濃度だよ。

黄金比

僕たちはついつい、毎日を「100%の全力」で、一歩も引かずに乗り切ろうとしちゃう。 でもさ、ずっと気を張ってばかりいたら、いつか心がパンパンに張って、何に対しても「美味しい」とか「心地いい」なんて感じる余裕すらなくなっちゃうよ。

少しお湯を足して、自分をふんわり緩めてあげること。
そのほうが、芋のいい香りを「あぁ、いい匂いだな」って、素直に喜べるようになるもんだよ。

「今日はこれくらいで良か」って、自分に少し余白を作ってあげた時に、ようやく一息つける。
お湯割りの、白い湯気の向こう側でね。

温度の魔法。45度が心を一番柔らかくする

もう一つ、大事なことがある。 沸騰したてのお湯をいきなり焼酎にぶつけちゃいけない。 先にお湯をグラスに注ぐのには、もう一つの理由があるんだ。 それは、お湯の温度を少し下げること。

45度の魔法

グラスに熱を奪われ、お湯が70度から80度くらいになったところに、常温の焼酎が入る。 すると、最終的には45度前後という、人肌より少し熱い、理想的な温度になる。
この45度っていうのが、芋の香りを最も華やかに、そして口当たりを一番優しくしてくれるんだ。 外で冷たい風に吹かれて、誰かの冷たい言葉に晒されて。 カチカチに凍りついたあんたの心には、この45度の温もりが、どんな特効薬よりも効くはずだよ。

今夜は、ただの自分で笑っていよう

さぁ、グラスが温まってきた。
湯気と一緒に、甘い香りが立ち上がってきたね。
対流が静まるのを待ちながら、まずは一口、ゆっくり飲んでみて。

喉を通る温かさが、胃に届いて、そこからじわーっと手足の先まで広がっていく。 どうだい、少しだけ肩の力が抜けたんじゃないかな。

明日もまた、いろんなことがあるだろう。
サンドイッチ世代の僕らには、逃げ出せない場所がいくつもある。
だけど、一日の終わりにこの一杯があれば。
お湯が先の教えを思い出して、自分を少しだけ「てげてげ」に緩めてあげることができれば。
きっと明日の朝も、それなりの顔をして、玄関を出ていける。

焦らなくていいんだ。
混ざり合うのを、待てばいい。
今夜くらいは、ただの自分で、笑っていよう。

それじゃあ、今夜もおやっとさぁ。
乾杯。

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