”Morning Shot” 紙とインクの泥舟で漕ぎ出せ――「第21回神戸エルマール文学賞」が炙り出す、地方同人誌の業と執念
画面をスクロールして満足する暇があるなら、活字の泥水をすすってみろ。

紙とインクの泥舟で漕ぎ出せ――「第21回神戸エルマール文学賞」が炙り出す、地方同人誌の業と執念
Webの承認欲求を嘲笑う、関西発・生々しい肉声と活字の殴り合い
ネットの海に駄文を放流し、義理の「いいね」を数えて作家気取りでいる連中に、この生々しい紙の手触りが耐えられるだろうか。
「神戸エルマール文学賞」――今年で21回目を迎えるこの賞の募集要項を眺めながら、思わず口元が歪む。対象となるのは、近畿圏(兵庫、大阪、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重)で発行された「同人雑誌」に掲載された散文作品のみ。Web小説のリンクを貼り付けて終わり、なんて生ぬるいエントリーは一切受け付けない。2026年4月から2027年3月までに刷り上がった、インクの匂いと紙の重みが生々しい「現物」を事務局へ送りつけるという、徹底した前時代的作法だ。
だが、この時代遅れの手続きにこそ、文芸の真の毒と体温が宿っている。
自費を削り、仲間と罵り合い、校正刷りと格闘して形にした同人誌。そこには、アルゴリズムに媚びた薄っぺらいトレンド小説には逆立ちしても真似できない、書き手の生活臭、執念、そして歪んだエゴがこれでもかと充填されている。工場街の片隅で油にまみれながら絞り出されたような言葉や、場末の喫茶店で煮詰まった妄想の残滓。そうした「誰も頼んでいないのに書かずにはいられなかった」切実な叫びこそが、本来の文学の正体だったはずだ。
賞金は20万円。内訳がまた振るっている。作者個人に15万円、そして掲載された「同人会」に5万円。この生々しい分配規定を見よ。孤独な気取り屋の個人主義を許さず、泥舟を共に漕いだ仲間への分け前をきっちり組み込むリアリズム。5万円あれば次の号の印刷代の足しにはなるだろうし、あるいは打ち上げの安酒代として胃袋に消えるかもしれない。どちらにせよ、書き手たちの生臭い連帯と業をこれほど端的に表したシステムもないだろう。
締め切りは2027年4月30日。審査結果が出るのは同年の秋だ。
デジタル空間のインスタントな承認に胃もたれしている物書きたちよ。きれいごとばかり並べた文壇の門前払いに腐っている暇があるなら、自らの血肉を削った原稿を紙に刷り、この関西の土俵へ投げ込んでみろ。ここにあるのは、画面越しには絶対に伝わらない、剥き出しの人間たちの殴り合いだ。
〈了〉
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