ブランドを食う女、ブランドに食われる奴〜パリの路上で見た「モノグラム」の虚妄と実体〜
威借りの革袋をぶら下げるな。服に魂を宿してから街へ出ろ。
ブランドを食う女、ブランドに食われる奴

〜パリの路上で見た「モノグラム」の虚妄と実体〜
「ルイ・ヴィトンなんて、成金とアジア人観光客の印だよ」
パリのカフェでフランス人の知人が鼻で笑った。一理ある。ビニールコーティングしたキャンバス地に過ぎない「モノグラム」の袋に、数十万を差し出すのは、確かにどこか滑稽だ。己のセンスに自信のない奴ほど、わかりやすいロゴという名の「免罪符」を買いに走る。安物のファストファッションの上に、ぽつんと高級バッグをぶら下げて「私、ちゃんとしてます」顔をする日本の街角の光景は、控えめに言っても惨めだ。
じゃあ、一流のフランス人は絶対に買わないのか?
そう決めつける奴もまた、浅はかだ。ある日パリの路上ですれ違ったパリジェンヌの姿が、今も目に焼き付いている。
ルブタンのヒールで舗装路を軽やかに鳴らし、上質なコートの袖口から覗く指先まで完璧に計算し尽くされた女。彼女の傍らには、使い込まれたヴィトンのバッグがあった。バッグが彼女を飾っているのではない。彼女という強烈な個性が、あの凡庸に見えるモノグラムを完全に「従えて」いたのだ。
要するに、モノの価値なんて持ち主の「格」で決まる。
服も下着もペラペラの庶民が、バッグの威光で自分を底上げしようとするから「俗っぽく」なる。人間がバッグに食われているのだ。逆に、己のスタイルと生き様を確立した人間が持てば、どんなブランドだろうと極上のアクセントに化ける。
「ヴィトンのバッグ」がダサいんじゃない。「それしか誇るものがないお前の生き方」がダサいのだと、パリの風が嗤っていた。
〈了〉
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