”Morning Shot”AIに背中を押されて自費出版に走る、悲しき「自分語り欲」の正体
【毒舌編集者の戯言】AIに「本を書け」と煽られるカモたちへ
AIに背中を押されて自費出版に走る、悲しき「自分語り欲」の正体

「あなたの経験は、誰かの未来を変える一冊になる」
……いやぁ、実に美しく、そして香ばしい殺し文句だ。ランディングページを開けば、なんだかキラキラした言葉が並んでいる。「コトバコ」だの「編集者AI」だの、あたかも自分の大したことない半生や、ネットで拾い集めたような専門知識が、AIの手にかかれば一瞬で「価値ある資産」に化けるかのような錯覚を抱かせてくれる。
はっきり言おう。甘すぎる。
世の中には「自分史を書きたい」「いつか本を出して自分を証明したい」と夢見るおめでたい大人が溢れている。そこに目をつけたのが、この手のサービスだ。従来の自費出版ビジネスが「何百万円出せば本にしてあげますよ」と高齢者をなだめすかしていた構図に、単に「AI」というバズワードを乗っけただけに過ぎない。
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タダで配るものに本物の価値などあるはずがない。登録した途端、あなたのメールアドレスには「本を出して人生を変えましょう!」という情熱的なセールスメールが日夜届くことになる。目的はあなたの本を世に広めることではなく、あなたという顧客からお金を回収することなのだから当然だ。
そもそも、一般的な汎用AIと「編集者AI」の違いをドヤ顔で図解しているが、中身はプロンプト(指示文)をちょっと工夫しただけの生成AIである。ChatGPTに「私はこういう経験をしてきたから、本っぽく章立てして」と頼めば、ものの数秒で似たようなたたき台を出してくれる。それに気づかず、「編集者AIが私の想いを引き出してくれた!」と目を輝かせるのは、AIに手玉に取られていることにすら気づかない哀しいピエロだ。
「自分にも書けるのか確かめたい」などと不安がっている時間があるなら、まずは自分でノートを一冊買って pencil を握ってみたらどうだ。AIに自分の人生を「整理」してもらい、綺麗な言葉に「脱臭」してもらった本に、一体どれほどの「体温」が宿るというのか。AIが整えた文章なんてものは、誰が書いても同じ無菌室の無害なコピペ文章に成り下がるのが関の山だ。
「本を出せば専門家として認められる」「ビジネスにつながる」と信じ込んでいる個人事業主やコンサルタントも痛々しい。中身のない自費出版の本を名刺代わりに配ったところで、渡された相手は心の中で「ああ、自慢話の自費出版か」と苦笑いしてゴミ箱に直行させるのがオチだ。本当の実力者は、AIにそそのかされて本を書く前に、目の前の仕事で圧倒的な結果を出している。
もちろん、自分の生きた証を家族に残したいという純粋な気持ちまで否定はしない。だがそれなら、AIに綺麗な言葉を作らせるのではなく、不器用でもいいから自分の生々しい言葉で泥臭く書くべきだ。毒もなければ熱量もない、AIに甘やかされて出来上がった「綺麗な自分史」ほど、読んでいて退屈なものはないのだから。
目を覚ませ。あなたの中に「本の種」があるのではない。ただ単に、承認欲求という名の「カモの種」が芽吹いているだけなのだから。
〈了〉
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